2020年度打ち切り率調査
ラノベ読みにとってこの世で一番憎むべきものは何か。
言うまでもない。打ち切りである。
最近筆者はジャンプの打ち切りレースで追いかけてた奴がぎえー1クール半ぐらいで死んだー!を繰り返して心を痛めているのだが、ラノベ界の打ち切りはその比では無く酷い。ジャンプの打ち切りは最低限終わらせて単行本を出してくれるが、ラノベの打ち切りは大きな話がまだ続くよ!みたいな感じのノリのまま続きがぱったり出ない形に死ぬ。なぜこんなことが20年以上許されてるんだと憤りたくなるような不義理である。Webで読んでた奴が書籍化されて喜んだのもつかの間売上が芳しくなかったのかWebに追いつきすらせず切られてそしてWebの奴もそのまんまエターなる悲劇など近年もう山程ある。
それで、はい。
実際に電撃で作家やってた人が(名義違うけどこう紹介していいのかな……)こんな呟きをしていたのを目にした訳ですよ。
短期間で終わって長編シリーズにならないやつに昨今よく出会う、これはラノベ読みにとっても体感的にそうだと思うことなはずだ。
という訳で調べてみた。
調査方法
毎年出ている「このライトノベルがすごい!」という雑誌がある。
この雑誌はその年出たラノベの人気投票を行っているので、当然投票対象を自明にするためにその年出たライトノベル(だと思われるもの)の一覧を用意してくれている。
http://www.uranus.dti.ne.jp/~t-myst/lightnovellist2020.html
http://www.uranus.dti.ne.jp/~t-myst/lightnovellist2021.html
ここに2020年度分と2021年度分の一覧があったのでこれを利用し、
以下のものを調べてみることにした。
・2020年度リストで3巻以下・かつ2021年度に名前がないもの
・2020年度リストで3巻以下・かつ2021年度に名前があり3巻以下
・2020年度リストで3巻以下・かつ2021年度に名前があり4巻以上
年度を跨いで新刊を出せなかったものを打ち切りとする、上で言われていた3巻の壁を越え4巻が出たものを打ち切り回避と判断する、まあかなり雑な判定ではあるがとりあえず目安にはなるだろう。
20シリーズ以上出してるレーベルは短期終了の割合も計算しておく(四捨五入)。
ではスタート。
*アース・スターノベル
2020年度出版:39シリーズ
1巻:7
2巻:8
3巻:1
2021年度生存:7
3巻の壁を超えてない:5
4巻目以降が出てる奴:2
短期率:16/39 = 0.41
*アリアンローズ
2020年度出版:16シリーズ
1巻:0
2巻:0
3巻:3
2021年度生存:5
3巻の壁を超えてない:5
4巻目以降が出てる奴:0
*アルファポリス
2020年度出版:73シリーズ
1巻:7
2巻:1
3巻:10
2021年度生存:21
3巻の壁を超えてない:17
4巻目以降が出てる奴:4
短期率:18/73 = 0.24
*一迅社文庫アイリス
2020年度出版:17シリーズ
1巻:8
2巻:1
3巻:0
2021年度生存:2
3巻の壁を超えてない:1
4巻目以降が出てる奴:1
*アイリスNEO
2020年度出版:16シリーズ
1巻:5
2巻:1
3巻:0
2021年度生存:6
3巻の壁を超えてない:5
4巻目以降が出てる奴:1
*一迅社ノベルス
2020年度出版:10シリーズ
1巻:6
2巻:0
3巻:0
2021年度生存:4
3巻の壁を超えてない:4
4巻目以降が出てる奴:0
*ウィングス文庫
2020年度出版:8シリーズ
1巻:1
2巻:2
3巻:0
2021年度生存:3
3巻の壁を超えてない:3
4巻目以降が出てる奴:0
*HJ文庫
2020年度出版:40シリーズ
1巻:10
2巻:3
3巻:4
2021年度生存:7
