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組織が拡大していく際の壁。

組織が拡大していくにつれて立ちはだかる壁があるって言いますよね。
よく言われるのが『30人の壁』『50人の壁』『100人の壁』ですね。
D2Cdotは現在120名弱なので、ちょうど『100人の壁』に当たっている最中というところになるのでしょうかね。

もともとは10名程度のいち部門から始まった事業ですが、現在の100名超の組織になるまでにそれなりに考えてクリアしてきたところもあるので、今回はちょっと長くなりますが、自分なりの経験を踏まえてそれぞれの壁の課題やどのようにやってきたかを書いていこうと思います。
※●⇒メリット、▲⇒どちらともいえない、×⇒デメリットで記載。

【1~30名までの組織のメリットや壁】
● トップが全社員の行動を隅々まで把握できるし、コントロールしやすい。
● トップの声が末端まで届くため少人数がゆえの一体感がある。
 ※トップと現場の距離が近い。企業文化が浸透しやすい。
● 社員数が少ないため戦略の浸透が早く施策のスピード感がある。
● 固定コストが少ないので数名のエース級の活躍で事業が成り立つ。
 ※部門の活動レベルでも企業として成り立つので、会社として成熟して
  いなくてもやっていける。
▲ (良くも悪くも)社員ひとりひとりが様々な役割を担当する必要がある。
▲ 社員ひとりひとりの活動(影響力)が会社の業績にダイレクトに反映され
 る。このため社員はやりがいを感じやすいという利点があるが、なにかあ
 ったときにダイレクトに負の影響も大きい。
▲ リソースの問題もあって『選択と集中』で一点突破ができる。ただ単一事
 業なのでリスクヘッジを考えたポートフォリオが組めない欠点あり。
× ギリギリのリソースで即戦力が中心の社員構成になるため、若手の採用や
 教育などをしにくい(将来を担う人材が育ちにくい環境にある)。
× 事業に対する目先の『攻め』以外の活動にあてるリソースが不足しがち。
 結果、コーポレート機能が手薄になったり未来を描く稼働がとれない。
 ※組織が脆弱で社員がずっと働き続けられる環境を提供しにくい。
× 特徴がない企業だと優秀な人材の採用が難しい。

上記のように~30名くらいまでは少人数がゆえの楽しさとか一体感がありますね。経営者がそこまで成熟していなくても(経営者=現場のエースでも)やっていける規模だと思います。社員も価値観が似た人が多く(代わりに多様性は少ない)、即戦力レベルの人たち同士で活動していることが多いと思うので、企業として一定のクオリティの担保もできそうです。

ただその反面というか、少人数がゆえの選択肢の少なさや将来への打ち手の乏しさがあるので、目先の仕事の楽しさにとらわれていると気づいたときには社員の年齢も上がってどうにもならない状況に陥るリスクがあります。
また、コーポレート機能の優先度は下がると思うので充実しているとまではいかないでしょうから組織としては脆弱な状態にあるといえるでしょう。

あえて小規模に抑えて運営している企業もあると思います(そういう企業は小規模でもバランスのいい企業構造になっているはず)が、特に狙いがあってやっているわけでないのであれば、やはり経営者としては次の~50名までの拡大に乗り出した方が良いと思います。

僕の場合は、以前は小規模組織で良いと思っていたけど、リーマンショックの影響で組織が一旦瓦解してしまったので、それを機にこのままじゃいけないと思って次のフェイズに移る考えに改まったという感じです。
※この当時はまだ『企業』ではなく『いち部門』でしたけど。


【31~50名までの組織のメリットや壁】
● トップが全社員の行動を見切れなくなるのでマネージャーの配置が必要。
 ※現場プレイヤー以外の将来の選択肢が提示できるようになる。
● 負荷分散ができてリソースに余裕ができ始めるため、若手の教育などにも
 取り組むことができて次の組織の形を検討することができる。
● 会社の『守り』にも活動ができていく。このタイミングで人事/広報/財務
 などにも力を入れないと次の段階に移るには難しい。
 ※社員がずっと働き続けられる環境がようやく検討できる段階。
● メイン事業以外でも他の活動を検討できる状況。販路を複数もつなどリス
 クヘッジの動きができるようになる。
● 特徴がない企業だと優秀な人材の採用が難しいのは継続だが、採用自体の
 困難さは和らいでいく。
▲ 社員ひとりひとりがある程度は分業で役割を担当できる。
▲ 規模が大きくなってスピード感がやや遅くなっていく段階。
 ある程度のルールを設けていかないと統率がとれていかなくなる。
▲ マネージャーの質で組織の強さが決まっていく段階。
 ※マネージャーに企業文化が浸透していないと組織崩壊につながる。
▲ 社員ひとりひとりの影響力は薄れていき、全員で負荷分散ができていく。
 このためリスクヘッジはできていくが、社員によってはやりがいを感じ
 にくくなっていく。
▲ 社員の評価が『絶対評価』から『相対評価』に変化していく。
▲ 固定コストが増えてくるので数名のエース級の活躍だけでは立ち行かなく
 なる。経営者としても一段階上のレイヤーにいく必要がある。
▲ 組織が大きく次のフェイズに移っていくちょうど狭間の段階なので、変化
 の大きさに社員に動揺が起きやすい。

