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WoW人物紹介 "Jaina Proudmoore" (ジェイナ・プラウドムーア) (1)

前回のシルヴァナス様の記事が思った以上の反響で、「な?Warcraftのストーリー面白いだろ?」って思っているEverです。
WoW勢向けに書いた記事だったけど、Hearthstone勢が超食いついてきてたのには驚き。ただまあ、Hearthstoneの登場人物紹介って、フレーバーテキストに(少し冗談めいた感じに)ちょこっと書いてあるだけでほぼ分からないので、こういう記事が重宝されるんだろうなってのも納得。

ということで今回は、WoWでも超重要人物であり、Hearthstoneのメイジとしても知られるJaina Proudmoore(ジェイナ・プラウドムーア)さんについて紹介していこうと思う。

今回も、人名等初出以外はカタカナ表記をしていくつもりだが、Hearthstoneとの表記ズレ等あったら指摘をお願いしたい。

ジェイナさんといえば、白い髪に一部が金髪で、氷の魔法の使い手で…と、まさに某ディズニー映画の姉妹を足したような容姿をしているが、実はこうなったのにはワケがある。彼女の容姿も、性格も、全てを変えてしまった出来事についても、もちろん解説する。

彼女はこれまでの全ての拡張で中核を担う存在であり、その分語るべき内容も膨大で、やむなく前後編に分けることにした。ご了承いただきたい。

1. Dalaranでの魔術修行

Kul'Tiras(クル・ティラス、Easten Kingdomの西に位置する島。拡張「Battle for Azeroth」の舞台となる)の提督の娘として生まれた彼女は、生まれ持った魔法の才能を見いだされ、彼女が11歳の頃、Dalaran(ダララン、Kirin Tor(キリン・トア)が治める魔法都市)へと送られる。
大魔術師Antonidas(アントニダス)の元で修行を積んだ彼女は正式にダラランの魔術師として認められるほどの魔力を手に入れる。

この時、彼女は2人の男から求愛を受ける。その2人とは、ローデロンの王子Arthas(アーサス)と、キリン・トアのメンバーだったハイエルフのKael'thas Sunstrider(ケルサス・サンストライダー)。

結果的にケルサスは年の差(ハイエルフは長命なので数百歳だった)から不本意ながらも身を引く形となり、ジェイナとアーサスは恋仲になる。

ちなみに年の差なんて言い始めたらジェイナはもっととんでもない年の差の恋をするのだが…それはまた別の話。
また、拡張「The Burning Crusade」でケルサスは色々あってRaidボスとして登場し、その難易度でプレイヤーたちを苦しめた。結果的に倒された彼は、最新拡張「Shadowlands」にて、死後の世界に再登場することが確定している。個人的に好きな人なので楽しみである。

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しかし、アーサスはローデロンの王としての職務を優先するため、そして彼女に対して魔道士の修行を優先すべきだとして、関係を終わらせる。

最初はこれに反対した彼女だったが、最終的にはこれを受け入れ、それまでよりも魔術の修行に没頭することになり、彼女はアゼロス最強の魔術師の一人としてさらに成長していくことになる。

2. 死の町 Stratholme

アーサスとの別れから数年が経過したころ、彼女は師匠アントニダスとMedivh(メディヴ、アゼロスの守護者という偉い人)が話しているのを耳にする。
彼の予言の内容は、ローデロンは危険なので、民を率いてKalimdor(カリムドール、Easten Kingdom(主に人間が治めている)と対をなす大陸)へと逃げよというものだった。
しかしアントニダスはその予言をすぐには聞き入れず、ジェイナにStratholme(ストラスオルム、ローデロンの北にある街)で起きている疫病の調査を命じる。

調査にはローデロンの王子であるアーサスも同行するが、そこで彼女らが目にしたのは徐々にアンデッド化していく人々の姿だった。疫病の原因はAndorhal(アンドラル、ローデロン最大の穀物地帯)産の食物。ローデロンの食卓になくてはならない存在は、Lich King率いるスコージの呪いに侵され、人々を蝕んでいくのだった。

危機を感じたジェイナは、アーサスの師であるUther(ウーサー)を呼びにダラランへ戻るが、残されたアーサスはその惨状を目の当たりにし、もはやこの街が助かる見込みはないと感じ始めていた。

ジェイナとウーサーがアーサスに合流するころには、Kel'thuzad(ケルスザード、元ダラランの魔術師でアントニダスの友人、ジェイナの大先輩に当たるが、闇魔術に没頭するあまりLich Kingに堕落させられ死の魔術師となった)によってストラスオルムは死の街へと化していた。
絶望したアーサスはある提案を2人に投げかける。

「この街の人間全てを殺し、疫病を食い止めるべきだ」

アンデッド化しつつあるとは言え、まだ人間が多数残っている。2人はこの提案を拒絶し、アーサスを激しく非難する。
しかしアーサスはそれを聞き入れず、師であるウーサーに対し、命令に背くのであればパラディンとしての任を解くと言い放つ。彼の決意が硬いことを知った2人は、彼をひとり残し、ストラスオルムを後にするのだった。