3巻の壁を超えてない:5
4巻目以降が出てる奴:2
短期率:17/40=0.425
*HJノベルス
2020年度出版:30シリーズ
1巻:3
2巻:0
3巻:2
2021年度生存:10
3巻の壁を超えてない:6
4巻目以降が出てる奴:4
短期率:5/30=0.17
*MF文庫J
2020年度出版:63シリーズ
1巻:14
2巻:9
3巻:1
2021年度生存:7
3巻の壁を超えてない:5
4巻目以降が出てる奴:2
短期率:24/63=0.38
*MFブックス
2020年度出版:40シリーズ
1巻:2
2巻:14
3巻:1
2021年度生存:12
3巻の壁を超えてない:10
4巻目以降が出てる奴:2
短期率:17/40=0.425
*エンターブレイン(ホビー書籍部)
2020年度出版:13シリーズ
1巻:1
2巻:3
3巻:1
2021年度生存:1
3巻の壁を超えてない:1
4巻目以降が出てる奴:0
*オーバーラップ文庫
2020年度出版:47シリーズ
1巻:6
2巻:4
3巻:3
2021年度生存:12
3巻の壁を超えてない:7
4巻目以降が出てる奴:5
短期率:13/47=0.28
*オーバーラップノベルス
2020年度出版:19シリーズ
1巻:2
2巻:0
3巻:2
2021年度生存:8
3巻の壁を超えてない:7
4巻目以降が出てる奴:1
*オーバーラップノベルスf
2020年度出版:8シリーズ
1巻:2
2巻:0
3巻:0
2021年度生存:6
3巻の壁を超えてない:6
4巻目以降が出てる奴:0
*ガガガ文庫
2020年度出版:34シリーズ
1巻:3
2巻:2
3巻:4
2021年度生存:15
3巻の壁を超えてない:8
4巻目以降が出てる奴:7
短期率:9/34=0.26
*ガガガブックス
2020年度出版:11シリーズ
1巻:1
2巻:2
3巻:0
2021年度生存:4
3巻の壁を超えてない:2
4巻目以降が出てる奴:2
*角川スニーカー
2020年度出版:53シリーズ
1巻:14
2巻:8
3巻:1
2021年度生存:5
3巻の壁を超えてない:1
4巻目以降が出てる奴:4
短期率:23/53=0.43
*角川ビーンズ文庫
2020年度出版:27シリーズ
1巻:12
2巻:1
3巻:1
2021年度生存:5
3巻の壁を超えてない:4
4巻目以降が出てる奴:1
短期率:14/27=0.52
*カドカワBOOKS
2020年度出版:59シリーズ
1巻:5
2巻:15
3巻:6
2021年度生存:15
3巻の壁を超えてない:8
4巻目以降が出てる奴:7
短期率:26/59=0.44
*講談社ラノベ文庫
2020年度出版:33シリーズ
1巻:15
2巻:3
3巻:2
2021年度生存:8
3巻の壁を超えてない:8
4巻目以降が出てる奴:0
短期率:20/33=0.61
*Kラノベブックス
2020年度出版:18シリーズ
1巻:1
2巻:1
3巻:3
2021年度生存:8
3巻の壁を超えてない:5
4巻目以降が出てる奴:3
*コスミック文庫α
2020年度出版:14シリーズ
1巻:8
2巻:1
3巻:3
*サーガフォレスト
2020年度出版:17シリーズ
1巻:1
2巻:2
3巻:4
2021年度生存:6
3巻の壁を超えてない:4
4巻目以降が出てる奴:2
*GA文庫
2020年度出版:51シリーズ
1巻:4
2巻:15
3巻:0
2021年度生存:14
3巻の壁を超えてない:8
4巻目以降が出てる奴:6
短期率:19/51=0.37
*GAノベル
2020年度出版:18シリーズ
1巻:0
2巻:4
3巻:2
2021年度生存:5
3巻の壁を超えてない:3
4巻目以降が出てる奴:2
*GCノベルズ
2020年度出版:26シリーズ
1巻:0
2巻:3
3巻:0
2021年度生存:8
3巻の壁を超えてない:4
