トガノイバラ#71 -4 悲哀の飛沫…12…
「あれをどうするつもりなんですか」
少年の顔つきは戻っている。仮面をつけ直したように、巻き戻しを掛けたみたいに。
「いくらなんでも、宗家の当主がギルワーを匿い続けるわけにはいきませんよね。シンルーの血が混じっているとはいえ――いいえ、だからこそ余計に悪い。あれは宗家の恥ですよ。処理が必要なのではないですか? あなたがここに戻ってくるのなら、すぐにでも」
伊生は識伊の顔に置いていた無感情な瞳をふたたび牢内にもどした。後頭部を格子に預け、目を閉じる。ふと唇が緩んだ。