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重要文化財からの学びとつながり~「重要文化財の秘密」より

国立近代美術館の「重要文化財の秘密」を見に行ってきました。先日宣言したからには、早いうちに。

GW初日、ひさびさの家族揃ってのお出かけとなり、にしては渋い展覧会に、よくぞ付き合ってくれました、中2女子。思いのほか楽しんでくれたようですが、見てる最中に「これいくらくらいするの?」と。「……そこ?」

とはいえ、わたしも知りませんので、いろいろ調べてみました。

ぜんぶ重要文化財

まずは前提として、近代美術館の70周年記念展として開催されたのが、本展です。そのため、明治以降に作られた作品で、重要文化財となったものが集められています。

現在指定されている国の全重要文化財は10,872点。そのうち、明治以降に作られた絵画・彫刻・工芸となると、68点にぐっと絞られるんです。

なぜ少ないかというと、文化財が後世に与えた影響は、あとになって明らかになっていくから。制作当時「問題作」であっても、その革新性からのちに「傑作」となることも。なにが評価されるか分からないのはアーティストにとっての苦悩で、評価されてもすでにこの世にいないというのは、切ないですね。

そうした背景や解説を読みながら、集結した重要文化財だけを見られる機会は、やはりとても貴重でした。

岸田劉生「麗子談笑」(1921年)


文化財保護法による

重要文化財は、どうやって誰が決めるのか。
1950年に公布された「文化財保護法」に、重要文化財、および国宝について、規定されています。法律を勉強すると、ついチェックしちゃいます。

第二十七条(指定) 文部科学大臣は、有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定することができる。
2 文部科学大臣は、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる。

文化財保護法 第三章 有形文化財>第一節 重要文化財>第一款 指定

文部科学大臣が決める……。令和5年4月現在では、永岡桂子大臣の仕事になるんですね。実際のところは、「文化審議会」に選ばれた専門家の委員たちが調査して、答申する形をとるようです。

このあたりの詳細は、文化庁のサイトに、各種データとして公開されているのですが、有形無形の芸術作品へどんな基準を適用して決めているのか、さぞ難しかろうと。この先指定されるときは、注目してみたいと思いました。

文化財の買い取り価格

で、冒頭のいくらするか問題のヒントも、見つけることができました。

文化庁(国)が購入した文化財について、その年度に買い取った作品とその購入額が掲載されているのです。

直近令和3年でいちばん高額だったのが、絵画の重要文化財「絹本著色浄土曼荼羅図」。その購入額は、208,000,000円とのこと。2億!
どこから購入されたのかは書いてないのですが、買い取りが決まれば、相当に大きな額が動いているということです。工芸品や無形文化財の資料なども数百万円以上のものが大半でした。

そして、近年よく買い取られていたのが、「アイヌ文化関係の資料」です。これらは、北海道にできた「ウポポイ」の国立アイヌ民族博物館用なのかな、と思います。行ってみたくなりますね。


おもしろいのは、買い取りに関する規定もあるし、「国宝・重要文化財(美術工芸品)の所有者のための手引き」なんていうリーフレットまで用意されていること。所有者向けってかなりレア!

これを読むと、重要文化財を持っているってかなり厄介……指定されたら、さまざまな「義務」が発生するイメージです。たいていは本人亡きあとの遺族やのちの所有者に課せられるけど、その分名誉が与えられ、買い取りの対価も出すという、よくできた仕組みのような気もしますね。

お墓つながりの…

今回出会えてうれしかったのがこちら、朝倉文夫作の「墓守」です。

朝倉彫塑館所属「墓守」

1910年制作、重要文化財への指定は2001年というから、やはりだいぶ経ってからの指定です。

じつは、わたしのブログ「おはかんり」でひそかに一番人気の谷中霊園の記事のなかに、「朝倉文夫の墓」の項があるんです。(↓リンク先の写真で見れます)

なんて美しいお墓! と感動したのですが、その主はやはり只モノではなく、「墓守」という作品まで残しているということを知って、印象に残っていたました。写真で見ただけでしたが、実物を前にして一目で「見覚えがある」と思えたのは、作品に力があるからなのでしょう。感動してしまいました。

谷中霊園には日本画家・横山大観のお墓もあるのですが、「生々流転」という40メートルもの巻絵が、一直線に展示してあったのも圧巻でした。


芸術家のお墓とつながる美術鑑賞も、なかなか乙なものでした。

国の重要文化財という切り口から、そして個々の作品からも、学びや発見があった展覧会。やはり実物の大きさや迫力も直に伝わるので、おすすめです。

展示期間が限られている作品があったことをあとから知りました。
事前にチェックして日程決めるのも、ありかもしれません。▶出品目録

 

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