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『バイオショック・インフィニット』

2013年に発売された『バイオショック・インフィニット』というゲームがあります。これは色々な意味で異形のゲームで、個人的に持っていたFPSというジャンルへの偏見を拭い去る原因になった作品です。

物語の序盤、主人公は空中に浮かぶ都市コロンビアに上陸します。名前が示す通り、この街は「アメリカの夢」を具現化したような場所で、ジャズエイジを彷彿させるような瀟洒な街並みワシントン、ベンジャミン・フランクリンなどの像が並び、広場は音楽と笑い声で満ちています。

しかしこうした「夢」は、お祭りの見せ物台に引き摺り出されてくる黒人女性と白人男性のカップル、そして主人公がそれに石を投げつけるよう群衆に迫られるシーンで終わり、そこからウンデット・ニーの虐殺八カ国軍など、アメリカの「明白な天命」暗黒面、資本主義と労働者の暴動、階級、宗教などアメリカ的なカオスを背景に、物語は進みます。

色々なところで指摘されている通り、ゲームやストーリーとしての出来は、特に傑作とされている前作「バイオショック」と比較すると決して良くはないし、所々辻褄の合わない部分や、物語の展開に無理がある箇所は見られます。しかしこのゲームの制作者が描こうとしているのものはまさに合衆国の夢と罪、そして狂気であり、こうした鮮烈なイメージをプレイヤーの心理に強く食い込ませることには間違いなく成功しています。

こうしたアメリカ的価値観の脱構築と転回は、従来の軍事国家的マッチョイズムと商業主義の象徴のようなCoD、BattlefieldなどのFPS作品(最近は色々と変わってきているようですが)とは明確な一線を引いており、ゲームの枠を超えた怪作たらしめている理由でもあるでしょう。そして、日本にこうした作品、民族的な価値観やビジョンにクリティカルにアプローチしようとした作品作品がどれだけあるかと考えたと、直近のものでなかなか思いつかなかったことも書きそえておきます。

P.S IGNJに良い記事があったので置いておきます。



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