4巻目以降が出てる奴:4
短期率:3/26=0.12
*星海社FICTIONS
2020年度出版:19シリーズ
1巻:7
2巻:1
3巻:0
明白にシリーズではなくアンソロジーな奴(買った)があるのでそこは1巻打ち切りとカウントはしていない。
*ダッシュエックス文庫
2020年度出版:37シリーズ
1巻:14
2巻:2
3巻:1
2021年度生存:4
3巻の壁を超えてない:2
4巻目以降が出てる奴:2
短期率:17/37=0.46
*ツギクルブックス
2020年度出版:22シリーズ
1巻:9
2巻:3
3巻:0
2021年度生存:7
3巻の壁を超えてない:5
4巻目以降が出てる奴:2
短期率:12/22=0.55
*TOブックス
2020年度出版:48シリーズ
1巻:2
2巻:11
3巻:3
2021年度生存:16
3巻の壁を超えてない:9
4巻目以降が出てる奴:7
短期率:16/48=0.33
*電撃文庫
2020年度出版:83シリーズ
1巻:21
2巻:9
3巻:3
2021年度生存:18
3巻の壁を超えてない:12
4巻目以降が出てる奴:6
短期率:33/83=0.40
最大手でも約4割が年を越せていない。分子も分母も壮観である。
ただこれ1巻完結ですよねみたいなのも歴史的に多いので数値だけでは語りきれないかもしれない……。
*電撃の新文芸
2020年度出版:17シリーズ
1巻:3
2巻:2
3巻:1
2021年度生存:8
3巻の壁を超えてない:3
4巻目以降が出てる奴:5
短期率:6/17=0.35
去年のこのラノで最多得票数を取った異修羅が投票を頼んだ時の呼びかけが「現状では第一回戦が終えるくらいで終わってしまう可能性もあります」だったことは記憶に新しく、実際にその第一回戦全完了を成し遂げたのがこの前の5巻だった為、3巻の壁を越えるのはあれほどの人気があってもなかなかに大変なようだ。
ところで英国幻想蒸気譚の3巻はいつになりますか。
*ドラゴンノベルス
2020年度出版:35シリーズ
1巻:7
2巻:8
3巻:2
2021年度生存:13
3巻の壁を超えてない:11
4巻目以降が出てる奴:2
短期率:17/35=0.49
*PASH!ブックス
2020年度出版:13シリーズ
1巻:2
2巻:3
3巻:2
2021年度生存:3
3巻の壁を超えてない:3
4巻目以降が出てる奴:0
*BKブックス
2020年度出版:18シリーズ
1巻:12
2巻:4
3巻:0
2021年度生存:1
3巻の壁を超えてない:1
4巻目以降が出てる奴:0
*ビーズログ文庫
2020年度出版:24シリーズ
1巻:6
2巻:2
3巻:2
2021年度生存:9
3巻の壁を超えてない:8
4巻目以降が出てる奴:1
短期率:10/24=0.42
*ビーズログ文庫 (単行本)
2020年度出版:9シリーズ
1巻:8
2巻:0
3巻:0
*ヒーロー文庫
2020年度出版:40シリーズ
1巻:6
2巻:6
3巻:5
2021年度生存:5
3巻の壁を超えてない:3
4巻目以降が出てる奴:2
短期率:17/40=0.425
*ファミ通文庫
2020年度出版:29シリーズ
1巻:18
2巻:3
3巻:1
2021年度生存:3
3巻の壁を超えてない:2
4巻目以降が出てる奴:1
短期率:22/29=0.76
なんと3/4が年を越せていない。
かつて大手文庫の一角だったはずだが、随分と生存者が少ない……。
*ファミ通文庫(B6判)
2020年度出版:14シリーズ
1巻:6
2巻:0
3巻:0
2021年度生存:4
3巻の壁を超えてない:3
4巻目以降が出てる奴:1
*ファンタジア文庫
2020年度出版:67シリーズ
1巻:11
2巻:16
3巻:4
2021年度生存:8
3巻の壁を超えてない:4
4巻目以降が出てる奴:4
短期率:31/67=0.46
