ターミネーター2が最高なんだって話
僕は僕自身が子供の頃に恵まれなかったこともあり、「子供」が主役に「ならざるを得ない」話に対してかなり敏感だ。
「A.I」を初めて見た時はラストシーンを見てからその日はずっと泣いていた。奇跡が起きて、本当にそれ以外はどうでもいいほど望んだ奇跡が起きてくれて。旅をした子供が母親と共に眠りにつく。これほど美しい物語があるのだろうか? と考え込んでしまった。泣きながら。
理屈抜きで僕は親というものが大切なものだと思う。それは衣食住とか金とかでなく愛情としてだ。僕は子供の頃に貧乏だった。父親は大金を稼いでくるが子供の生活費や小遣いがどれくらい必要か全く分からなかった。だから、成長期なのに日に500円で食費や娯楽代を捻出しなければいけなかった。意外とこれはパンの耳とかすき家の牛丼でなんとかなった。まあ、背は伸びなかったが。
僕の信念、意外と金とか食事とかは慣れちゃうのでなんとでもなっちゃうのだ。
けれども、愛情はそうでもない。死んだ家族のことで枕を濡らすし、その悲しみを理解して欲しいという気持ちは強い。やっぱりカウンセラーには根本的には通じないのだ。
僕はカウンセラーに過去に共感を。
カウンセラーは僕に明るい未来を。
あとは、まあ。僕はシャイだったから。
というのが前提で。そんな子供にとっての福音がターミネーター2だって話。
ターミネーター初代は言っちゃえば世界を救う為に未来から男がセックスしにくる話だ。セックスして、子供ができておしまい。子供が主役でない。救世主の母が主人公の話だ。これはガキには理解しがたい話だ。
じゃあ、2はどうかってと。そんなのにうんざりした子供こと未来の救世主のジョン・コナーが、周りには頭がおかしいってバカにされた母親のことに踏ん切りつかないくせからヤンキーになっちゃってるわけだ。
そこに悪いターミネーターがやってきてジョンを殺そうとしたり、シュワちゃんターミネーターがそれから守ろうとするわけだ。
ジョンには父親がいない。未来からやってきてだすものをだすためにイッてからはターミネーター相手に果敢に戦い逝ってしまった。かわいそうだね。
母のサラにとってはジョンに父がいないことはものすごく引っかかることだったのだろう。だからこそ、いろんな男をジョンの父親にしたくて足掻くのだが誰もジョンの父親にはなれない。
サラはジョンを未来の戦士にしたい。それは世界には受け入れられることのない価値観であり、言っちゃなんだが世界から外れた女には同じく外れた男が番おうとする。だから、ジョンにはまともな父親はできなかった。サラが求めたものだけでなく、ジョンのコンプレックスにとっても。
ジョンは言うなれば、世界から外れた子供だ。母はまだ崩壊していない世界の未来を見据えている。世界の未来のために過去に飛んできた男が父親だ。ジョンにとって父親として受け入れられるのは母の見据えている世界を分かっている存在だった。そして、そんな母と自分を守ってくれる存在だ。
そんな中で現れたマッチョイズムの権化の容姿をしたターミネーター、シュワちゃん。旧型(未来から来たのにね)ながらも新型と命懸けで戦うその姿。そんなに強いのに自分の言うことをなんでも聞いてくれる存在。少年にとっては、まあ武闘派ドラえもんだろう。
自分にとって都合の良い。この上なく都合の良い暴力装置が来たのだ。
だが、ジョンはターミネーターに人殺しをさせない。それは倫理観からか親に教わったからか。痛めつけてもいいが殺してはいけない。ターミネーターは、人を殺してこそターミネーターなのに人を殺さなくなる。
それが荒んだジョンの心の鏡にもなったのだろう。母を異常者として引き離した社会を許さない一方で人は殺そうとしない。
とても力のいる行為だ。
けれどもターミネーターは叶えてくれる。
自分と母の再会を。
強大な敵から自分を守ることを。
どんな窮地だろうと人を殺さないことを。
有名なラストだ。
ターミネーターが親指を立てながら溶鉱炉に沈む。
僕は何度見てもこのシーンで泣いてしまう。
うろ覚えでセリフは違うだろうが。
T1000を溶鉱炉に沈めてもう安心だというところで「チップはもう一つある」と告げるシュワちゃん。もっとシュワちゃんと一緒にいたくて叫ぶジョン。
「嫌だ! 僕が命令する! 一緒にいろ!」
これが子供にとっての最大の命令であり、子供にとっての全てだろう。
「人がなぜ涙を流すかわかった。……俺には涙を流せないが」
これは秀逸なセリフだと思う。この上なく。
ターミネーターは人殺しの機械だから涙などいらない。だけど、シュワちゃんはわかってくれた。ジョンが理屈無く一緒にいたいことを。自身を家族として愛してくれていることを。一方でシュワちゃんはジョンの健やかな未来を望んでいるのだ。戦士としてでなくただの1人の人間としてだ。だからこそ、自身を抹消してでも審判の日を避けようとする。
そんなものはプログラミングされたからだとでも言われるだろうが。
そんなものへの反証としてシュワちゃんは親指を立てて溶鉱炉に沈んだわけだし、サラは「ターミネーターにだって分かったんだから」と戦争の悲惨さを嘆くのだ。
途中でサラはダイソンに「男は滅ぼすばっかで生み出すのは女にしかできない!」とブチギレていることを踏まえるとこの上なく泣ける。
僕はどんな人間にも勧められる作品としてこのターミネーター2を絶対に挙げる。
子供には、全てと戦ってくれる存在でありながら最も大切な存在を教えてくれた相棒モノの作品として。
父親には、男としてあるべき強さの象徴として。
母親には、子供の未来を望む親の愛として。
子供が求めるワクワクドキドキ、親が子へ求める喜び。そして、示したい幸せな未来。
ターミネーター2はこの上ないエンタメ作品だ。傷ついた子供を励まして、勇気づけてくれる俺のバイブルだ。