上記のように31名~50名くらいから組織としてきちんと考えていかなくてはいけない段階になります。固定コストが上がることでいままでのように少数精鋭だけでやりきれた状況ではなくなり、経営者自身の目線が上がらないと次のステージに移っていけなくなります。よって、ここを超えられるかどうかが経営者としての腕の見せ所かなと思いますし、ここを超えられないと再度縮小していくのか、最悪の場合は会社の解散となっていくと思います。
※M&Aの相談で30名と50名程度の規模の会社が多い理由はそれかなと。

上記のリストでは『×』がないですが、この規模でのあからさまなデメリットはさほどないのではないかと思います。それは成功と失敗のどちらにも転びやすい段階だから、ということもあります。『▲』の状態がやり方次第ではすぐに『×』に移っていく脆さはあるので注意が必要です。

社員の意識も、これまではこじんまりと全員フラットな状況でやっていたし、自身の影響力も大きかったので組織への帰属意識が高い人が多かったのが、30名を超えた頃からなんとなく組織っぽくなってきたので違和感を感じ始める頃だと思います。小さい規模の頃からいる人は変化についていけなく、意識が変わるのが難しい人もいるため、この変化を乗り越えられない人は辞めていくと思います。
※「昔の方が良かったなぁ」と言い出します(苦笑)

組織としてはマネージャーの機能が重要になります。これまで経営者ひとりが言っていた&やっていたことをマネージャーが代行する必要があるからです。プレイングマネージャーでもなんとかなる規模ですが『部下を活用して結果をだす』仕事のやり方をおぼえていかないと次のステージには進めないでしょう。

この規模の経営やマネジメントを経験していると、仮に転職の際にはこの前後の~30名規模でも~100名規模でもどちらの企業でも順応しやすいと思います。~30名規模の会社の経営・マネジメントしか経験していないと~100名規模の経営・マネジメントは全く別モノなので対応しにくいと思いますし、逆もまたしかりですね。

マネージャーがきちんと機能するかどうかは経営者⇔マネージャー間の意思疎通がどれだけできているかにかかっています。

僕の場合は普段の会話以外に、部下の評価面談に一緒に同席するなどして、自分の考え方を伝えたり、良い悪いの判断基準の目線合わせをやりました。
※実際は会社が70名くらいになるまで全員の評価面談に同席していたのでこのフェイズでやることを次のフェイズでやっていたという感じですが。
彼らの口から僕が考えていることと似たようなことを聞けるようになってきたあたりで『価値観や基準が一致してきたので問題ないだろう』と判断して、以降は同席しなくなりました。

あとは意識的に現場のメンバーと直接会話をする機会を減らしました。
僕がいつまでも直接やってしまうと中間のマネージャーの価値がなくなりますし、成長機会を僕が奪ってしまっていることになります。
そして現場とマネージャーの相互信頼関係が生まれないと思ったのでマネージャーに権限移譲をするようにしていきました。
※仮に失敗しそうでもあえて口出しをしない『我慢』が必要になります。
そのおかげか(?)360度評価などでは現場からマネージャーに高い評価がでていました。これはうれしかったですね。
※マネージャーが自身の役割にきちんとコミットしてくれた結果ですから。


【51~100名までの組織のメリットや壁】
●(組織が成熟すれば)トップとマネージャーの役割分担ができることで
 現在と未来の活動を同時に行えるようになる。
● 複数の事業をもつことができるようになるので多角経営が可能に。
● 社員ひとりひとりの活動は全体の一部となるため、何かあっても他の社員
 が補填できるので大きな影響を受けにくくなる。
● 社員の生活環境の変化による働き方の多様性も受入れられる環境に。
● 負荷分散によりリソースに余裕ができてくるので将来を担う若手の採用や
 教育も可能。社員も目先の仕事以外の活動もできるようになる。
● コーポレート機能も備わり『攻守』のバランスがとれるようになる。
▲ トップの声が末端まで届きにくくなるため、現場との一体感は薄れがち。
 ※このため、代弁者のマネージャーの役割が重要となる。
▲ 固定コストが大きいのできちんとポートフォリオを組まないと事業リスク
 が大きくなる。
▲ 企業の安定性も増すため、人材の採用がしやすくなる。
 ※ただし、安定を求めて入社をしてくる人もでてくる。
▲ (良くも悪くも)部門ごとの『色(価値観など)』がでてくる。
 部門の色と会社の色が乖離しないように全体を統括する役割が重要。
× スピード感はどうやっても30名規模よりは劣るようになるので、機動力を
 極力落とさないような工夫が必要になってくる。
× 様々な志向の社員が増えるため一定のルールを設ける必要性がでてくる。
 このため個別のイレギュラーな対応に応じづらい状況に。
× 社内及び部門間などの情報流通ができにくい状況になりやすい。
× 社員の活動が分業になって『それ以外できない人』になりがち。
 組織間の縦割り構造にも陥りやすいので注意が必要。

