SF創作講座7期第6回梗概(裏)「相撲部屋語学講座千秋楽SF」

https://school.genron.co.jp/works/sf/2023/subjects/6/

 天の川銀河とアンドロメダ銀河が相交わったのちの遠い未来の記録。
地Qチキュウ年齢に換算すると15歳になる少年タナカ・ドス=コイは、アンドロメダ銀河出身のなよなよシティボーイ。アンドロメダ系名門ドス=コイ家の嫡男である(因みに名前が〈タナカ〉なのは、Nipponびいきのパパがしかし名前と苗字の区別がつかずに誤って名付けたものだ)。訛りのない共通アンドロメダ語を話すのが自慢の華麗なる一族に生まれた。
 だが哀れ、かの名門一族も滅びるときはあっけなく、特殊宇宙詐欺に遭い謎の語学教材を大量に抱え込まされた父アンドレア・ドス=コイの自爆により、幕を閉じた。屈託のない人柄でありながらも正義感の強かったアンドレアは特殊宇宙詐欺グループの元締めもろとも爆発四散し、嫡男であるタナカだけをなんとか逃がした。これにより、追っ手から逃れて宇宙をさまようタナカ。たどり着いたのは辺境の地、地Q。地Qのド田舎言葉が分からぬまま、生活のために「部屋」と呼ばれる場所を訪れたが、部屋は部屋でもそこは相撲部屋だった。
 身長180センチ体重180キロのタナカは一瞬で見込まれ、相撲部屋の見習となる。〈大の字ダイノジ〉オヤカタやオカミさんにしごかれ、泣きながら地Q語を日々学び(パイセンからの言葉をそのまま真似てオカミさんに「オイオマエ」と呼びかけ、オカミさんのハイパー張り手をくらって三日寝込んだこともある)、四股を踏んで修行を積んだ。そこでふと、タナカは気付く。あれ、このスモウという競技はもしかして、父アンドレアが好きだった惑星tubeわくせいチューブで見たやつでは? そして、父の最期の言葉は「セキトリのタナカを探せ…、俺の親友だった男で、お前の名は彼からもらった…タナカは、タナカは本当は……」
 セキトリという言葉を知らなかったタナカだったが、いまなら分かる。そうだ、このまま地Q語を学び、なおかつスモウに強くなれば、父の親友タナカにも会えるかもしれない。タナカは希望を抱く。それにスモウスーツは格好いいから早く着てみたい。
 そんなタナカを冷ややかな目で見ていたのは大の字部屋のひとり娘、フジ。言葉の練習のために毎日一生懸命話しかけてくるタナカに対し、「こんな落ちぶれた部屋から、立派なスモウスーツの着られるようなマクウチ力士が出るわけない」と言い放つ。その言葉の半分も理解できないタナカだったが、フジにニコリと笑いかけ、一緒に修業をしようという仕草を見せる。いまの地Qでは、スモウスーツがあれば女も男も同じ土俵にあがることができた。理論上はそうであったが、いかんせん、先駆者が足りなかった。フジは心の奥底で迷い悩んでいた。
 言葉や技能が上達するにつれ厳しくなってきた同門のパイセンからのいじめも乗り越え、ついにタナカは初土俵を踏む。その姿を見たフジも迷いが吹き飛び、関取を目指すことを誓う。そして、オヤカタの本当の苗字は〈ナカタ〉。タナカではなかったが、じつに、タナカ・ドス=コイの本当の父であった。【1250字】

[アピール文]
 これはゲンロン大森望SF創作講座2023(第7期)の梗概を勝手に書いて裏に投稿したものです(投稿できてるのかな?)。外国から来てるお相撲さんて異様に日本語うまくない? アクセントとか完璧じゃない? と昔から思っていたので書きました。嘘つき、詐欺師、デマゴーグetc. が出てくる物語、とのことで、登場する嘘つきは特殊宇宙詐欺グループだけでなく、パッパやフジを含みます。まあ、人はだいたい何らかの嘘つきだと思うので。梗概中で断トツに正直なのはオカミさんと主人公タナカです。でも嘘がつけなければ善良かと言えばそうでもないかも。あと、字数の都合で書けなかったパイセンたちは〈こぶし山〉と〈くるぶし山〉です。意地悪です。たぶん双子かも。よろしくお願いします。

目に留めていただき、うれしく思います。ご縁に幸あれ。