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【ネタバレなし】アルトデウス:BCが最高だったのでレビュー

ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウス : BC)をクリアした。
普段アドベンチャーゲームの類をほとんどやらない私が、前作の「東京クロノス」の体験版をプレイしてその世界にどっぷりとハマり、その勢いで今作もプレイしたのだが、期待通り…いや、いい意味で、あらゆる方向から裏切られた。
正直、「VRであること」が最大のウリとなってしまい、肝心のゲーム内容が薄いものが溢れているVRゲームの中で、今作はVRをあくまでも
「演出としてVRを駆使し、ゲームの魅力を乗算して最大限に表現している」
のである。
前作の東京クロノスでも同じことが言えたが、前作は言ってみれば、
「VRでなくてもいいが、VRであることで魅力が何倍にもなる」
だったのに対し、今作はそれをさらに掘り下げ「VRでなくてはならない」レベルまで昇華させている。
よくあるVRゲームにあるような、「実際にモノがつかめる」だとか、「銃を構えて撃てる」だとか、そんな直感的にVRを体験できるゲームではなく、「VRで脳とココロを直接揺さぶってくる」という内面から攻めてくるのが、このアルトデウス:BCというゲームだ。

前置きはこのくらいにして、今作の魅力をネタバレなしでできる限り語っていきたいと思う。

「見上げる」ことで得られる圧倒的没入感

今作では、非常に巨大なキャラクターが複数登場し、その度にそれらを「見上げる」という動作が発生する。これまでのVRゲームでは、「見わたす」ことはあっても「見上げる」という場面はそれほど多くない。

この「見上げる」動作が非常に大きな没入感を産んでおり、世界と物語の大きさを感じさせてくれる。そして、その最高峰がノアというキャラクターが演じるライブシーンだ。

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まさに未来のライブ。「これが最適解だ」と感動すること間違いなしだ。
もうこれだけでもお金取れるレベル。今度企画してくれませんかね?

どこかで聞いたことのある世界観、だがそれがいい

舞台は近未来の東京。しかしとある理由から世界は荒廃しており、人々はその世界の中でテクノロジーを糧にひっそりと暮らし、突きつけられる現実に抗っている。

これだけ聞くと、誰しもがどこかで聞いたことのあるような世界観だと感じるのではないだろうか。
「進撃の巨人」「攻殻機動隊」を思い浮かべる人もいれば、「エヴァンゲリオン」を想像する人もいるだろう。またある人は「真・女神転生」と重ねるかもしれない。

言ってみれば、「よくある」世界観ではあるのだが、その既視感があることで、今作のストーリーにスムーズに入っていくことができる。
現実とあまりにかけ離れたファンタジーやSFの世界は、VRを通して体験したときにどうしても「初めて見る光景のすごさ」といったものに目と心を奪われてしまいがちだが、今作は現実ではあり得ない光景を見せられているにも関わらず、自分がどこかで「経験した」ことのあるような錯覚に陥ることで一気に物語への没入感が高まっていく。

特に冒頭のエレベーターのシーンやブリーフィングのシーンなど、「どっかで見たことあるこういうの!」感が強く、これから始まる物語へのワクワク感を高めてくれる。

男子の夢を叶えてくれる、巨大ロボ戦闘

今作では、「マキア」と呼ばれる巨大ロボに乗り込んで戦うシーンがある。巨大ロボとVRの相性は当然のごとく最強で、男子なら誰しもが憧れた夢を叶えることができる。

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しかもこのマキア、自身をシンクロさせて動かすという、これまた「どこかで見たことある」設定となっており、まさに没入感シンクロ120%なのだ。
ただ、巨大ロボを操作できるとは言っても、今作はアクションゲームではなくアドベンチャーゲーム。ギュンギュン飛び回ったりガンガン敵をなぎ倒して行く…といったものではなく、あくまでも演出としての操作にとどまっている。そのため、アクションゲームが苦手な人も問題なくプレイでき、かつロボットに乗ってる感は損なわない絶妙なバランスを保っている。

この戦闘シーンでの選択結果により物語は分岐していくのだが、単純に次に取る行動をカーソルで選んで決定するというものではなく、マキアの操作自体が「選択肢」となっており、「自分が物語を動かしている」感が凄い。

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先述の通り、操作自体は単純ではあるものの、目の前に現れるタッチパネルを実際に手で押し、キャノンを構え、エネルギーが溜まったところでぶっ放す…という、厨二病心をくすぐり倒してくるツボはしっかりと抑えている。

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思わず、「今だ!」とか、「いっけぇーーー!!」と叫んでしまいたくなること間違いなしだ。

「リブラ」システムが可能にする「客観的選択」感

今作はゲーム中に選択肢が表示され、選択することでストーリーが分岐していくという、オーソドックスなアドベンチャーゲームのスタイルを踏襲している。
しかし、VRという性質上、選択肢を選ぶ際にどうしても主観的な考えに左右されてしまう。主人公であるクロエになりきって考えると、当然この選択肢を選ぶでしょ、といった選択肢と共に、普通に考えると選ばないものも表示される。
しかし、選択肢とともにゲーム内の世界で実際に人々が何かを決断する際に使っているという、パーソナルAIシステム、「リブラ」というものが表示される。

