異分野からロースクールに行った話

無事に3年間のロースクール生活を終えたので記録。

ロースクールって何?

修了すると司法試験を受ける資格を獲得できる大学院。
法学部出身者向けの2年制の既習コースと、非法学部出身者向けの3年制の未修コースに分かれる。
稀に凄まじい努力家が非法学部から法学部出身の猛者に混ざって既習者コースに進学することもあるが、非法学からロースクールに行くと基本的には未修コースに行くことになり、私自身もこの未修コースで入学した。
未修って名前だから未修者向けかと思いきや、クラスのほとんどは法学部出身者で先生方も初学者向けと言いつつ全く初学者向けではない授業をしてくる。司法試験そんなに甘かねぇって思い知らされる。

1年目

法学部で習うはずの基礎的な法律知識を1年間で叩き込まれる。
入学前に一応一通り基本書とかを読んで授業を受けるが、普通に無理。
ロースクールにもよるが、3割くらいしか2年生になれない時なんかもあるし、この1年で諦めて辞めていく人も多い。
憲法・民法・刑法・民訴・刑訴・商法を一気に教わるから予習も復習も効率よくやらないと間に合わないし、あたふたしてる間に定期試験に襲われる。
なんでこんな進路選んだんだろうって思う暇もなく1年があっという間にすぎていく。
とにかく全部わからんからどれから手つけていいんだ?って言う状況が続いてしまっていた。授業内の情報を全部拾うのは大事だけど、最初から全部完璧に理解するのは不可能だから、予備校の本とかである程度の取捨選択なり優先順位をつけるなりすればよかったなと後悔してる。

2年目

ここで既習コースの人たちと合流して授業を受けることになる。
既習の人たちは知識量のインプットもアウトプットも慣れているし、授業も1年目の「初心者」モードが完全になくなるから大変さが増す。
1年間あれだけ勉強したはずなのに、知らないことも理解してないこともゴロゴロ出てくるから焦る。
友達がいなかったら、情報面やメンタル面で詰んでたと思う。勉強はもちろん大事だけど、予備試験じゃなくてロースクールを選択した以上周りの人との交流はめっちゃ活用した方がいいと思った。特に未修出身は、勉強量や情報量が少ないから、既習の人たちに助けてもらうことが大事。
ロースクールの授業は「ソクラテスメソッド」(通称ソク)という、授業中めちゃくちゃ当てられるスタイルで行われる。クラスメイトに自分の無知が露呈する怖いシステムで、嫌う人も多い。
個人的には自分のアホな回答で授業を止めるのは申し訳ないとは思うけれど緊張したり威圧感を感じたりはしなかった。このソクに対するメンタルは、研究発表とか授業内のプレゼンにおいて質疑応答を経験していたおかげで人前で自分の考えを言うことに慣れていたのが一番影響していたと思う。

3年目

司法試験在学受験が7月にある中での授業。
今年はお試しのつもりで受けようなんて気楽に思っていたけど、いざ近付くと焦る。普通に勉強量も知識量も何もかも足りずに落ちたけど、得られた反省点は多い。
授業自体は3年間の中で一番楽。楽というと語弊があるけれど、一応基本的な知識は2年間で触れてるし、はじめましての知識が減ってくるので今までに比べたらマシという程度。
模擬裁判等の実務科目は楽しめる人と苦痛に感じる人に分かれる。ただ、どっちにしても実務科目の経験をすると民事・刑事の解像度が上がるので勉強に還元しやすい。

まとめ

3年間通して振り返ると、地獄にはいたけど友達がいたから乗り越えられたなという感想。
異分野に行ったら今までの知識が直接的に役立つことはほぼないし、かつていた分野で同期や後輩が追いつけないところに進んでいくのを遠くで眺めながら、異分野でなかなか思うように進めない苦しみを味わうことになる。
けど、今までの経験が1個も活用できなかったわけではない。特に、プログラミングと法律分野は似てるところも多く、考えの整理方法はかなり似てる。
参考文献の論文を読んできた経験、研究やレポートのアイデアが他の人と被らないように考えてきた経験はどこの分野でも役立つし、これ以外の経験も形を変えて自分を支えてくれた。
あと、ロースクールに限らず、異分野とか新しいところで生きていくためには今までどれだけ頑張ったかとか1回捨てて、自分アホです!助けてください!って姿勢も大事。努力しないで他人に乗っかれという意味ではなく、自分のベストは尽くした上で周りに助けてもらえるようにしとき、ということ。
前いた分野に未練がないかと言われると完全にないとは言い切れないけど、今の分野に進んでよかったと思える3年間でした。

追記
学部の4年間、漢字を予測変化に頼りきって生きていたことによる弊害は大きいので、法律分野に限らず手書き文化が残る分野に行く前には漢字の読み書きのリハビリが有効です。
私は漢字が読めなくて何回か笑いものになりました。

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