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俺がプレイした超探偵事件簿 レインコードの感想を叩き付ける!!!(ネタバレあり)

子供の頃から火曜サスペンスを見てきた私にとって推理物は切っても切り離せない存在だ。探偵たちというのは事件を鮮やかに解き明かす存在であり、私にとっては戦隊ヒーローよりも偶像を体現している。ゲームや漫画、小説でもミステリーはポピュラーであって、人気のミステリーは図書館で何か月も待つ羽目になる。多くのファンに支えられているジャンルと言えるだろう。

本作「超探偵事件簿 レインコード」は特殊能力を持つ探偵たちが難事件に挑む作品だ。超探偵なんていうタイトルがつけられているのは、登場する探偵たちが人間の限界を超えた能力を保有しているからだ。過去視、超聴覚、生命体探知等、うまく使えば推理物というジャンルをひっくり返してしまうような能力ばかりである。いったいどんな物語が展開されるんだろうかと発売前から繰り返しPVを見ていた。

さて、前置きはこれくらいにしよう。
本稿はネタバレありである。
以下では作品の根幹にかかわる部分に触れると共に、感想を叩き付けようと思う。


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それで、感想は?

大きく分けて終了直後の感想は3つ。
・「自由度が上がった」
・「求めていたのと違う作品という印象」
・「形式にとらわれているのではないか」

これらについて個別に述べていく。
なお、私は本作を「ダンガンロンパ」のシナリオライターが描いた別の推理物という認識でプレイしている。
ダンガンロンパのシナリオに関する致命的ネタバレはないが、公式サイトに掲載されている程度の情報は記載しているため、まっさらな気持ちでプレイしたい人は本稿は読まないことを勧める。

「自由度が上がった」

直前にも書いたが本作の比較対象となるのはダンガンロンパという作品である。ダンガンロンパは閉鎖空間でのコロシアイ推理ゲームであるため、事件現場は限られているし、発生するのは決まって殺人事件である。
対照的に本作の舞台はカナイ区全体なのでシチュエーションは様々だ。列車の中もあればビルの屋上のこともある。もちろんカナイ区そのものは閉ざされているのだが、地域ごとに特色を持たせることでキャラクターが広大なフィールドを舞台としていると実感させてくれる。
「未解決事件に挑む探偵たちの物語」が本作のキャッチコピーだが、未解決事件には殺人事件以外も含まれるため”設定上”は殺人事件以外を題材にできる(実際には殺人事件しか取り扱われなかったが)。カナイ区に住む人物を後から追加するのだって閉鎖空間ではないからできるわけで、これも自由度の一端である。

私はこれを非常に評価している。ダンガンロンパではできなかったトリックもできるようになったし、キャラクターを小出しにできる分、頭にも入りやすい。ぜひこの方針でもう一作作ってみてほしい。

「求めていたのと違う作品という印象」

先に述べたように前作と比較しての良さも確かにある。ただ、完走後に「もったいないな…」という言葉がおもわず口から出たのも事実である。真っ先に挙げられるのは、複数の探偵を登場させた意義に乏しい点だ。せっかく魅力的なキャラを作ったのに主人公とのやりとりを描き切っていないと感じる。

表面的には本作の登場キャラクターは魅力的である。デスヒコは場を明るくさせてくれるし、ハララはカッコいい。キャラクターとしての人気は高いだろう。
2章で女子高潜入直前にデスヒコはユーマをマイメンと呼び、その後のユーマの探偵としての姿を見て本当の意味でマイメンと呼んでいる。だが、それだけだけである。ユーマとデスヒコのやり取りは2章でほぼ完結しており、それ以上親睦が深まることはない。メインの超探偵4名とのやりとりを各章で分割したことにより、話としては分かりやすくなったが若干単調でキャラ同士の掛け合いが淡泊になっている

私としてはキャラクターを持て余しているように見えたという印象だ。所長含めて6人の探偵たちが協力して事件解決したり、別々の推理を披露して対立したりする場面があってほしいと私はプレイ前に期待していたが、実際にはシンプルな作品が出されて面喰った。複数の探偵による多重推理があれば、これまでの推理ゲームとは一線を画した面白い作品になったのではないだろうか?
ユーマ以外の5人も探偵だが、「探偵」としての活躍を見せるのはハララだけである。デスヒコは特殊メイクスタッフだし、フブキは能力が本体で本人はおまけと化している。ヴィヴィアは犯人の代替役であり、所長は胃痛役だ。探偵として推理を行い、未解決事件解決に乗り出しているのは主人公とハララだけである。

