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『カトリと眠れる石の街』が出版されました!

第六十二回講談社児童文学新人賞で佳作をいただいた『カトリと眠れる石の街』が9月27日に講談社から出版されました。そろそろ全国の書店に届く頃とのことです。

本作は19世紀末のエディンバラを舞台とする怪奇冒険小説です。
あらすじは下記の通りです。

舞台は19世紀後半のスコットランドの都市、エディンバラ。

金物屋の一人娘カトリは、偶然出会った少女リズから、街に広がる「眠り病」の原因が、自分が住んでいる旧市街にあるのではと聞かされる。

ふたりは患者が発生するタイミングを調べ、街の歴史を紐解きながら、眠り病の原因を探しもとめる。

そのうち、旧市街が隠している「大きな秘密」がわかってきて……。

表紙画、挿絵はまくら くらまさん、デザインはnext door designの岡本歌織さんです。繊細かつ絢爛な装丁に仕上げていただき、美しい本になりました。受賞時、審査員を務めておられた如月かずさ先生、そしてゲラをお読みいただいた書店員の皆様には帯文をお寄せいただきました。ありがたい推薦文をいただき感激です。

また、右も左もわかっていない著者を導いていただき、作品を無事出版まで持っていって下さった担当編集Sさんには本当に感謝しております。
また講談社児童文学賞の先輩方がSNSで拡散して頂いたり、本書に言及していただくこともありました。本当にありがとうございました。

書きたかったことについて

『カトリとまどろむ石の街』を書き始めたのは2年近く前、2020年の10月でした。コロナ禍でなかなか外出もままならない中、家の中で何か創造的なことをしたいなと思っていたところ、講談社児童文学新人賞の公募を見つけたのがきっかけです。

児童文学を書いて公募に出すというアイデアについて考えた時、真っ先に思い浮んだのは、『宝島』『ジャングル・ブック』『ソロモン王の洞窟』『ジキル博士とハイド氏』など、小学生の頃に親しんだ19世紀英国の冒険小説でした。これらは鹿児島にある父の実家の倉庫に眠っていた、小学館の『少年少女世界の名作文学』というシリーズに収められていたものです。当時、夢中になって読んでいたのを思い出します。

今振り返ると、これらの作品にあらわれる、好奇心と勇気に富む主人公、蠱惑的なエキゾチズム、そして何より世界の広がりを感じさせる舞台設定が、文化の砂漠のようなベッドタウンで暮らしていた私にとって、これ以上なく刺激的ものであったのだろうと思います。

上で挙げた作品を今、特に原典に近いバージョンで読み返すと、どうしてもその背景にある植民地主義や人種主義、ヴィクトリア朝的なジェンダー観に留意する必要があります。その一方で、大人になってからどのような名作を読んでも、当時の読書体験を超えるものがなかなかないというのもまた、個人的な経験として偽らざるところです。

『カトリの眠れる石の街』を書くときに範としたのは、上記のような古典冒険小説で描かれる、ワクワク感であり、未知に挑む力です。
本書内には舞台となるエディンバラの地図を始め、物語に親しめるように様々な仕掛けを施していただきましたので、謎と冒険をより楽しく感じていただけると思います。

小学校高学年から楽しめるよい作品に仕上がっているはずです。
ぜひ書店でお手にとってみてください!


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