最近の記事

「刹那を抱いて5」

セナは、 そのお店のチーフであることに、 全然満足はしていなかった。 トップを目指すのは彼女にとってなんに意味もない。 だからと言ってなんどもトップを取ったわけじゃなく、 中途半端だけどね。 ふっと笑う。 職場を退職するその日、 セナは自分のお腹に異変があるのを感じた。 「あこの感覚、昔夢にみたな」 デジャヴにも似た感覚。 彼女のお腹には、 新しい命が宿っていた。 セナはただ、 目を細めた。 母になる喜びと、 幸せを、 自分の胸いっぱい感じた

    • 「刹那を抱いて4」

      誰かが自分の中に入っていりゃ、 忘れられると想っていた。 だから夢中だった。 溺れたふりをしていた。 でも結局、 セナは満たされることはなかった。 一口3000円のステーキをご馳走になっても、 最高に体の相性が良くても、 心の中にピューピュー風が吹いていて、寒かった、 本当は知っていたことだった。 前の男ともあっていた。 肉体関係を持った後, ベットに横たわるでもなくすぐに 「you tube」について語り出した彼に、 言いようもない孤独感と焦燥感

      • 「刹那を抱いて3」

        その男に抱かれた後、 セナは送ってもらった家の前で、 泣き崩れた。 忘れられない男にメールを送った。 「あなたにはもう会えない」と。 本心じゃなかった。 本当は追いかけて欲しかったのだ。 その男とは、 別れた後も数回会っていた。 私と別れた後、 女の匂いがした。 第六感が妙に優れている。 セナはそんな女だった。 セナは、 彼のことを本当に好きだったらしい。 彼の自宅に泊まろうと思って車を走らせていると、 後ろに走っているという、 奇遇なことは

        • 「刹那を抱いて2」

          この男を誘ったのは私だ。 「慰めてくれるだろう」 「甘える男は欲しい」 理由はこの2つだった。 私に気があるのを知っていて誘った。 案の定、 酔った挙句キスをしてきた。 想定内だった。 失恋の傷が癒えていないわたしは、 彼の胸で泣いた。 今思えば、誰でもよかったのだ。 唇の快楽を味わい、 首筋を貼って衣服の合間までくると、 わざと声を出す。 雌の要素は、 経験とともに身につけたようだった。 彼女は若く見えるが今年40になるという。 別れた後、

        「刹那を抱いて5」

          「刹那を抱いて 1」

          セナはその時感じた。 肉体の悦びからくる、 自分の甘美の声に嫌気がさしたのだった。 その男は一昨年あるビジネスの集まりであった友人だった。 実に芯がない男だった。 知っていて抱かれた。 今月に入って何人めだろう。 自分のやりたかったことは、 こんなことかと 落胆した。 自分に・・・ ただ快楽だけを求める 知っていて経験したかった。 実に嫌気がさしていたのだ。 この男とは、 元来友人だったのだ。 自分に好意を持っているのをセナは知っていた。 だ

          「刹那を抱いて 1」