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そのハララですら、謎迷宮では事件の詳細を忘却して単なる賑やかしになる。探偵役というポジションは一人で十分だし、キャラクターの思考がプレイヤー先を行ってしまうと感情移入ができないので本作のゲーム仕様上、仕方がない点ではある。とはいえ、「探偵」という設定はほとんど生かされていないのは事実だろう。

探偵特殊能力についても同じである。過去視や幽体離脱、時戻しには多大な活用法があるにもかかわらず「証拠品集め」にしか使われていないのは残念である。
「トゥルーコーリング」のように時戻しを活用したミステリーを期待していたのでQTEや主人公の尻ぬぐいとしてしか能力を行使しないのはあまりにも惜しいという印象を持った。戻せる時間が数日程度であれば事件の未然防止のために奔走する展開ができたわけであり、それはそれで面白い展開になっただろうと思う。例えば同じ三日間を繰り返しながら綿密に計画された事件の未然防止に挑むといった展開であれば、まさに「超探偵」事件簿になったのではないかと考えている。もっと探偵特殊能力という設定を活かした複雑な話にしてほしかった。

引用元:https://pixabay.com/ja/photos/%E6%99%82%E9%96%93-%E6%99%82%E8%A8%88-%E5%88%86-%E7%A0%82%E6%99%82%E8%A8%88-1485384/

「形式にとらわれているのではないか」

全体を通して作品を振り返ると短編の推理ものを5つ集めた印象である。章毎に話が完結しているため分かりやすいし、とっつきやすいのはその通りなのだが、クライマックスに当たる5章が5章単体でほぼ完結してしまい、盛り上がりに欠けると感じる。推定だが、仮想比較作品としてダンガンロンパが念頭にあったため、本作も似た構成にしたのではないだろうか。

死神ちゃんが犯人の魂を刈る設定もつけるべきではなかった。犯人が死ぬというのはダンガンロンパと被ってしまう。舞台を変えたので、一風変わった展開に持ち込んだ方がよかったように思う。
何よりも問題は、記憶を持った状態のNo.1(ユーマ)は犯人の魂を刈ることに賛同していたことになってしまう。カナイ区のホムンクルスたちを守ろうとした彼が賛同するだろうか?真実を明らかにするまでは非情に徹するのはいいが、その先は探偵ではなく法が担うべきという考えを持っていたのではないだろうか?
アマテラス社保安部は容疑者を確保する際にミランダ警告を蔑ろにして「お前には黙秘権もないし、弁護士を呼ぶ権利もない」と宣言するが、死神の力の容認は保安部よりも犯罪者に対して容赦ない態度を取っていることになる。作品内の善悪の基準が崩壊するため、犯人が死ぬという設定は余計だと私は考える。

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他にも作品のために(無理に)追加された要素としてQTEを挙げる。QTEはなぜ存在するのかが分からないぐらい意味不明なゲーム性であり、まったくわくわくしない。これはスパイクチュンソフトの作品「AIソムニウムファイル」から輸入した形になるのだろうが、わざわざつまらない部分を技術的可能だからつけてみましたみたいな印象を受ける。作品に対してプラスに貢献していないと私は主張する。

保安部のキャラクターに関しても作るだけ作って深堀はしていない印象だし、犯人の動機に関しても描写があっさりしている。そこら辺を突き詰めるとただでさえ長いシナリオにさらに文章が必要になってしまうため、ゲームというより小説の領分になってしまうため泣く泣く削ったのかもしれない。
細かい部分は気にせず話を作り、勢いのある作品にしようという意思を感じた。ある意味ハリウッド映画っぽいと言え、逆に私の方が純日本的で細かいことに固執しているのかもしれない。

総評

これはこれでいい作品なのだと思う。多くのプレイヤーからは支持されているのは間違いないし、シナリオ・トリック・グラフィック・音楽のどれをとってもゲームとして成立している。

本稿では「こういうゲームだと期待していたのに実際にはそうではなくて残念だった」という論調だが、私の期待していた要素を盛り込むとそれだけでかなり重たくなってしまい、ゲームの対象年齢層や提供したいユーザー体験にそぐわなくなってしまっただろう。私にとっては残念であるが、多くのプレイヤーにとって本作は良いものであるだろう。
別の会社でも良いので、本稿で述べたような作品が出てくれると私としては喜んでプレイさせていただく。


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