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このシステムでは、「この選択をすることで変動するパラメータ、外部環境」が数値化されて表示され、主観で選ぼうとしていた選択肢も、「本当にこれでいいのか?」と考えさせられる。
その数値を見てもなお、この主観を貫く!と選んだ選択肢は自身の強い意志の表れとしてその後のストーリーにさらなる没入感を与え、この数値で考えを変えた場合は、客観的な数値による自己肯定をしつつも、どこかで後悔と隣り合わせでストーリーを進めていくことになる。
ただ選択肢を選ぶという行為にこのエッセンスが加わることで、ひとつひとつが大きな意味を持つようになってくる。
なおかつ、この表示はゲーム内の世界で実際に使われているシステムのため、没入感を邪魔することもない、素晴らしいシステムだと感じた。

魅力的で、謎に包まれたキャラクターたち

キャラクターの魅力については、おそらく、ネタバレのありなしに関わらず、多くのレビューで言われていることだろう。
私も当然、今作のキャラクターたちに魅了されまくったのだが、彼らはほとんどが「謎だらけ」なのだ。
今作は一貫して主人公であるクロエ視点で話が進み、情景を説明したりする所謂「ト書き」は存在しない。表示される字幕はすべてセリフであり、アドベンチャーゲームにもかかわらず「字幕オフ」のオプションがあるほどだ。
また、声優陣の演技も秀逸で、主人公クロエは鬼滅の刃で禰豆子を演じた鬼頭明里さん。鬼滅の刃では「むーむー」だけで感情を表現するという神業を見せた彼女は、なかなか感情を表に出さないクロエという人物を見事に表現しきっている。

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声優陣がそれぞれのキャラクターを魅力的に表現しているにも関わらず、彼らがどういう人間で、どういう過去を持っているのか、などがなかなか明かされない。
ストーリーを進めていき、それらを徐々に明らかにしていくことこそが、このゲームの大きな目的であり、物語の核になっていくのだが、登場人物たちは皆人間味にあふれていて魅力的だ。それはVRを通して見るとなおさら身近に感じる。
しかし、自身の分身となる主人公クロエは「人間味」という言葉が当てはまらず、「一番の謎が自分自身」という状態で物語はスタートする。
彼女はいったい何者なのか・・・彼女の存在意義とは・・・徐々に解き明かされ変化していく自分自身と向き合っていくストーリーを、是非体験してほしい。

ちなみに、私の一番のお気に入りキャラクターはジュリィ博士

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全身を義体化させて200年以上もの間研究を続けているマッドサイエンティストでもある彼女。
その姿、口調、振る舞い、全てが強烈すぎる個性を放っているが、彼女の謎もまた深く、ストーリー内で明かされた彼女の過去は、私の心を大きく揺さぶった。

絶妙な前作との関係性

今作を始める前に、前作「東京クロノス」をプレイしていた方がいいのか?
というよくある質問に対して、一般的な回答は「ストーリーは今作内で完結しているため問題ない」であり、それは間違っているわけではない。
しかし、私は「絶対前作をやっておいたほうがいい」と断言する。
前作経験者なら思わずにやりとする演出はもちろん、前作をやっているかどうかで印象が大きく変わってくる場面も中には存在する。
多くを語るとネタバレになってしまうが、今作の前に、ぜひ東京クロノスをプレイしておくことをおすすめする。
東京クロノスも紛れもない名作であり、後悔することはないはずだ。

真の「マルチエンディング」

アドベンチャーゲームではもはや当たり前になっているマルチエンディング。今作も当然マルチエンディングである。
しかし、今作においてすべてのエンディングはエンディングであってエンディングではない
この考えには個人差があるかもしれないが、「トゥルーエンディング」ですら、本当にエンディングなのか?と聞かれると返答に困ってしまう。
それこそ、前述のリブラシステムが目の前に表示されてしまい、選択に頭を悩ませてしまう。
しかし、それは紛れもないトゥルーエンディングであり、ハッピーエンドなのだ。
あくまで私の主観だが、今作はただのバッドエンディングをかいくぐり、トゥルーエンディングに辿り着くというめでたしめでたしアドベンチャーゲームの枠を超えている、と感じた。
あなたにとってのエンディングは何か。それはぜひ、数あるエンディングを全て迎えて考えてほしい。

本当の「VR元年」を象徴する名作

今作は、VRゲームでありながら「ファミ通・電撃ゲームアワード2020」にて、アドベンチャー部門を受賞した。
「VR部門」ではなく、すべてのゲームと肩を並べ、「VR」をジャンルではなく「表現手法」として昇華させ、ゲームとして天下を取ったのだ。
これまでも「VR元年」というキーワードは度々登場してきたが、VRは一部の人達にしか浸透せずにいた。
しかし、アルトデウス:BCは国内最大級のゲームアワードで見事にその存在感を示し、本当の「VR元年」が来たことを感じさせてくれる。
このレビューが、少しでも今作の、そしてVRの普及に貢献できれば幸いだ。

今作に限らず、日本人同士のVR交流コミュニティとしてDiscordサーバーを立ち上げました。
お気軽にご参加いただき、VR情報共有、雑談からマルチプレイ募集まで、どんどん活用してください。
VRデバイスの所持/未所持は問いません。迷っている方もぜひ!
https://discord.gg/PW6JD78UHA

ALTDEUS: Beyond Chronos
https://altdeus.com/

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