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『閉塞感こそが2020年らしさ』GRIMES『Miss Anthropocene』

今作は前作「Art Angels」のカラフルな曲目と比べるとモロクロで内省的な作品となった。
中でも「DARKSIDE (with潘PAN)」はアルバムを象徴するような楽曲だと感じる。暴力的ほど連発される重低音とボーカルの無機質さが印象に残る。一曲を通してGRIMESのボーカルパートは”不安に魂を蝕まれて、もう身体は動かない”という一節を繰り返すのみで、台湾人ラッパーの潘PANの躍動感溢れるラップパートとの対比でよりGRIMESの闇落ち具合が際立つ。この曲のレコーディングはシベリアの爆弾シェルターで行われている。精神的な不安定さは、銃撃戦や爆弾の爆発に怯えるような切迫感と似ているという事なのだろうか。そう考えると、連発される重低音が戦場の爆発音とも捉えることが出来る。アルバム全体に漂う死のイメージは特にこの曲に集約されている様に感じた。サウンドもクラブミュージック、HIP HOP、ゴシック・ロックなど、ごちゃ混ぜで正しくカオスだ。
今作で一番ポップで可愛いサウンドの曲「My Name Is Dark」でさえも、デスメタルバンド顔負けのシャウトで苛立ちを爆発させている。このアルバムに描かれている閉塞感こそが2020年らしさだと思う。

GRIMES『Miss Anthropocene』

収録曲:
01. So Heavy I Fell Through the Earth
02. Darkseid (with 潘PAN)
03. Delete Forever
04. Violence (with i_o)
05. 4ÆM
06. New Gods
07. My Name is Dark
08. You’ll miss me when I’m not around
09. Before the fever
10. IDORU

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