克己if

基本的に俺は刃牙が好きだ。ただ「こうだったら……」って妄想がある。素直に言うと少し不満にある部分があるのでその妄想を垂れ流したい。絵は描けぬので文字にて失礼ッッ!!


ピクルvs克己

(当てない当身は本当は何か違うんじゃあないんかな……)
 ピクルに打ち込む技の数々は無惨にもその身体の髄まで届く気配が無かった。
(俺の編み出した真のマッハ拳はピクルに届くかもしれないが、なんか違うんじゃあないんかな……)
 道場の窓が全てマッハを超えた拳から発された衝撃で割れた。だが、それは拳が割ったのでなく拳からの衝撃が割ったものだ。
(真に打ち込む。打ち込むからこそ「当身」。俺のアレは……空気を当身しただけなんじゃあないんかな……)
 迫り来るピクルに克己は構えを解く。
「……何か違う。きっと、正拳はこうじゃあない」
 観客席でそれを観ていた愚地独歩は息を呑む。
「なっ……! 構えねえのか! 克己ッッ……!」
 マッハ拳は拳がマッハに達してはいるが、拳が打ち込むべきものに達していない。
「届かない当身が、当てない当身が当身だと……?」
 ピクルが克己に衝突する刹那、ピクルは宙へと跳躍していた。一筋の矢のように集約された太古からの力。
 対するは新たな空手、中国拳法から続く未来への「一年目」。
 ––父よ、貴方に感謝します。
 克己は拳を握り直す。それは産まれたばかりの赤子のような握り方。
 ––貴方が、あの時に達人と対した時に見せてくれた「真の正拳」でッッ!!
 まるで目の前で艦砲射撃があったかのようだった。あまりの衝撃に観ていた者たちは眼を瞑る。ある者の鼓膜は破れ、瞑らないように堪えた者の眼球は痛みから涙を流した。
 唯一、その全てを見切れたのは父・愚地独歩だった。
「……押忍」
 圧倒的な質量と圧倒的な速さのぶつかり合いだった。
 克己の身体を食いちぎろうと飛びかかったピクルは目にも止まらぬ速さで放たれた正拳突きに衝突した。
 克己が放つ菩薩の拳。
 道場で試しに打った際にぼんやりとあった「本気で打ち込めば腕が持たない」という予感。その予感は子の天才としての才覚と生涯を空手に捧げた父の業により塗り替えられた。
 拳はピクルの額、頭部で最も硬い箇所に打ち込まれたにも関わらず、ピクルを負かした。
「ただのやたらと速い正拳突きで額なんざに打たれてもピクルにはなんともないだろうな」
 独歩は身体の底から鳥肌が立つ感覚を味わいながら続ける。
「けどよ。あの天才が編み出した技と俺が見出した拳が合わされば……」
「空手の追い求める一撃必殺が生まれるんだよ……‼︎」
 歓声の中で克己は右手を挙げた。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?