見出し画像

1文字も書けなくなったライター

ライターでありながら、1文字も書けなくなったことがあります。何もかもがわからなくなってしまったからです。

なぜ書くのか、誰のために書くのか、何を書きたいのか、どう書くべきなのか。

全てがわからなくなり、そのとき「ライター人生の終わり」を感じました。

そのときの出来事は、自分でも直視したくありません。でも、ここから目をそらすから自分は成長しないのかもしれないとも思いました。

不甲斐ない自分を直視して、ここから這い上がろうと思います。


テストを受け、無力さと未熟さを痛感する

仕事の依頼が激減し、報酬が約3分の1になったときのことです。

ランサーズ以外のクラウドソーシングにもいくつか登録をしました。

そしてそれぞれのタスクをこなしながら、プロジェクト案件にも応募し、なんとか仕事を獲得しようと必死だったのです。

そんな中、「あるテストに合格すると、高単価の仕事ができる」という情報を仕入れました。(テスト内容にも触れるので、ここではあえてテスト名を伏せます)

もちろん、受けました。そんな素敵なテストがあるという情報を知ったら、受けない理由なんてありません。

どこかで自信もあったのです。もう4年もライターをやって来たし、ランサーズのライティングから数えると7年も経験があるのだから。今は報酬が減っているけれど、15万円も稼げた実績だってあるのだから。

しかしそんな自信は、テスト開始数秒で簡単に打ち砕かれたのです。

想像以上のボリューム。私の苦手とする構成やリライト。しかもテーマは不得意分野ばかり。

書き方によっては健康被害に繋がる危険性もあるため、慎重な言葉選びも求められていることがわかりました。さらに深いリサーチ力やクライアントの要望を想像し理解する力なども求められています。

ダメかもしれないと思いました。

でも、何度受けてもいいと言われているテストです。まずはやり遂げることが大切だと思い、リサーチにリサーチを重ね、調べたことを書き出し、構成を考え、タイトルを決め、見出しの粒度を揃え、読者のテイストに合わせて文章を書き、推敲し、テストを開始してから約10時間後にやっとの思いで仕上げました。

夜中の12時を回ろうとしていました。家事はほぼ夫に頼んで、テストだけに集中した10時間。これで不合格なら夫にも申し訳ないと感じながら、祈る気持ちでテストを送信したのです。

しかし「受かってくれ」と思う反面、よくわからない恐怖心も込み上げてきていました。

この時はなぜ恐怖を感じるのかわからなかったのですが、自分の無力さや未熟さを痛感し、「ライター」と言う仕事の難しさを改めて知ったからだと思います。

テスト結果に想像以上のダメージを受ける

結果は不合格。

開いたメールには「基準に達しておりませんでした」という文字が並んでいました。

「多分ダメだ」と感じながらも、本当はどこかで「もしかしたら」という期待もあったのです。ドキドキ高鳴る胸を押さえながら結果を待っていたところ、そのメールは届きました。

不合格を知らせるそれは、想像以上に私にダメージを与えました。

基準に達していないその答案は、自分のそれまでの集大成だったからです。全力で集中し、自分の持っているものを全て注ぎ込んで、本気で仕上げたものだったからです。

「不合格」という結果は、ライターとしての自分を完全否定されたも同然です。

基準に達しておりませんでした。

その言葉が、「君、ライターに向いてないよ」「ライターとしての能力ないよ」「こんなんでライターだと思ってたの?」と変換して、追いかけてくるようでした。

猛勉強により、大きな壁にぶち当たる

しばらく力が抜けていましたが、こんなことでへこたれているわけにはいかないと立ち上がり、猛勉強を始めました。

文章の書き方についての本を購入して、1から学ぼうと思ったのです。SEOに関する記事も読み漁り、あるサイトで提供しているライター向けの大量の記事もすべて目を通して要点をノートにまとめました。

そして、コラムの書き方、リサーチ方法、見出しの粒度の揃え方、PREP法(結論→理由→具体例→結論と言う構成方法)などの構成の仕方、美容記事の禁止事項、著作権法についてなど、知れば知るほど、自分がどれだけ無知だったのかを思い知ったのです。

多分、ここで「知ることの楽しさ」を感じられる人はライターに向いているのだと思います。

しかし私は「知らなかった。知らずにここまできてしまった」という罪悪感しか生まれませんでした。そのため、わくわくした気持ちで新しい情報を吸収することができなかったのです。

ただ苦しいだけなのです。「早く覚えなくては」「早く全てを知って、ライターとして基本的な技術を身につけなくては」と気持ちばかり焦り、睡眠時間も削って本を読みまくりました。でも、心がついていかないのです。

