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エピソード34 小豆洗い

34 小豆洗い

小豆洗いまたは小豆とぎは、ショキショキと音をたて
て川で小豆を洗うといわれる妖怪。
この妖怪の由来が物語として伝わっていることも少な
くない。

江戸時代の奇談集「絵本百物語」の「小豆あらい」に
よれば、越後国の高田の寺にいた日顕(にちげん)と
いう小僧は、体に障害を持っていたものの、物の数を
数えるのが得意で、小豆の数を一合でも一升でも間違
いなく言い当てた。
寺の和尚は小僧を可愛がり、いずれ住職を継がせよう
と考えていたが、それを妬んだ円海(えんかい)とい
う悪僧がこの小僧を井戸に投げ込んで殺した。
以来、小僧の霊が夜な夜な雨戸に小豆を投げつけ、
夕暮れ時には近くの川で小豆を洗って数を数えるよう
になった。
円海は後に死罪となり、その後は日顕の死んだ井戸で
日顕と円海の霊が言い争う声が聞こえるようになった
という。


34 小豆洗い オリジナルストーリー

栄太郎は父親に、遊び歩いて本気で修行もしないよう
な息子にはこの中村屋の店を継がせるわけにはいかな
い。と言われ落ち込んで近くの河原に来ていた。

もう暗くなってきた河原には誰もおらず、栄太郎は近
くの小石を拾って川面に投げた。

すると、どこからかこんな声が聞こえてきた。

小豆:
ショキ、ショキ、ショキ。
小豆とぎましょか~人取って食いましょか~。
ショキ、ショキ、ショキ。

栄太郎は声のする方に足音がしないように近づき、
草の間から覗いてみると、子供くらいの小柄なジジイ
がかがんで小豆を川の水で研いでいるようであった。

栄太郎:
お前は誰だ? 最近この辺で噂の妖怪なのか?

小豆:
シ~今数えてるんだから、885、886、887、888 
とよし今日もちゃんと数が合ったぞ。
ん、さっき何かたずねられたような?
わ!人間だ!

栄太郎:
え~。かなり間抜けな妖怪だな。
あまりかかわらない方がよさそうだ、
じゃ~な妖怪。

小豆:
まて若造。おぬし何か悩んでおるようだな。
しかもそれは小豆にかかわることじゃな~。
よかったら話してみい。

栄太郎:
どうしてそれを?たしかにオレはオヤジにあんこの作
り方がまったくわかっていないと今日もどやされたん
だ。オヤジや職人さんたちの真似をしても、どうにも
俺にはあんこをおいしく作るコツがわからないんだ。
お前、小豆の妖怪ならオレにあんこのコツを教えてく
れよ。

小豆:
なるほどな~。本当はワシの専門は赤飯でアンの方の
専門はルイスの奴なのじゃが、人間よりは小豆につい
ては詳しい。しょうがない教えてやろう。
よ~く聞けよ、今から教えることを忘れるないいか。

小豆の声を聞け、時計に頼るな、目を離すな、
何をして欲しい小豆が教えてくれる。
食べる人の幸せそうな顔を思い浮かべぇ。
おいしゅうなれ。おいしゅうなれ。おいしゅうなれ。
その気持ちが小豆に乗り移る。うんとおいしゅうなっ
てくれる。甘ぇあんこができあがる。

わかったか?今言った通りに小豆に向き合ってあんこ
を作ってみろ。

栄太郎:
わかった。明日さっそっくやってみるよ。
ありがとう。

次の日、また栄太郎は昨日と同じ時刻に河原に立って
いた。そして妖怪を呼んでみた。

小豆:
どうした若造、ワシの教えた通りやってみたのか?

栄太郎:
ああ、けさ早起きしてお前が教えてくれた通りに真剣
にやってみて、オヤジに味見してもらったさ。
オヤジはにっこり笑ってもっと精進しろだって、
ありがとう妖怪!

小豆:
そうか、よかったな。その笑顔昔のお前のオヤジの若
い頃ににそっくりだな。よし、じゃあ今日はさらにと
っておきのそのあんを白いふかふかの生地で包む
「あんまん」ってのを教えてやろう。

栄太郎:
ありがとう!これから小豆先生って呼ばせてください

栄太郎は川の中に走り入って妖怪に抱き着いた。
妖怪のザルが宙をまった。

小豆:
ワ、ワシの小豆が~~!

ザッパーン(川に落ちた)

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