アーサスはこの事件をきっかけに、Lich King(リッチキング)へと堕ちていくのだが、その話はリッチキングの人物紹介で詳しく語るとする。
また、この事件を追体験できるインスタンスダンジョンがゲーム内に存在しているので、気になる方は行ってみるといいだろう。WoW内でも重要な出来事の一つなので、ぜひ。

3. Thrallとの出会い

メディヴの予言は正しかった。アーサス率いるスコージ軍団がダラランに攻め入ってきたのだ。アントニダスは彼女に民を率いてカリムドールへと逃げよと命じる。

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民を率いてカリムドールへ向かうジェイナの姿が、WoWのトレカに描かれているが、この時は全て金髪。表情は不安げではあるものの、現在の表情とは違い、穏やかで、優しそうな顔をしているのが分かる。

死の国となりつつあるローデロンから、生存者たちを率いてカリムドールへ着いた彼女は、Grommash Hellscream(グロマッシュ・ヘルスクリーム、Warsongというオーク族の長)と交戦する。

Stonetalon(ストーンタロン)山頂からただならぬ力を感じた彼女はその力をオーク族との戦いに使おうと調査に向かう。

そこで彼女はそこでThrall(スロール、Frostwolf族の長。HordeのWarchief)と出会う。そこにメディヴが現れ、お互いに協力せよと説く。

オークは「血の呪い」によって堕落させられており、凶暴化しているのはそのせいだということ、またスロールのフロストウルフ族はその原因となったMannoroth(マノロス)の血を飲まなかったため、平常心を保っていることを知った彼女はスロールと協力し、ジェイナの魔力によって正気を取り戻したグロマッシュと共にマノロスを討ち取り、オーク族は血の呪いから解放される。

4. Mount Hyjalの戦い

ジェイナとスロールは意気投合し、行動を共にするが、そこにメディヴが現れ、Mount Hyjal(ハイジャル山、Night Elfの故郷であり、世界樹Nordrassil(ノルドラシル)がある)のWell of Eternity(永遠の泉)の魔力を、Burning Legion(バーニングリージョン、度々アゼロスに攻めてくる悪魔軍団)のArchimonde(アーキモンド)が狙っており、アゼロスを守るために戦わなければならないと告げる。

同じくメディヴに説得されたMalfurion Stormrage(マルフュリオン・ストームレイジ、ナイトエルフの長)とその妻、Tyrande Whisperwind(ティランダ・ウィスパーウィンド)と共に、ハイジャルにて陣を構え、アゼロスを守る戦いを繰り広げる。

強大な力を持つバーニングリージョンに対抗するアゼロス連合軍の作戦は、ジェイナたちが時間を稼いでいる間に、マルフュリオンが世界樹ノルドラシルに霊力を集結させ、一気に放つというもの。まさにWoW版元気玉。

連合軍は善戦を続けるが大将アーキモンドの凄まじいパワーに圧倒される。
次々と連合軍の前線基地を破壊していくアーキモンドは、世界樹にパワーが集まりつつあるのに気付き、それをへし折ろうと世界樹へと登り始める。

もうダメか、と思ったその時、マルフュリオンはCenarius(セナリウス、ドルイドの半神)の角笛を吹く。

それを合図に、アゼロスの精霊たちの力が一斉に放たれ、その霊力の前にアーキモンドすらもひとたまりもなく、一瞬にして爆散し倒れる。

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連合軍の必死の抵抗、そして世界樹と多数の精霊たちの犠牲により、アゼロスは最大の危機を脱したのだった。

この戦いは拡張「The Burning Crusade」で25人用Raidとして追体験できる。
レベルキャップが上がった現在では、ソロでも余裕でクリアできるコンテンツなので、興味がある人はぜひ。

アーキモンドの最期の演出。精霊の力が集結していくのが分かる。

ここでひとつこぼれ話を。
この戦いを通して、ジェイナとスロールは親密な関係となり、一部のファンは彼女たちのロマンスを期待したらしい。結果的に彼女たちが恋仲になることはなかった…のだが、 とある小さなクエストでWhite Punch Cardというアイテムが敵からドロップする。このアイテムは開くと読むことができ、

01010100 01101000 01110010 01100001 01101100 01101100 00100000 01100001 01101110 01100100 00100000 01001010 01100001 01101001 01101110 01100001 00100000 01110011 01101001 01110100 01110100 01101001 01101110 01100111 00100000 01101001 01101110 00100000 01100001 00100000 01110100 01110010 01100101 01100101 00101100 00100000 01001011 00101101 01001001 00101101 01010011 00101101 01010011 00101101 01001001 00101101 01001110 00101101 01000111

という文字が並んでいる。一見ただの数字の羅列だが、実はこれは暗号となっており、バイナリデータとしてデコードすると、

"Thrall and Jaina sitting in a tree, K-I-S-S-I-N-G"
(スロールとジェイナが樹の下に座って、キスしてる!"

