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Mission:AIを小説に活用せよ

 近年のAIの進化には目を見張るものがある。例えば、この絵はAIが作ったものだ。最近のAIは注文者の要望に従い、見事な絵画を作り出す。

▲AI「Midjourny」に描かせた絵

 怖いところは、一定の範囲内であればこのようなAIが無料で活用できてしまうところだ。絵描きAIに限った話であれば、出力された絵の著作権を放棄しているAIも珍しくない。つまりこれを使えば、例えばパンフレットの作成に必要なイラスト代を節約できてしまうことになる。僕は知り合いにたまたまイラストレーターが多いのだが、彼らはAIの進化を日々敏感に調べている。AIの存在はそれそのものが、自分の食い扶持に対する脅威だからである(むろん、有効に活用できればさらに稼げる可能性を秘めていることは言うまでもない。彼らの一部は爪を研ぐ肉食獣の如く、AIを勉強している)。
 
 さて、そんな中私は「大変だなァ」などと思いながら傍観を決め込んでいた。文章の世界にAIが来るのは当分先だと思っていたからである。正確には来ているのだが、「太宰治風の文章を出力するAI」だとか「夏目漱石っぽい文章を書くAI」といったものがほとんどで、これらが自分の脅威足りえるとは思えないと考えていたからである(理由はいろいろあるが、今回は省略させていただく)。

 しかし、ここ最近考えを改めることとなった。小説の制作においてAIの活用はこれから先、必須級になるかもしれないと思っているのである。今回はそれを、実際にAIを活用しながら書いていこうと思う。

 数か月前に「ChatGPT」というAIが評判になった。様々な質問や要望を送ることで、アルゴリズムを使用してまるで人間のような返答をテキスト上で返してくれるというものである。その使用方法は遊びから実用までさまざまである。例えば、「四宮式がマクドナルドを喰らう様子を太宰治風に描写して」と送れば、それっぽい文章が出力される。また「JavaScriptでHTTPリクエストを作成するにはどうすればよいか」という質問を送れば、AIはその方法を具体的に提示してくれる。

▲勝手に他人を病ませるのは勘弁願いたい

 もし君たちがビジネスメールを書くのを苦手としているのであれば、「以下の文章をビジネスメールに変換して」とお願いして、その後に友人に送るように内容を打ち込めばよい。試してみると、見事な文章が完成した。多少の違和感は実際に送る際に編集してしまえば問題ないから、現時点において、既に仕事にも役立つ有用なツールであることが分かる。

▲とても便利(小並感)

 このように多種多様な会話や注文が可能なAIである。これだけでもかなりの無茶が通ることがわかるだろう。これを今から、小説の素材にする。

 その具体的な方法に入る前に、前提を共有したい。(個人差があるだろうが)小説を書き始めるにあたってまず初めに問題となることは、「小説のテーマ/元ネタ/参考等/世界観」を個人がどれほど理解しているかというものだ。
 
 ラーメンの小説を書く者が豚骨ラーメンと醤油ラーメンの違いを理解できないようでは話にならない。異世界転生モノのライトノベルを書く者がスライムとゴブリンを説明できないようでは、とても小説を作り始めることなどできないだろう。つまり、何を書くにせよ小説を書くためには知識が必要ということだ。

 そこで、AIを活用する。今、私はマッチングアプリを活用する男の話を小説にしたいと思っている。主人公はマッチングアプリを駆使して、たくさんの女と出会おうとする。それに四苦八苦する描写を長々と小説に書きたいのだが、残念ながら私はマッチングアプリを真面目に活用したことがないので分からない。そこで試しに「マッチングアプリでモテる方法をタスクにして教えて」とChatGPTに入れて出力させてみる。するとこのような結果が得られた。

▲「タスクにして」と書き加えることによってリスト化してくれる
▲下手に人間に聞くより参考になるかもしれない

 ここまで具体的に書いてくれると、主人公の男が実際にこれらを試す描写が次々と浮かんでくる。「マッチングアプリでモテる方法を試す男の描写」という抽象レベルの高いタスクが、「マッチングアプリで具体的に○○という方法を試す男の描写」まで落とし込まれる。私はAIから、言葉を授けられるのである。
 
 これは実に有効である。私たちは普通、物事の理解を行うのにそれにまつわる本を買ったり、ネットで検索したりして模索を行う。そして次第に理解を深めていく。しかし、それらは紙やインターネットの束の中に埋もれてしまっており、それらを随時調べるのは手間である。
 AIはこの過程を途中までぶっ飛ばしてくれる。「マッチングアプリ モテる 方法」と頭の悪い検索をするより、とりあえずAIで具体的な方法を聞いておいてから、「マッチングアプリ 自己紹介文 書き方」と検索するほうが精度の高い結果を得られることは言うまでもない。

 この、「一歩先の言葉を提供する」点において、ChatGPTは優れている。ChatGPTは私たちに、抽象的で理解の浅い事柄を具体的にし、リアルに描写するための言葉を与えてくれるのである。

▲抽象的な言葉を具体化するためのChatGPTの活用例

 だから私たちは今後、何かを描写する際に理解が浅くてそれが出来なさそうな場合、とりあえずChatGPTに打ち込めば、具体的に描写できるようになってしまう。これで分からなければ、ChatGPTから出てきた言葉を具体的に検索なりなんなりして、理解を深めればよいのだ。

▲AIに聞く前の脳内イメージ。具体性に欠け、描写が想像しにくい
▲AIに聞いた後の脳内イメージ。具体化され、想像がつきやすい。
新たに言葉が与えられているため検索アルゴリズムとも相性が良い

 ここまで書いてきて、読者の一部は疑問に思うかもしれない。「本当にChatGPTが提示する答えは正しいのだろうか?」という疑問である。

 この疑問はしばしば、正解となる。ChatGPT自体が発展途上のAIで、しばしば頓珍漢な答えを出すことを開発者側が認めている。例えばプロ野球チームの楽天イーグルスについてChatGPTで出力すると以下のような答えとなった。当然嘘八百である。

▲最初以外、絶妙にすべてが間違った答え

 アテにならない答えが出力されるリスクがある以上、疑問持つための知識が使用者側に最低限必要である。だがこれに関しては実際に出力された言葉を後から調べればよいだけの話であるし、精度については日々向上されていくであろう。
 

 私たち創作屋は、彼らから言葉を貰うことができる。私たちは今までほど、小説の具体的な描写に悩まなくていい。漫画の構図にも悩まなくてよい。

 これは果たして、AIによる創作屋の敗北か。はたまた、ただの便利なツールか。まあこうしたことは気分が乗った時に考えることにして、今は目の前のAIを活用することに集中したいと思う。

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