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エピソード16 袖引き小僧

16 袖引き小僧

袖引小僧(そでひきこぞう)は、
埼玉県に伝承が残る妖怪である。

夕暮れの帰宅を急ぐ者の袖をクイと引く。
振り向くが誰もいない。
気を取り直して歩き出そうとすると
またも手がクイと引かれるといわれる。

伝承地での話では、袖引小僧は元は落武者の霊
であり、落武者が通行人に助けを求めて袖を
引いているともいう。

また埼玉県の伝承によれば、貧乏な家の子供が、
道端の地蔵の陰で共働きの両親の帰りを待っており、
両親が帰って来たので飛び出したところ、
両親は最近うわさの盗賊だと思って殴りつけて
死なせてしまい、その子供の霊が袖引き小僧と
なったという話もある。

伝承では、姿を見せずに道行く人の足止めを
して悪戯するような行動をすることから
容姿は不明である。
妖怪画家・漫画家水木しげるのイラストでは、
黒い体に子豚のような顔をした妖怪の姿で
描かれている。


16 袖引き小僧オリジ

次郎はもうすべてがいやになっていた。
先月、唯一の家族だった母が亡くなり。
昨日、結婚を約束した彼女に振られ。

そして今日、会社で3年かけて取り組んできた
プロジェクトの中止を言い渡された。

次郎:
もう俺のやってきたものもすべてなくなった。
もう俺の生きている意味なんてあるのかな~。
いっそこのホームから飛び降りれば、
楽になれるかな~。

......ちょうど電車来たし...

次郎は目をつぶり自分の体を重力にまかせ
線路に落ちようとした。

「まって」誰かが次郎のスーツの腕を引っ張った。

次郎:
誰だ。......あ、電車が来ちゃった。
......しかたない、今は止めよう。  

そうして次郎は電車に乗り
自宅のアパートへ帰ることにした。 

と、電車の中で見覚えのある女の子に
声をかけられた。

秋山:
あの~ 先輩、プロジェクト残念でした。
あ、すいません私広報課の秋山かえでっていいます。
ずっと先輩のプロジェクトの完成
楽しみにしてたのに。
   
うちの会社ほんと見る目ないですよね~ 
ぜったい将来必要なプロジェクトなのに! 
すいません一人で熱くなっちゃって、
でも私これからも先輩応援してますから
...失礼します。   

かえでは別の車両に移っていった。

次郎:
突然でびっくりしたけど、いい子だな。
おかげで少しだけ気持ちが軽くなった。

ありがとう。

次郎は電車から降り自宅への
暗い夜道を歩いていた、

......また突然誰かが次郎の腕を引っ張った。 

すると目の前を信号を無視したトラックが
走り去っていった。

小僧:
おい、何度もオイラに手を焼かすなよ。
もっとちゃんとしろよ、次郎。   

暗いのではっきりとはわからないが
不思議な小さな子が立っていた。

次郎:
お前は誰だ、なんで俺の名前を知っている?

小僧:
へへへ、オイラのことはどうでもいいよ。
それよりさっきの女の子お前に気があるぞ、
会社でもお前のことずっと気にしてるんだぞ。

次郎:
なんでそんなことまで知ってるんだ。
本当にお前、誰なんだよ?

小僧:
そーそー、明日会社に行ったらもう一度
プロジェクトの件、部長に頼み込んでみろ。
......なんとかなるかもしれないぞ。
それと、次郎お前もう命をそまつにしようと
するなよ、父さんも母さんも悲しむぞ。
...お前はまだこっちに来ちゃいけない。 

そういうとその子は暗闇に消えていきました。

次郎:
...どうして両親のことまで、
...もしかしてあなたは俺が小さい頃亡くなった
兄さんなのか?

...ありがとう兄さん。

次の日、出社した次郎が部長にプロジェクト継続の
お願いに行くと、会長の鶴の一声で中止を取止めて
プロジェクト継続が決まったと部長が
笑顔で教えてくれた。

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