*フェアリーキスピュア
2020年度出版:15シリーズ
1巻:10
2巻:3
3巻:1
2021年度生存:1
3巻の壁を超えてない:1
4巻目以降が出てる奴:0
*ブレイブ文庫
2020年度出版:9シリーズ
1巻:2
2巻:1
3巻:0
2021年度生存:5
3巻の壁を超えてない:4
4巻目以降が出てる奴:1
*ベリーズ文庫
2020年度出版:16シリーズ
1巻:14
2巻:1
3巻:0
*ベリーズファンタジー
2020年度出版:4シリーズ
1巻:3
2巻:0
3巻:0
2021年度生存:1
3巻の壁を超えてない:1
4巻目以降が出てる奴:0
*マッグガーデン・ノベルズ
2020年度出版:7シリーズ
1巻:3
2巻:3
3巻:0
*モーニングスターブックス
2020年度出版:8シリーズ
1巻:2
2巻:0
3巻:2
*モンスター文庫
2020年度出版:15シリーズ
1巻:0
2巻:5
3巻:0
2021年度生存:2
3巻の壁を超えてない:1
4巻目以降が出てる奴:1
*Mノベルス
2020年度出版:30シリーズ
1巻:1
2巻:4
3巻:1
2021年度生存:13
3巻の壁を超えてない:11
4巻目以降が出てる奴:2
短期率:6/30=0.2
*Mノベルスf
2020年度出版:17シリーズ
1巻:0
2巻:5
3巻:0
2021年度生存:11
3巻の壁を超えてない:7
4巻目以降が出てる奴:4
*UG novels
2020年度出版:3シリーズ
1巻:3
2巻:0
3巻:0
なんと全滅である。果たして打ち切りなのか全部1冊完結なのか。
*LINE文庫エッジ
2020年度出版:27シリーズ
流石にレーベルごと消滅した例をカウントしないだけの慈悲はあった。
*レジーナブックス
2020年度出版:45シリーズ
1巻:25
2巻:9
3巻:1
2021年度生存:6
3巻の壁を超えてない:5
4巻目以降が出てる奴:1
短期率:35/45=0.78
*レジーナ文庫
2020年度出版:20シリーズ
1巻:10
2巻:3
3巻:3
2021年度生存:2
3巻の壁を超えてない:1
4巻目以降が出てる奴:1
短期率:16/20=0.8
これが2020年度最大の短期率。
*レジェンドノベルス
2020年度出版:19シリーズ
1巻:5
2巻:8
3巻:3
2021年度生存:4
3巻の壁を超えてない:3
4巻目以降が出てる奴:1
*レジェンドノベルス・エクステンド
2020年度出版:4シリーズ
1巻:1
2巻:3
3巻:0
ぜえぜえはあはあ。
2020年度に出た57文庫、総計1514シリーズに渡って調査した結果である。
なんと1年間に656シリーズが3巻の壁を突破出来ずに散っていっている。
この数値は約43%に登る上で、翌年に4巻以降を出せた奴も多いとは言えない。
肝心の1巻で出しどめの量は349作品で、およそ23%。このうちのどれほどが最初から1冊完結の読み切りでどれほどが本当に1巻打ち切りであったのかは多すぎて知るよしもないが、決して少ないとは言いづらい数値である。
2021年に生存することが出来たのは348作品で、そのうちで4巻の壁を越えられたのは106作品。
2020年に出た3冊以内のシリーズが1004作品となるので、4巻目を出せたのはその内約1割となる。
また、短期率カウントをした25レーベルのうち、約6割4分の16レーベルが電撃文庫の短期率0.4を上回る短期率を出している。
大手レーベルだと単巻完結を出せる余裕があると言うことなのかそれとも多く入れて多く打ち切る蠱毒戦略を取っているのかは追加調査の必要があるだろう。
とりあえず、今本屋にでている本の中で約半分ぐらいのものは来年続きに出会えるとは限らないようだ。厳しい世界である。
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