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【完結】トガノイバラ #1~#93

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【和風味吸血鬼的現代ファンタジー】 伊明と琉里は高校2年生の双子の兄妹。 変な父に振り回されつつも普通の生活を送っていた。 そんなある夜、とつぜん琉里に異変が起こる。 廻り…
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#過去の鈴の音

『トガノイバラ』完結の御礼

おはようございます。 気づけば師走、今年も残すところあとひと月、キャーイヤーとなっているのは私だけではないはず…と勝手に思い込んでいる高埜です。 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。 昨日を持ちまして、トガノイバラ全93話、無事に連載を終えることができました。 ご挨拶のスキ、お返しのスキ、応援のスキと好きのスキ、そしてあたたかなコメントの数々……見に来てくださり、読んでくださったみなみなさま、本当にありがとうございました。 サポートくださった方もいらっしゃり、感謝の極

トガノイバラ#72 -4 悲哀の飛沫…13…

 文音と出逢った日も――雨が降っていた。  黎明学園高等部から大学へエスカレーター式に進学した伊生は、家の意向に従って寮にも入らず部屋も借りず、片道一時間半の道のりを張間の運転する車で通っていた。  郊外から郊外へ、ドーナツを横断するような大移動であったが、伊生にとっては苦ではなかった。どうでもよかった、というべきか。  『日常』に対して伊生の食指は一ミリも動かない。  まあ、そとに居る時間が長いほうがギルワーを見つける機会も増えるだろう――と思っていたくらいである。

トガノイバラ#73 -4 悲哀の飛沫…14…

「そういう意味で言ったんじゃない。……あなたは知らないかもしれないけど、私たちは血を繋ぐために生まれてきたの。新しい命に母たちの祈りと加護を授けて、そこへ還るために私たちは生きてる」 「知ってるよ。ギルワーどもの悪趣味な儀式だろう」 「失礼ね。悪趣味なのはお互いさまじゃない」  一緒にするなと文句を言ってやろうとして、伊生はすぐに口を閉じた。  なにを普通に喋っているのか。  相手は薄汚いギルワーの小娘だというのに。  言葉の代わりに息をついた。  瞼を閉じ、そして

トガノイバラ#74 -4 悲哀の飛沫…15…

 その日を境に、宙ぶらりんだった伊生の生活はがらりと変わった。奇しくも遠野の直感的見通しが現実のものとなったのである。  伊生は家の地下牢を使わず、張間も連れず、一人で外で狩りをして、父には報告のみをあげるようになった。  もちろん嘘の報告である。  実際は狩りなどせず、見つけても無視を決めこむか、なんらかのきっかけで関わらざるを得なくなれば遠野を介して片っ端から文音のもとに送った。  文音はギルワーたちの支援活動を行う地下グループ――というと大仰に聞こえるが、種の性