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エピソード36 キジムナー

36 キジムナー

キジムナーは、沖縄諸島周辺で伝承されてきた伝説上
の生物妖怪で、ガジュマルの古木などの樹木の精霊。
人から恐れられることはあまりなく「体中が真っ赤な
子ども」あるいは「赤髪の子ども」の姿で現れると言
われることが多い。

川でカニを獲ったり特に魚の左目または両目が好物で
キジムナーと仲良くなれば魚をいつでも貰え、金持ち
になれるともされる。
また、海に潜って漁をするのが得意であっという間に
多くの魚を獲る。
いっぽうで人間の船に同乗して共同で漁を行うと伝え
られ、ほかにも作業の手伝いをして褒美にご馳走をい
ただく、夕食時にはかまどの火を借りに来る、年の瀬
は一緒に過ごすなど、人間とは「ご近所」的な存在で
あるといった伝承が多い。

人間と敵対することはほとんどないが、住みかのガジ
ュマルの木を切ったりすると、家畜を全滅させたり海
で船を沈めて溺死させるなど、一たび恨みを買えば
徹底的に祟られると伝えられる。


36 キジムナー オリジナルストーリー

沖縄の海を丸~るい月が照らしていた。
先月の台風で家と父親を亡くしたヒナタは浜辺で夜の
海をぼんやりと眺めていた。

ヒナタ:
父ちゃんも空からこの海を見ているのかな~。
今は叔父さんの家で母ちゃんと二人住まわせてもらっ
てるけど、オイラあの叔父さん苦手なんだよな。

ふとヒナタが後ろのガジュマルの木を振り返って見る
と木の上に小さな生き物が3つ座ってこちらを見てい
た。

ヒナタ:
わ! 君たちはもしかして昔ばなしで聞いた事がある
キジムナーかい?

......生き物たちは、優しそうに微笑んでヒナタを
見ている。

ヒナタ:
も、もしよかったらオイラと友達になってくれない
かい?

......生き物たちはキャキャと騒ぎながら森の中に
消えて行った。

翌日ヒナタは叔父さんにいいつけられ、船で魚を取り
に海に出た。
海で投網を投げようするといつの間にか昨夜の生き物
が船に乗ていた。
生き物はニコっと笑ったかと思うと海に飛び込み魚を
船の方に追い込んでくれた、そこにヒナタが網を投げ
入れると沢山の魚が取れた。
夕方には船は取れた魚で一杯になった。

ヒナタ:
キジムナーありがとう。
おかげで叔父さんに怒れずにすむよ。

ヒナタは海岸に着くとニコニコ笑っているキジムナー
と別れた。

次の日、その次の日も船にキジムナーが乗り込んでき
てくれたおかげで船は大漁で帰ってきた。
もうヒナタとキジムナーは相棒の様に仲良しだった。

ヒナタの叔父さんはこのところの大漁を不思議に思い
浜の木陰で海から帰って来た二人を見ていた。

叔父さん:
ヒナタめ悪霊のキジムナーに憑りつかれていたのか!
あんな奴が家にまで来るようになったら我が家まで呪
われてしまう。何とかしなければ。

次の日叔父さんは二人が帰って来るのを待ち、キジム
ナーが森の中に帰って行くのの後をつけて行った。 
森の奥の古い大きなガジュマルの木にキジムナーは消
えて行った。

叔父さん:
ここがあいつらの家か、よしこのガジュマルの木ごと
焼いてやる。
ん、まてよ木の間にキジムナー達が拾ってきた金やら
真珠やらサンゴやらがあるじゃないか。
どうせ燃やしてしまうんだ、このお宝はオレがもらっ
てやる、フフフフ。

叔父さんはガジュマルの木に油をまいて火をつけた。
ガジュマルの木は燃え上がった。

家に帰っていたヒナタは島の真ん中のあたりが赤く燃
え上げるのを見て、キジムナー達は大丈夫だろうかと
心配していた。

叔父さんはその晩帰ってこなかった。

次の朝浜辺に倒れている叔父さんがの姿があった。

その晩、ヒナタはキジムナー達とはじめて会った浜辺
に来ていた。
あの日のように月が照らす海を見ていた。
ヒナタの後ろのガジュマルの木に何かの気配があった
ヒナタが振り返るとガジュマルの木にキジムナーが3
人座っていた、しかし3人はあの日のように微笑んで
はおらず、悲しそうな顔をしていた。

ヒナタ:
ごめんキジムナー。
きっと君たちの家を燃やしたのは叔父さんなんだね。
本当にごめんなさい。

ヒナタは大声で泣いた。

ヒナタが顔を上げるとキジムナー達はいなくなって
いた。
キジムナー達いた場所には涙のあとのようにいくつ
もの真珠が落ちていた。

その真珠が月明かりに光っていた。

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