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エピソード62 黒手

62黒手

慶長年間のこと。笠松甚五兵衛という者の家で、その
妻が厠(トイレ)に入ると何者かに尻を撫でられると
いう怪異が起きた。
甚五兵衛は狐狸の仕業かと思い、刀を用意して厠に入
ると、毛むくじゃらの手が出てきたため、これを刀で
切り落とした。
そして数日後、妖怪が3人組の僧侶に化けて手を取り
返しに来た。
僧侶の正体を知らない甚五兵衛は、自宅に怪しい相が
あるといわれ、切り取った手を見せた。
手を受け取った僧の1人が「これは人家の厠に住み着
く黒手という物だ」と言った。
さらに別の僧が手を受け取り「これはお前に斬られた
我が手だ!」と叫び、9尺(約2.7メートル)もの背丈
のある正体を現し、手を奪って3人もろとも消え去っ
た。
後日、甚五兵衛が夕方遅くに家への帰り道を歩いてい
たところ、突然空から衾のようなものが降りてきて彼
を包み込み、2メートルほど宙に持ち上げられ、下に
落とされた。
気づいたときには甚五兵衛の懐から、黒手を斬った刀
が奪われていたという。


62黒手 オリジナルストーリー

ここは北陸のとある町、五平という男が妻と仲良く暮
らしていた。ある日妻が厠(つまりトイレ)に行くと
たくし上げた尻を黒い毛むくじゃらの手でなでられた

妻は悲鳴をあげ、夫の五平のところに泣いて走り込ん
できた。

五平:
どうした?なに、厠に化け物が出たって!そんな馬鹿
な、、、わかった俺が行ってその変態野郎を退治して
やる、安心しろ!

五平は妻の着物をはおり代々伝わる脇差の刀を持って
気合を入れて厠に入った。
何も出てこない。
五平は覚悟して尻を出して座った。
すると中から黒い毛むくじゃらの太い手が出てきた!
これか!と思った五平は持ってきた刀を抜いてその手
を切りつけた。
厠に化け物のような悲鳴がとどろき、消えていた。
厠には五平が切り取った化け物の手が落ちていた。
五平は妻にこれでもう化け物の手は出ないと安心させ
その手は蔵にしまった。

それから3日後、3人の僧侶が五平の家を訪れた。
僧侶の一人が五平に話し始めた。

僧:
ご主人、この家からはまがまがしい気が立ち上ってい
ます。私たちがお祓いし清めますので、心当たりがあ
るものをお見せいただけませんでしょうか。

五平:
わかりました心当たりがあります、お待ちください。

と言って蔵から箱を持ってきて開けた。

僧:
こ、これは何の壷ですか?

五平:
この壷を買わないと不幸がおとずれると言われたので
買った壷です。悪い気を吸い取っているんじゃないか
と思いまして。

僧:
脱臭剤じゃないんだから、それにきっとそれは詐欺だ
と思いますよ。
これじゃありません、他にもあるでしょう。

五平:
わかりました確かに他に心当たりがあります、お待ち
ください。

と言ってまた蔵から箱を持ってきて開けた。

僧:
こ、これは何の皿ですか?

五平:
この皿は集め始めたら10枚集めないと不幸になると
言われた皿です。
毎月1枚なので、まだ6枚しか揃ってないんです。

僧:
雑誌の付録コレクションかよ。
これもたぶん詐欺ですよ。 
これでもありません、まだ他にもあるはずです。

五平:
さすがです確かに他に心当たりがあります、お待ちく
ださい。

と言ってまたまた蔵から箱を持ってきて開けた。

僧:
こ、これはビデオテープ。
まさか呪いのビデオテープですか?

五平:
はい、父から譲り受けたのですが、もうビデオデッ
キが無いから見たことないんです。
引取ってもらえないですか?

僧:
我々はブックオフじゃありません。
いやいやそうじゃなくて最近手に入れたモノから
妖気を感じます、それを持ってきてください。

五平:
あ~早く言ってくださいよ。すぐに持ってきます。

と言って蔵から例の化け物の手が入った箱を持ってき
て開けた。

僧:
お~それじゃ、それじゃ。
その手は「黒手」と言う妖怪の手、まさにこの家に妖
気を振りまいておるのはこれです!

と言って手を取り横の僧に渡した。

僧:
そうじゃこれこそがワシの右手!
お前に切り取られたワシの手じゃーー!

そう言うと3mはある鬼となり、ふすまを蹴破り、
塀を飛び越え消えていった。
気づくとほかの僧も消えていた。

五平:
やはり化け物であったか、よかったこんなことだ
ろうと思ったからこの部屋に来る途中で太い山芋
と取り換えてやったのだ。
きっと怒ってまたやってくるな。
その時は頼んだぞ太郎!

五平は庭を見てほほ笑んだ。

3日後あきらかに違和感のある五平の背丈ほどの
大きな子供が五平の家を訪れた、この家に預けた
モノを取りにきた、中に入れろと門の前で大きい
声で問いかけている。

五平:
わかった、わかった。
今開けてやるから待っていろ。

五平が門を開けると飼っていた犬がこの子供に吠
え掛かり左手に嚙みついた!
すると子供はあっという間に鬼になり、犬を振り
落とすと一目散に山の方に逃げて行った。

五平:
ありがとう、太郎。
お前がいてくれて本当に助かったよ、
頼もしいやつだ5代目しっぺい太郎。

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