見出し画像

【ネタバレなし】なぜInscryptionは「やばい」のか

「Inscryptionはやばい」

ここのところ、Twitterでこう呟く人が続出してきており、私もその中の一人だ。

この「やばい」という日本語は昨今の日本語崩壊の立役者であり、いい意味にも悪い意味にも使われるいわば至極自己中心的で身勝手な感想である。

しかしながら、この「Inscryptionはやばい」という感想は、現状「Inscryptionは神ゲー」だとか「Inscryptionめっちゃおもろい!」といった小並感溢れる感想よりもよっぽど的を射ており、極めて正しい反応である。
そして、現時点(2021/10/29現在)でこのゲームに対して正しい評価をすることはエンドロールまで終わった人間からしても不可能であると断言しておく。

まず、Inscryptionが何かを知らない人に向けて軽く説明しておく。

Inscryptionとは、2021年10月20日発売の、Daniel Mullin氏が作成したSteamのゲームである。
対応プラットフォームはPCのみ。

2021年10月29日朝時点でユーザーレビューは11,049件中95%が好評の「圧倒的に好評」。
発売から10日足らずでこのレビュー件数、評価数は異常ともいえる。

ゲームジャンルはユーザーが定義したタグから
「カードバトル」「ホラー」「デッキ構築」
となっており、このタグ自体は間違っていない。ゲーム自体は一貫して「カードゲーム」として進行していき、この根底は最後まで大きく崩れることはない。

このゲームにはデモ版が存在し、ゲームの冒頭を遊ぶことができるのだが、そのデモ版で遊べる範囲は多少奇妙で不気味な雰囲気は味わえるものの、内容自体はそこまで目新しいものはなく、カードゲームとローグライクを組み合わせた(筆者は未プレイであるが) "Slay the Spire"に独自のエッセンスを加えた程度。
ホラー要素も控えめで、ホラーが苦手な私でも問題なくプレイが可能だ。
(ただし精神的な恐怖を感じる要素は、人によってはかなりある。)

カードゲームが好きな人にとっては、このデモ部分だけでも十分に面白いらしく、一定の評価があるのだが、このゲームのキモはこのデモでは微塵も感じることができない。

なぜなら、このゲームがDaniel Mullin氏作成のゲームだからである。

この作者、一部界隈では「メタの権化」として有名で、過去作であるPony Islandは私もプレイ済み、その奇才っぷりは十分に理解していた。

Pony Islandについては、ネタバレなしレビューを書いているので気になる方はこちらを参照いただきたい。
https://note.com/you1293/n/nb7f8b388fb5f

このInscryptionも例に漏れず、ただのカードゲームで終わるはずがない。
そう念頭に置いた状態でのプレイだったので、多少の「期待を裏切らない裏切り」は覚悟していたし、それを楽しみにプレイした。

私はカードゲームがそれほど好きではないし、得意でもない。そんな自分からの今作の「カードゲーム」としての評価はそれほど高くない。つまらなくもないが、めちゃくちゃ面白い!かと聞かれると、答えはNoと言わざるを得ない。

しかし、前述のとおり、このゲームの作者はDaniel Mullin氏であり、当然のごとくめちゃくちゃな展開を突き付けてくる。

彼の過去作をプレイした人たちにとっても今作は満足のいくDaniel Mullin産ゲームであり、ましてや彼のゲームが初体験の人にとってはいかに彼がぶっ飛んだ人なのか身をもって知ることになると思う。

ただ、ここまでであれば、感想としては「Inscryptionめちゃくちゃ面白かった」「Inscryption神ゲーだった」という評価が正しいし、自分もそういう評価を付ける。

しかし、私が上記の感想を正しい評価ではないと言い切るのには訳がある。
ただ、こう言い切るためには一定の条件をクリアしている必要がある。
その条件とは、

1. このゲームをエンドロールまで見ている

2. このゲームの考察および自分が回収しきれなかった伏線、謎をネットも駆使して調べる

3. 「今現在」上記2つの条件を満たしている

であり、エンドロールまで見終わって「あーおもしろかった、別ゲーやろっと」とこのゲームから離れていく人たちには到達しえない領域である。

ネタバレなしで説明するのは非常に難しいのだが、強いて例えるとすれば、

「Undertaleを1周目だけクリアして神ゲーだったと評価する」

ようなもの。ただ、Undertaleのようにあからさまに2周目をプレイするよう促されるわけでもなく、自分の手でその先にあるものに触れようとした者にだけ訪れる、Inscryptionのとてつもなく「やばい」部分が巨大な塊となり降り注いでくるのだ。

もう、Daniel Mullin氏頭おかしい。なんてことをしでかしてくれてるんだこのオッサンは。

もうここから先は完全に評価が分かれるところであり、「なんだよそれ、クソゲーじゃん」と言い放つ者もいるだろうし、「うおおおおおおまじかよおおおおなんだそれええええええ」となる者もいて真っ二つに評価が分かれるところではあると思う。私自身は後者であるが、それでも「このゲームを完全に評価することはまだできない」のである。

この感情はこの領域まで、「今現在」到達した人だけが感じることができると私は断言する。そして、この感情を100%感じることができるのは今だけだ。とりあえずポチってから積みゲーを消化してからやろうなんて考えているのであれば、いったんその積みゲーを積みなおし、今作から終わらせることをオススメしておく。

ここまでこの記事を読んで気になった人はネタバレを見ずにプレイしてほしいし、私たちがいるこの領域まで是非たどり着いてほしい。

ただし、決してこのゲームを万人にオススメはしないし、「めちゃくちゃ面白いからやってみてよ」なんて口が裂けても言えない。

私がただ一つ言えるのは、

「Inscryptionはやばい」ということだけだ。


前述の条件を満たして正に今「Inscryptionはやばい」となっている人たち向けにエンドロール後の情報共有Discordサーバーを立ち上げました。
ご興味のある方はご参加ください。
当然のことながらネタバレしかないので、ご注意を。
https://discord.gg/mEfUNhbv4a


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?