組織が100名くらいになると組織の階層は3~4階層くらいにまでなっていると思います。ますますトップの声が末端まで届きにくくなるので、中間に入るマネージャーの役割が最重要になっていきます。マネージャーの質次第で会社がさらに拡大していけるかどうかが左右されます。
※マネージャーの下にさらにマネージャーができるようになるので、一番上のマネージャーは~50名規模の社長と似たような状況になります。

マネージャーは自部門の責任を遂行するために、経営者(会社)の考え方をさらに理解していく必要がでてくるので、僕の方では自身の経営に対する考え方を毎月マネージャー陣にメールするようにしました。
経営者は部門ごとの『色』は認めつつも、会社の方針からズレないようにみていく必要があります。
※『企業文化』が本当に大事だと思えるようになるのはこの段階からかもしれません。

また、これくらいの規模になると安定感を求めて入社してくる人も増えます。会社によってはいままでアグレッシブに攻めていた企業スタイルも多少変更を余儀なくされるかもしれません。
でもこれは必ずしも悪い話ではなく、さらに次のステージに進むために『多様性を受け入れる』ということなんだと思います。
古くからいる社員も生活の環境が変わっていったりするので、どちらにせよ会社は『全員が同じ働き方』から『いろいろな働き方』を受け入れるための変化をしていかなければいけないと思います。
組織は全員が同じ役割である必要はないので、人それぞれの適正によって適材適所をすればよいと思います。

組織としては大規模になってくるのでスピード感が遅くなる懸念がでてきます。また、社員のレベル(スキルやモラル等)もバラバラなので様々なルールを設ける必要もでてきます。
D2Cdotではこれらの懸念をクリアするために、小ユニットを複数つくって機動力を上げる工夫をしていこうと考えていますし、自由な裁量権があることがウリだったりもするので、極力ルールは少なくできるように本人たちの意識を高める方向で教育をしていければと思っています。
※自己規律がある人にはルールなんて少なくていいと思うので。

組織が大きくなるにつれてありがちな『組織の縦割り感』や『情報流通の滞り』に関しては、企業文化としてそういうことにならないように事前にやってきたということもあるので、D2Cdotではいまのところあまり致命的な課題感としてはとらえていません。

この規模だと、もはやトップが末端まで目が行き届かなくなってくるため、様々なシステムの導入を行って目が届く範囲を広くしたり、人事制度などの変更を大規模組織用に行って不公平感をなくしていくなど、組織としての変化を多く必要としていくタイミングだと思います。ここについてはこれからもずっと模索をしていくと思います。


上記はあくまで一般的な企業の場合ということで。業態によっても違うでしょうし、企業文化によっても違うと思います。また、地方や海外に支社があったりすると人数規模というのとはまた違った課題が出てくると思いますのであくまで参考に、ということで。

D2Cdotは実際ここまで急激に組織が拡大してきましたが、いまのところそんなに乗り越えられない壁っていうのは感じたことがないんですよね・・。
それは手前味噌ですが『マネージャーや社員が優秀だったから』っていうことと『事前に起こりそうな課題を想定して先手で準備をしていた』ということに尽きるんじゃないかと思います。

社員数が70~80名くらいになったときになんとなくこのままいくとこういうところでひずみができるんじゃないかなって思ったりした部分があったので、事前に1~2年くらいかけて準備をしていたのが功を奏したというか。
いまのままだと200名まではこのままいけるんじゃないかなっていう想いがあります。

僕がすごくラッキーだったのは、親会社のD2Cで50人からグループ全体で700人くらいにまでなっていく過程をリアルタイムで体験できたことでした。このためすべてが初めてということでなく、事前にこういうことが起こるだろうということを予測できて手を打てたし、良いところはトレースすることができたので、D2Cdotではそこまで苦労することなく拡大して行けたと思っています。
※・・とはいえ、もちろんマネージャーたちは都度苦労をしながらやっていると思いますが・・。

D2Cdotは現在120名弱なので、これ以上の人数の壁は今後どのタイミングででてくるのかはまだわからないです。次は200名~300名あたりですかね。
その際はまた情報をアップデートしていきたいと思います。

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