エピソード５７　鬼女

57 鬼女

鬼女（きじょ）は、日本の伝承における女性の鬼。

一般には人間の女性が宿業（しゅくごう）や怨念によ
って鬼と化したものとされ、中でも若い女性を鬼女と
いい、老婆　姿のものを鬼婆という。

日本の古典の物語、昔話、伝説、芸能などによく見ら
れ、有名なものには信州戸隠・鬼無里（きなさ）の
紅葉（もみじ）伝説、鈴鹿山の鈴鹿御前がある。
安達ヶ原の鬼婆も名前は婆だが、鬼女とされる。
また土佐国の妖怪譚を綴った「土佐お化け草紙」には
「鬼女」と題し、身長7尺5寸、髪の長さ4尺8寸の大き
な鬼女が出てくる。

またものの例えでは、鬼のように心の酷い女性や怒っ
た女性も鬼女や鬼婆と呼称される。

57鬼女　オリジナルストーリー

暗くなりかけた山道を一人旅の男が歩いていた。
向かいから旅の僧侶が歩いてきた。
僧侶は男を呼び止めた。

僧：
旅のお方、ちょっと待ちなされ。
そなた、今夜この山を越えなさるのか？
止めなされ、この山には鬼女という魔物が住んでおる
夜道は止めた方がいい。

男：
お坊様ありがとうございます。ご心配いただくのはあ
りがたいのですが、私は明日には山向こうの町までい
かねばならないのです。
どうか止めないでください。

僧：
わかりました、しかたないそれならばこのお札をお持
ちください。このお札は願って投げればあなたの願い
が現実となりあなたを守ってくれるでしょう。
お気をつけて。

僧は男にお札を三枚渡し男が来た道を進んでいった。
男がしばらく進んで行くと雷が鳴り強い雨が降ってき
た。男は道の横に古く大きな家を見つけ雨宿りをお願
いすることにした。

男：
すいません、すいません。この雨でなんぎしています
すこし雨が止むまで休ませていただけませんでしょう
か？

家の中から女が出てきた。
女は背丈が２ｍはあろうとかという熊のような大女だ
ったが、やさしく男を家の中に入れてくれた。

女：
おやおや、ずぶ濡れじゃないかい。
そんなかっこでは風邪をひいてしまうよ。
ちょうど今風呂が沸いたところだから入って、きれい
になるといい。

男はこれはありがたいと早速風呂に入った。
しかし風呂で温まりながら考えてみると、あまりにも
よく出来過ぎている。僧侶の言葉も気になる。

男はそ～っと風呂を出て女がいる台所を覗き込んだ。
すると女は刀ほどの長さのある包丁を研いでいた。
そしてその横の煮え立った大鍋からは人の手足が飛び
出していた。

男：
あぁ～！ここが坊さんが言っていた鬼女の家だったか
食われる前に逃げないと！

男は風呂から出ると急いで着物を着てそ～っと逃げ出
した。

しかし男が逃げたのに気付くと女は角が生え鬼の形相
となって追いかけてくる。
やはりこの女こそこの山の伝説の鬼女である。

このままでは鬼女に追いつかれると思った男はふとこ
ろから僧侶にもらったお札を出して、川になれと祈っ
て鬼女に向かって投げた。

お札は地面に落ちると水が吹き上がり川になった。
しかし鬼女は舌なめずりをすると頭を川に突っ込み、
一気に川の水を飲み干した！
そしてまた追いかけてきた。

女：
ワシは人口の水は嫌いじゃ天然水が好きなんじゃ、
こう見えてグルメなんじゃぞ！

男はそれを聞いて身震いしたが、またお札を出して
今度は炎よ出ろと祈って鬼女に向かって投げた。

お札は地面に落ちると炎を噴き上げ、まわりの木々に
燃え移り鬼女の前は火の海となった。
しかし鬼女は少しもあわてずさっき飲んだ川の水を噴
出した！
火事はあっという間に鎮火した。

女：
こりゃー！ワシはこの森を大事にしとるんじゃ、何を
してくれる！こんなにＣＯ２を出しおってからに！

鬼女はどんどん迫ってくる、もう一息で捕まってしま
う。
男は最後のお札を「鬼女よ絶世の美女になれ」と祈っ
て投げつけた。

お札は宙を舞い、鬼女の顔の真ん中に張り付いた。
すると鬼女は背が３０㎝ちじみ体もスラっとして九頭
身となった、そして顔は今まで見たことのない天女の
ような顔となった。

女：
なに！アタシに何が起きたの？　

鬼女は、いや元鬼女はあぜんとなり立ちすくんでしま
った。

そこに、藪から男にお札をくれた僧侶が出てきた。
そして元鬼女を見つめると可愛いと言って追いかけま
わしだした。
二人はそのまますごい勢いで闇に消えていった。

男はしばらくあっけにとられていたが、鬼女の家に忘
れてきた荷物を取りに戻った。
そして台所を見ると鍋の中に煮だっていたのは人の手
足のではなく、大根だった。

男：
料理下手なんだな～。
．．．もしかして鬼女は本当に私に一晩の宿を与えて
くれようとしただけだったのかもしれない。

男はそのままその家に一晩泊まった。

次の朝、男が鬼女の家を出て山を越えると、峠の大木
の下に弁天様と不動様の石の像が追いかけっこしてい
るように立っていた。