小説『雑記帳』より。(1話②)
1話 私と鈴木さん②
「鈴木さん?」
私が小声で声をかけると、鈴木さんは人差し指を口元にあてて「静かに」と手を軽く振った。
客は男女の二人。常連ではなさそうだ。たった一つのテーブル席に座っている。
二人の間のテーブルの上の空気が、まるで火花のようにチリチリしている。良い雰囲気とはとても言えない。どうやら別れ話のようだが、男性の方が分が悪そうだ。
突然女性がグラスの水を男性にぶちまけた。水は男性の顔を直撃したが、顔をそむけただけだった。避けもしない男性の態度に、ますます