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エピソード32 煙羅煙羅

32 煙羅煙羅

煙羅煙羅(えんらえんら)は、鳥山石燕による江戸
時代の妖怪画集にある妖怪。

煙の妖怪、または煙に宿った精霊であり、さまざま
な姿になりながら大気中をさまよい、かまどや風呂場
から立ち上った煙の中に、人のような顔の形で浮かび
上がるものなどと解釈されている。

また解説文中にある「羅」とは目の粗い薄布を意味し
たなびく煙をこの布のたなびく様子にたとえて
「煙々羅」と名づけたとされている。

煙の妖怪であるため、ぼんやりと無心に煙でも眺める
ような、心に余裕を持つ人間でなければ見られないと
する説や見える人は心の美しい人であるという説も
ある。

煙の妖怪というのはほかに例が無く、珍しい妖怪と
いえる。煙々羅についての具体的な伝承はなく、
鳥山石燕による創作妖怪の一つとも考えられている。


32 煙羅煙羅 オリジナルストーリー

ある晴れた日校舎の裏、龍二は澄んだ空を眺めながら
つぶやいた。

龍二:
あ~俺には何も無くなっちまったな~
...小学校から野球一筋、子供の頃から俺のピッチン
グを見た人たちには、
50年に一人の逸材!間違いなく記録を作るピッチ
ャーになる!
って言われてきたんだけどな。...

龍二は包帯の巻かれた左手をさすりながら、涙をこぼ
した。
すると、龍二の前に煙の中から人の顔のようなものが
現れた。
煙は龍二に問いかけてきた。

煙羅煙羅:
おい、お前ダメな顔してるな。
どうした、彼女にでも振られたか? 
青春してるな~ハハハハ。

龍二:
なんだお前、バケモンか!まあ、お袋が見える家系だ
から驚かねえけど。お前俺がいじけてるんでからかい
に出てきたのか。

煙羅煙羅:
ん、なんだかなり深刻そうだな。
ワシでよかったら話を聞いてやるぞ。

龍二:
そうだな俺のケガを本気でわかってくれる奴なんてい
ない、お前にでも話せば気もちのモヤモヤも少しは
晴れるか。
実はな、先日の試合でランナーと交錯して左手の指の
けんを切ってしまって医者から元通りには治らない
って言われたんだよ。
もう俺左手でボールは投げられねえんだよ。

煙羅煙羅:
ほ~なるほど。それでお前はずっとやって来た野球を
あきらめるのか?  情けね~な~...

龍二:
なんだとこの野郎! バカにしやがって! やっぱり
バケモノなんかに話すんじゃなかった。

龍二は横にあったバットで煙の妖怪をたたこうとした
しかし煙なのでふわりとかわし、空に舞い上がった。

龍二:
この野郎逃げるのか!

転がっていたボールを右手で握り妖怪に向かって投げ
つけた。 ボールは真っすぐ妖怪のど真ん中を突き抜
けて行った。

煙羅煙羅:
すごいじゃないか! ワシは知っているんだ、
お前は小さい頃左右両方で投げられたことを。
それをお前の亡くなったオヤジがコントロールのいい
左投げ一本にさせたんだ。どうだ、右でも十分に投げ
ることは出来るだろう?
それにお前はチームでも4番を打っているじゃないか
ワシの見たところバッティングセンスも十分ある。
まずは野手としてやり直してみてはどうだ?

そういうと妖怪は誰か人が近づいた来るのに気づき空
に消えていった。
そこに野球部顧問の川藤先生がやって来た。

龍二:
先生。 すいませんでした勝手に部活休んで。
...先生、俺もう一度野球やらせてください。
ピッチングできない分バッティングで頑張ります。
だから...

先生:
よく言った龍二!オレもお前をどうにかして説得
しようと思ってたんだ。
もう一度一緒に頑張ろう!

龍二:
先生、ありがとうございます!オレ頑張ります!

先生:
よし、その意気だ!
だがその前に、タバコの喫煙で2週間の停学だな。
龍二がんばれ、2週間で右投げマスターしろ!

翌日晴れた河原で右手でボールを投げる龍二がいた。

その空から龍二を見守っているように浮かんでいる煙
があった。

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