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詩:季節の忘れ物

冬が去ると
鯨が海をるように
そこかしこから 春がぬうっと顔を出す
春に触れた分だけ雪は静かに溶けていく

春の通った跡から冬の忘れ物達が顔を出す

折れた枝 潰れた木の実 落ち葉達
片っぽの手袋に 点字タイルのカケラ タバコの吸い殻

中には変わったものもある
髪飾り 看板 アイスの棒

路傍の溶け残った雪達は
揃いも揃って 薄汚れた小石の宝冠を被り うつむきながら立ち尽くす
いずれ滅びる王族達の様に

いつしか それらも春に呑み込まれていく

そして 夏が来る頃には 春の忘れ物達が顔を出すのだ

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