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エピソード49 朧車

49 朧車(おぼろぐるま)

朧車(おぼろぐるま)は、鳥山石燕による江戸時代の
妖怪画集「今昔百鬼拾遺」にある妖怪の一つで、牛車
の妖怪。

石燕の画図では半透明の牛車の前面の本来なら簾がか
かっている場所に巨大な顔のある姿で描かれている。
解説文では、「むかし賀茂の大路をおぼろ夜に車のき
しる音しけり。出てみれば異形(いぎょう)のもの也。
車争(くるまあらそい)の遺恨にや。」とある。
「車争い」とは、平安時代に祭礼の場などで、貴族た
ちが牛車を見物しやすい場所に移動させようとした際
に牛車同士が場所を取り合ったことをいう。

平安中期の物語『源氏物語』において、六条御息所が
祭り見物の牛車の場所取り争いで葵に敗れ、その怨念
が妖怪と化したという話がよく知られていることから
、この話が朧車のもとになったという説がある。


49朧車 オリジナルストーリー

今は昔、ここは平安京。
月夜の晩、公家が朱雀大路をふらふら歩いていた。

公家:
いや、今宵のパーティーいや、宴は楽しかった。
しかし、ちょっと飲み過ぎたし、だいぶ遅くなってし
まった。
しょうがない牛車に乗って帰るか。
  
お、来た来た、ヘイ牛車!
なんだよ乗車拒否かよ〜ふざけおって!
  
お、また来た、ありゃ?御者が乗っていないように見
えたが     ……ま、まあいいか。
ヘイ、牛車乗せてくれ!

牛車が止まり、後ろのみすが静かに上がった。

公家:
おやおや、全自動か?便利だな。
朱雀院(すざくいん)のあたりまでやってくれ。

牛車は音もなく進んでいったが、乗っていた公家は
違和感を感じ御者に声をかけた。

公家:
おい、運転者、方向が逆だぞ!......おい、聞いて
いるのか?返事くらいしろ!

公家は前のみすを開けたが誰も乗っていなかった。

公家:
ど、どうなってるんだ!この車はバケモノ車か?

すると前のみすにうっすら般若のような顔が浮き出
てきた。

朧車:
ようこそ、今宵はご乗車いただき誠にありがとうご
ざいます。
この車は三途の川行きとなっております。
うふふふ。

公家は気絶しそうになりながらもなんとか牛車から
転げ落ちた。公家は頭を打ち完全に気絶し、牛車は
霧の中を南に向かって消えて行った。

朧車:
いいざまだわ、わらわはかつて例祭の時に牛車の場
所取りで辱めを受け、その恨みを持ったまま亡くな
ったのよ、その無念が牛車に乗り移りこの朧車にな
ったのよ。
さあ、まだまだわらわを笑った奴らを懲らしめてや
るのよ。

次の晩、今夜は月の見えない朱雀大路を女が一人歩
いている。
音もなく牛車が近づいて来るとこの女は立ち止まり
手を挙げた。

またみすが勝手に上がり女は乗り込んだ。

女:
羅城門(らじょうもん)までお願いいたします。
女はそう言うと黙ってしまい、気配も感じられなく
なった。
しばらく牛車は進んでいたが、朧車が声をかけてき
た。

朧車:
ねえ、あなた、ちょっと返事くらいしなさいよ。
ねえってば。
あら、いない? いつの間に?
ってなによあの女の座ってたところ濡れてるじゃな
い!
あの女、おもらしした上に無賃乗車で逃げやがった
わね~、、、
キー悔しい!次見つけたらただじゃおかないわよ。

怒りながら朧車は霧の中に消えて行った。

後日朧車は知り合いの妖怪、片輪車にそれは最近朱
雀大路で有名な女の幽霊だと聞かされた。
それを聞いた朧車は怖くて気を失いそうになったが
自分も似たようなものだと気を取り直した。
しかし、やはり幽霊は怖いと担当地区としていた
平安京から九州大宰府に場所を変えたと
...言われていたり、いなかったり。

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