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書き上げた小説を大事にしまっています。
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記事一覧

【小説】幸福なウエイター

・ エイブは小さなレストランのウエイターでした。仕事でもプライベートでも問題も起こさず真面目に働いていたため、オーナーに気に入られてお店で一番長く勤めていました。仕事終わりの男たちが集まるようなレストランでしたので、彼も無理にサービスをしなくて済むため長続きすることができたのだと思います。 私はその日、朝から晩までのシフトでしたが夜の営業時間以外は軽食と飲み物しか出さないこともあり客足は多くありません。いつも通り新聞を読んで時間を潰していたところにドアチャイムが鳴る音がし

丸テーブル【ショートショート】

丸テーブル購入を検討している。 あのカフェの窓際に置いてある可愛いらしいやつだ。 日々様々なサイトを閲覧しては部屋に置いて読書やコーヒーブレイクする自分を想像しては胸が躍る。しかしそんな少年のような心は、とある問題で粉々にされてしまう。ズバリ部屋が狭いのだ。 丸テーブルを置く空間くらいは無論あるのだが、丸テーブルと合わせ椅子も買わねばならぬ。そこまでの許容出来る空間は生憎だが持ち合わせていない。丸テーブルだけ買って何が出来ようか。丸テーブル単体で何をしろと言うのだ。友人を集め

【小説】向かい合わせ

向かい合わせ僕と彼女はいつも向かい合わせに座ります。 ご飯を食べる時もカフェで一休みする時だって向かい合わせです。 友達は僕達を見ても何も言わないけど 初めての人にはよく驚かれます。 私はあなたと向かい合わせに座ります。 お話をする時はもちろん電車に乗る時も あなたに伝えたいことがある時は必ず向かい合わせになります。 私は、まだまだ知らない言葉が多くて上手に伝える事が出来ないかもしれないけど、あなたの顔を見ながら会話が出来るこの座り方が好きになりました。 『君は歌が上手い

【小説】世直し一揆クリスマス

01.愚か者メロス 12/24 この日、恵比寿ガーデンプレイスには雪が降った。遠目から見た人々は時期柄浸る事も出来たことだが当事者達は災難でしかない。 実はこの雪、大勢の男達が降らしたのだ。否、彼らは犯人なのである。雪に見えたのは実は、マシュマロであり持参したそれを恋人達に投げては投げ更に投げた。まるでこれが本来の過ごし方の如く至極当然であり文化であるかのように 「ホワイトクリスマスだ!」と茶々を入れる阿呆も居た。他にも多数の罵詈雑言、非難轟々の嵐が局地で発生していたが私