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【book】飼う人

柳美里/文春文庫

危ういバランスの上で生きる人々が、生き物を飼うことで、救いだったり、かろうじて踏みとどまったり、踏み留まれなくなる物語。

飼う生き物は、普通ではない。イボタガ、ウーパールーパー、イエアメガアル、ツマグロヒョウモン。
奇怪な、何か剥き出しな、グロテスクな。 

登場人物はそれぞれ簡単には解き難い問題を抱えており、そうしたグロテスクな生き物を通じて、自分と向き合い、それと向き合っていく。
決してハッピーエンドにはならない。
残酷な現実と、ただただ向き合う。

柳美里の作品は、昔読んで、なにか直接的な文章が多い印象であまり好きでなかったが(私は感情表現を直接的な言葉でなくて、周りの世界の見え方に投影して表現する作品が好き)、久々に読んでその辺りが変化したなという印象。奥行きを感じる。

あと、表紙の絵もきれいで危なくて好き。

『JR上野駅公園口』が、全米図書賞を受賞したとのことでこちらも読んでみたい。


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