これも知らない。何も知らない。どうして今まで知ろうとしてこなかったのか。私はこの4年、何をしてきたんだ。

目の前に分厚くて高い壁がドーンと立ちはだかっているように感じました。

私には乗り越えられないかもしれない。もうだめかもしれない。

色々な文章を読めば読むほど、他のライターさんの素晴らしさを思い知り落ち込むし、こんな人たちと闘うなんて無理だと怖くなるのです。

クラウドワークスで応募した案件が不採用になったのも、ちょうどこの時でした。

業務委託契約を結ぶ会社から業績悪化報告をうけ、報酬が3分の1になったのも、「本当は私を切りたかっただけなのではないか」「他のライターを雇いたいから、私が自分から辞めるのを待っているのではないか」とネガティブな感情ばかり込み上げてきました。

2度目のテストで書けなくなる

自分に自信を持つためには、テストに合格しなければならないと思いました。そこで、猛勉強したことを発揮するため、2度目の受験を決めたのです。

こんなテストであればこう書こう、こういう題材にはこう対応しようと、ある程度の流れを自分の中で決めて、「今まで詰め込んだ知識を存分に吐き出して、とびきりのものを仕上げるんだ」と意気込んでテストを開きました。

しかし問題文を見て、書こうとしたとき「本当にそれでいいの?」と、突然不安が襲ってきたのです。

そして、私の手が止まりました。

そこから何も書けなくなってしまったのです。

1文字も書くことができないのです。


「です」の文末は3回以上続けてはダメ
かもしれない、でしょう、などの断定しない文末はダメ
思います、おすすめです、などの主観的表現はダメ
~するべき、間違いない、などの表現もダメ
接続詞は省く
表記ゆれがないように
英数字は半角
固有名詞の使用不可
ら抜き、い抜き言葉を使わない
「~たり」は同程度のことを繰り返すときに使用する
話し言葉は不可
株式会社と会社名の間の半角スペースを見逃さない
句読点を適切に使用する
わかりやすく、それでいて読者のテイストに合わせる
抽象的な表現を避ける
数字を使って具体的な根拠を示す
中学生が理解できるレベルの漢字を使用
自分の感想、考えは不要
無駄な表現力は不要
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

詰め込んだ知識が、私の手の上にどーんと乗っかって、重石となります。

あれもダメ、これもダメ、それもダメ。

四方八方から「ダメ」「ダメ」「ダメ」と押し付けられて、書きたいことが全て頭から消えていきます。

あぁ、ライター人生終わった。そう思いました。

同じアドバイスに2度打ち砕かれる

結局書けなくなった私は、6時間くらい空白のページとにらめっこをしていました。

もちろん、テストを中断し自分を立て直してから後日受け直すこともできます。しかし「受ける」と決めたのだから、どんな形でも仕上げて提出したかったのです。

このテストは何度も受けていい決まりですし、受けるたびにアドバイスももらえます。アドバイスをもらえば、そこからライターとしてのヒントが得られるかもしれないと思いました。

そして、予定していた回答とは真逆の回答をすることにしました。別方向からリサーチをかけ、目線を変えて、やはり10時間くらいかけて仕上げたのです。

そしてやってきた、不合格通知。

アドバイスを見て、さらに心が打ち砕かれました。

アドバイスは1回目のテスト結果のときと一字一句同じだったからです。

つまり、全力で仕上げた1回目も、猛勉強し詰め込んだ知識をもとに目線を変えてまるで違う記事を仕上げた2回目も、そのサイトの担当者から見れば「何も変わらない」ということ。

3回目で見えた希望が4回目で打ち砕かれる

私はこのテストをさらに2回、つまり計4回受けました。

書けない自分が情けなくて、悔しくて、たまらなかったのです。たくさんの優秀なライターさんがどんどん追い越していくのも怖くて、焦るからこそ、絶対にここを乗り越えて成長しなければならないと、強く思っていました。

そして、3回目の受験。

アドバイス通り、主観的表現を全て省きました。心を無にして、必要な情報だけをロボットの様に詰め込んだのです。そこに私の感情・想い・個性はありません。まるでAIになったような気分。

それを書きながら、思ったのです。


テストに受かりたい気持ちは確かにあるけれど、私はAIになりたくてライターになったの?

気持ちを乗せない文章が、読者の心に届くの?

時間のない中、確かな情報を簡単に吸収できる記事が欲しいという気持ちはわかる。

でも、全員がそうなの?

そうではない人もたくさんいるんじゃないの?


