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暗号世界のトリプティカ Ⅱ 聖剣士

 ;;%;&;;;’;(;;;);!”;#;$;  舟橋
世界の不幸を垂れ流す投稿スレッドのない、涙より無味な每
日に 狩った獲物が型抜かれる星となって炸裂し 
虚ろな整数に変態する 壁のみえない閉じた異界の  
この浮いた桟橋から始まる低解像度のクエストに  
背中を押され膝をつき 破れそうな黑雲を映す水面
を崩し、すくいあげる底沙を喉に流しこむ 私は四
角い聖剣士
 ;%;&;;;’;(;;;);!”;#;$;;  索敵
     望むものは殺害ではなく甘美な打剣 経
験のない戦士を誘惑する鏡面の雄姿 胸元の薔薇 
邪悪ゆえに蠱惑する戦闘 心地よい不寛容が燃えあ
がり 世界を二分割する 私の武器は、よく動く細
く長い指に融合したコントローラ 退屈な不安から
逃れ 不運な現在を不確実な未来と交換し 安逸な
死が仕組まれる戦地を駆け巡る
 %;&;;;’;(;;;);!”;#;$;;;  惨状
踏み荒らされるステ
ージの 鳥が啼くこともない戦場で 行けども戦果
のない転戦は 手指をどのように動かしても 平坦
な座標系は方角も重力もなく 漂流する無数の二次
元が交差する虚点で 透けた他者の錯乱する砕片の
傍らで膝を抱き 力ない怒りが漏れだす輝かない星
の 何もない闇に向けて引鉄ひきがねをひいたままの私は 
世界を救うことができるのか
 ;&;;;’;(;;;);!”;#;$;;;%  乱射 
             何をどれでどのように
撃てばよいのか、斬ればよいのか、急所はどこなの
か、跳べばよいのか、回転すればよいのか、間違い
なのか とにかくボタンをして振りまわせ 正射
は誤射、誤射は正射 憑かれた両指の筋痙攣 よく
狙え、命令するコントローラの嘲弄 遮眼帯で塞い
だままだった両眼 鼻から垂れる苦笑にがわらい 光の風車、
紅い飛沫しぶき、即死する薔薇
 &;;;’;(;;;);!”;#;$;;;%;  撞着
           偽りの世界では何度でも生
きかえり 死を後悔することはない、生きていない
から 死ななければ解法は得られず 死ぬたびに略
奪される 翼のない暴君の支配する硅片シリコンの蟻塚 製
造以来、明証性のない生と死 捻れる磁気テープが
繰り返す後ろむきの進軍 スパゲティコード時代遅れの規範を喰う
バグが吐きだす神託 女神の不在が久しい天秤、大
皿にのせて厳密に測る なすべきは この嘘か、そ
の嘘か
 ;;;’;(;;;);!”;#;$;;;%;&  敗走
   出口も涯もない空間を一方向に走り 突きあ
たり 赤緑青RGBから合成される白の遠景に ピン止め
されて空を蹴る、見せかけの無限 きざむことを忘
れる拍子計メトロノームの呻きに 効果音も音程をはずし 解読
できない暗号に変換される私は 勝者の目録を一瞥
し 彼らが歴史に記すはずのない私の名前を探しに
殺害の現場へ戻り 恐怖も愛も忘れ、真実より酔い 
やすい虚言を飲みほす 
 ;;’;(;;;);!”;#;$;;;%;&;  士気
          そしてふたたび朝 投げ入れ
られ、戦い、消され また夜のない朝 眠りのない
朝 曖昧な符号に自身を置きざりにする朝 ただ指
を振りまわし 何ものとも交わることのないランダ
ムウォークの軌跡を残す 学ぶことを忘れる私 熱
を発しない星の暴発のむこうに想像するのは 閉じ
た回路からの鮮やかな失踪 指の支配者コントローラが気づくこ
とのない天才的な暗号解読 素数の最大値で因数分
解できる復号鍵を金庫から奪う 仮面の怪盗(笑)
 ;’;(;;;);!”;#;$;;;%;&;;  蜜酒 
私を解放する戦術、私の人間の条件は解けたか こ
の剣を聖別したものの名はおもいだしたか 自壞に
酔い道化た代償を漏れなく数えたか いま、銃剣を
突きつけ背を踏む四角い貌モザイク 死者を啄ばむ烏の消魂けたたま
しい歓呼 箱詰めされ雄叫びをあげる聖剣士たち 
戦勝前の祝宴 これは遊戯の続編だろう だが痛い
のはなぜか 抜刀の非道な円弧 その切先の溜りは
血と脂にくさい なぜ赤い水面をみているのか 壞れ
そう、コワレタ 底沙に傾いた馘 すべりおちてい
くスマホの鳴動 噴きあがる暗号文が浮橋を沈める

【22Y15AN】
*画像は「Dream by WOMBO」にて筆者作製。画像と本文に特別の関係はありません。なお、AI生成画像を無条件に支持するものではありません。

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