と読むことができる。これはただのジョークだったようだが、ファンの間では本気にするものもいて、彼女たちの関係について論争が起きたとか、起きていないとか。

5. Theramoreの設立、祖国との決別

ハイジャル山の戦いの後、ジェイナはスロールたちオーク族と同盟を結び結束、人間がオーク族を襲わないことを約束する。
また彼女は民を率いてカリムドールの東にTheramore(セラモア)という都市国家を設立し、リーダーとして治める。

しかし、程なくしてRexxar(レクサー、オーク族のハンター)より、Daelin Proudmoore(ダエリン・プラウドムーア、ジェイナの父であり、クル・ティラスの大提督)率いる艦隊がオーク族に対して攻撃を仕掛けてきたことを聞かされる。

ジェイナは父であるダエリンに、オーク族は悪ではない、共に協力すべきだと説くがその願いが聞き入れられることはなく、戦闘は激しさを増す。

スロールもジェイナの心情を察し戸惑ったが、やむを得ず交戦。ジェイナは迷ったが、父に協力せず撤退する決断をする。劣勢に立たされたクル・ティラスはダエリンの死という大きな損害を出し、撤退する。

ジェイナはスロールに、せめて撤退していく軍だけは見逃してほしいと頼み、スロールはこれを受け入れる。

クル・ティラスはアライアンス同盟に対し、オーク族への復讐に協力してくれと願うが、スコージとの戦いが激化していたためそれが聞き入れられることはなく、クル・ティラスはアライアンスを脱退する。

この事件により、ジェイナは「裏切り者」として祖国と絶縁状態になる。
祖国クル・ティラスでは、このことを歌にまでして、彼女を決して許さないと胸に刻んだのだった。民謡としても知られる歌詞には、こう記されている。

"Daughter of the Sea"  日本語訳:Hifaさん

"Beware, beware the Daughter of the Sea."

(用心せよ 海の娘に気を許すな) 
"Beware," I heard him cry.
(「用心せよ」と男の叫ぶ声がする)
His words carried upon the ocean breeze,
(海風に乗って渡るその声は)
As he sank beneath the tide.
(男が波間に 沈みゆくときの言葉)

Those blood-soaked shores of Kalimdor,
(血に染まるカリムドールの浜)
Where sailors fought and died.
(水兵が戦い 死んでいった)
The Admiral fell at Theramore,
(セラモアで提督は斃れた)
because she left his side.
(それは 離れていった娘のせい)

Why this? Why this, oh Daughter of the Sea?
(何故なのだ 海の娘よ)
Why this? Did you forget your seaside days?
(何故なのだ 海辺での日々を忘れたか?)
Always the pride of our nation's eyes,
(常に国の誉であった子なのに)
How could she go astray?
(道をそれてしまうとは)

When she did flee across the ocean deep,
(海原を超えて 娘が逃げ出したとき)
The Admiral followed west.
(その後を追って提督は西へ)
What else but sail to save a daughter's life,
(何をおいても娘の命を救うため)
And pray she still drew breath?
(息がまだあることをただ祈って)

But there he found upon those distant shores,
(そして遠く陸に提督が見たのは)
Enemies 'pon the rise!
(迫り来る敵の群れ)
But when he faced those savage foes
(そして野蛮な敵と いざ対峙した時)
His daughter stood aside.
(提督の娘は身を引いたのだ)

And buried deep beneath the waves,
(こうして提督は 深い海に葬られた)
Betrayed by family.
(家族の裏切りで)
To his nation, with his last breath, cried,
(故国に残した最後の言葉 その叫び)
"Beware the Daughter of the Sea."
(海の娘に用心せよ)

本来の歌詞はここまで。徹底して彼女を悪者に描いているのが分かるだろう。だが、ジェイナは拡張「Battle for Azeroth」で登場するムービー、"Warbringers : Jaina" にて、この後に一節加えて歌っている。

“I’m listening now… father.”
(聞いていますよ 今は… お父様…)
I heard, I heard, across a moonlit sea,
(聞こえた 月を水面に映す海を越え)
The old voice warning me,
(私に警告する  覚えのある声)
“Beware, beware the Daughter of the Sea,”
(用心せよ 海の娘に気を許すな)
“Beware, beware…
(気を許してはならぬ…)
… of me.”
(…私に。)

この歌詞が意味するものとは。そして彼女の心境とは…
それについては、また後ほど語ることにしよう。

Wabringers : Jainaについては、WoW日本人プレイヤー界隈では語り部として知られ、なんとゲーム内にNPCとしても登場してしまっているHifaさんが日本語字幕つき動画をアップしてくれているので、そちらも必見。

長くなったので前編はここまで。後編ではいよいよ、彼女の容姿と性格を大きく変えてしまう大事件が勃発する。

Hearthstoneのジェイナのカードのフレーバーテキストには、こう記されている。

The Kirin Tor’s leader is a powerful sorceress. She used to be a lot nicer before the Theramore thing.
(キリン・トアの指導者で強力な魔術師だ。人当たりもよかったんだ、あのセラモアの件が起こる前までは。)

乞うご期待。

※冒頭でこの件についてもちろん解説するとか言っておきながら引っ張ってごめんなさい!

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