「ライターって何だろう?」と感じながら、ロボットになっていく自分。

心と頭がうまくかみ合っていない中、3回目のテストが終わりました。

結果は不合格。

ただ、アドバイスの内容が変わっていました。ロボットの様になって書いた文章は認められたようです。

この時指摘された内容は、本当に細かいことでした。テスト内容に触れてはいけない決まりなので書けませんが、簡単に直せるようなことだけだったのです。

そこで、すぐにアドバイス部分だけを修正し、4回目の受験に踏み切りました。

しかし、4回目も不合格。

さらに、4回目は記事に関するアドバイスがありませんでした。

目標を見失う

色々な不安や焦りから逃れるため、テストに受かることだけを目標に頑張ってきたのですが、4回目の不合格を受け、全てを失った気がしました。アドバイスが消えてしまえば、何をどう直せばいいのかもわかりません。

いや、テストだけのせいではありません。

ライターとしての記事作成方法を学ぶたび、方向性もわからなくなっていったのです。

自分の感情を乗せてはダメ。主観的表現NG。読者が欲しいのは情報だけ。クライアントの要望通り、ロボットの様に必要な情報をリサーチして淡々とわかりやすくまとめるだけの作業。それがライターとしての役目だと知って、わからなくなってしまったのです。

私は、ロボットになりたくて書いていたわけではない。でもそこに向かって努力しなければ、この壁を乗り越えられない。

でも、ロボットになるための努力がどうしてもできない。自分の中から、「よし頑張るぞ」と言う気力がわかない。

書けない。書きたくない。


ライターを辞めよう。

そう思いました。

そして泣きました。


書き続けた4年間。毎回タイトルが送られてくるたびに1つずつリサーチして勉強して電話をかけて取材して、仕上げていった日々。徐々に収入がアップすることに上がっていくモチベーション。購入したピカピカの自分専用のパソコン。提出した開業届。ウキウキした税務署からの帰り道。悩んで悩んで奮闘した青色の確定申告書作成。

辞めようと思えば、ライターとして1歩1歩積み上げてきた日々の記憶が1つずつよみがえってくるものです。


でも、最後に残ったのは「あぁ、苦しかったなぁ」でした。

楽しかったなぁ、ではないのです。

苦しかったんです、私。

「ワクワク」を探す旅

毎回「次はこの記事でお願いします」とタイトルが送られてくるたび、「書けないかもしれない」と思っていました。プレッシャーに負けないようにリサーチを繰り返して、必死で情報を書き出して記事にして、仕上げてやっとホッとします。

でもまたすぐに新たなタイトルが送られてきて、「次は本当に書けないかもしれない」と思うのです。

その繰り返しでした。

簡単にさらさら書けるわけではありません。リサーチや推敲に時間をかけすぎて、毎日少しの休憩時間も作ることができず、夫の休日も「仕事があるから」と言って1人パソコンに向かう日々。家事と仕事の繰り返しで、息抜きもないまま、ただ稼がなくてはと必死だった4年間。

そして業績悪化報告に、テスト4回連続不合格。応募は不採用。採用されれば詐欺まがいの案件。

あぁ、苦しかったな、私。

やめれば、この苦しみから解放される。



それなのに、涙が止まらないのです。

わからないのです。何を目標にどう頑張ればいいのか、何が正解なのか。

何かに成功している人を見ていると、みんな努力を続けています。苦しい努力もそれを「ワクワク」と言う気持ちに変えて、成功をつかみ取っているように思えるのです。

それなのに、こんなところで辞めようとしている自分はただの弱虫じゃないか。逃げじゃないか。

でも、努力する方向性が間違っているのではないかとも思うのです。

ライターの勉強に、少しもワクワクできないからです。苦しいことの連続でしかないからです。

他に「ワクワクしながら努力できる」と思えるものを見つけたとき、それこそが自分が本当に努力するべきことなのではないか。

その答えを探すため、noteへやってきました。


たくさんの方の投稿記事を読み、いろいろな考え方があるんだな、と日々学んでいます。

その中でも1番心を揺さぶった言葉が、新里さんのnoteにあったタイトルでした。

「打たないシュート」は絶対に決まらない

※ここで勝手に紹介していいのかわかりませんが、とても感動したので紹介させていただきます。すみません。

この記事を何度も読んで、本当にたくさんたくさん考えました。



そして、昨日、ある1歩を踏み出してみました。この1歩がどう変わっていくのか今はわかりませんが、きっと人生に無駄なことはないはずと思っています。

まだ自分の中で答えは出ませんが、急いで答えを出すよりも、まずは「気になる」という感覚に正直に行動してみるのもいいのかもしれません。

踏み出した1歩についてはまた後日まとめたいと思います。新里さん、背中を押していただきありがとうございました。

今回は不甲斐ない自分をさらけ出しました。不快に思った方、すみません。今の自分の視野はきっととても狭くなっているのだと思います。見えていないものがたくさんあると思います。ライターの仕事についても勘違いしている部分もあると思います。

これから1歩ずつ前に進んでみます。













この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?