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暗号世界のトリプティカ Ⅲ カミ見習い

 ’;(;;;);!”;#;$;;;%;&;;;  翼禍
大地を蔽う平坦な雲海 球面のうつろいをつつむ 
朝も夕もない平衡系 過去に降る雨音も 未来に響
く星の聲も 心音も 波動となり瀰漫びまんする 蒼穹の
沈黙 地からさしだされる二本の腕 地にむかう二
本の脚 紫雲を貫き伸長する梯子の複線に昇降する
使者たち 一つは恩寵をもたらしに また一つは善き魂
を手に 一つは敵を斃しに また一つは叛徒の馘を
担ぎ 交錯する翼の白い軌跡
 ;(;;;);!”;#;$;;;%;&;;;’  疑心
             乱流を 自由落下する
私 靜止にある回転 漂泊 上昇 カミは殺しすぎ
る 激情、思いつき、甘言への追従、帳尻あわせ 
カミはふたたび後悔している 止まず殺していると
いうのに足りないと嘆く 天國の住人は急減してい
るというのに 窓の遠くにすすけた約束の地を眺め
るカミの決裁
 (;;;);!”;#;$;;;%;&;;;’;  任務
      微小重力 終端速度でのゆるやかな旋
回、見習いとは
       無際限の代行 数えきれない加担  
袖の中の汚れた手と言葉で 血だらけの貌 カミの
衰えた三角形の眼 塵芥が堆い玉座 双六盤に変身
したカミ
    転がりでた新たな使命は先代が名を成した
大洪水の模倣 明日、私は栓を抜く 冷えきった、
天の水瓶のゴム栓を 抜く、機械仕掛けの私 乱調
する薄翅の旋転
 ;;;);!”;#;$;;;%;&;;;’;  (寂光
       西天を射る光芒 晩鐘の残響を裂く 
錆びついた二つの電波塔の風切聲 乱雑な五叉路の
交差点にたむろする羊飼いのいない疎集合の電気羊と 
落穂をさがす半壞した錫板ブリキ人形 大型ビジョンに爪
をかけ脱皮に失敗した反りかえる携帯蝉の 目蓋の
ない目からけおちる未読のメッセージ 王冠状に
はじかれ 分解される符号と沈黙の行列は、放射状に
散っていく
 ;;);!”;#;$;;;%;&;;;’;(;  運命
     選択肢のない曖昧な世界 落ちるリンゴ
が滑空を選ぶ自由のない 空のない 何事もなく刻
まれる時間 砂時計 細いくびれを落下するとき、
私は何者であるのかと問う意識の粉砕
                 一粒
                   また一粒 
踏まれる鳴砂なきずな 希望がからとなる時、光と闇をいれ
替えるカミ見習い 悲観にみちていく上部容器の黑
い渦動に引き廻され地底に沸く劫火の旋風に灼かれ
身悶える夢魘むえんの内に 吐瀉した鋭利な因循いんじゅんと枷鎖に
串刺される私
 ;);!”;#;$;;;%;&;;;’;(;;  破戒
      何をしに来たのか 栓の鎖を身體に巻
く見習いよ 救済 だれの 先月、結婚を祝福した
二人 先週、工場で洗礼した児 楽園で待つ女のも
とに明日、届ける予定だった男の素子 私の心から
除くことが私の死滅に繋がる、拍動する他我の世界 
それは見習う私の破棄を迫るものだ 私を侵害する
私 その源への応責 刷りこまれるカミの言葉が飾
る王宮にはべる私は私と同一ではない すでに棄教 
私のゼンマイを巻く鍵穴は閉じられ カミは鍵を砕
き、私は躓く
 );!”;#;$;;;%;&;;;’;(;;;  線刻
      亡羊とした彼我の境にひろがる砂漠  
復号できないほど細斷される暗号が 砂雨となり
一様にふりつもる地平 意味を切り離される記号の
絲雨 砂雲より、天よりたかい宙に吊られる振子 
おもりが揺れる 雨滴の軌跡を横に切る弧線は無限に往
来し交わり 薔薇の輪郭を大地に刻む 風が消して
も、大水が流してもたちあがる薔薇園 雨はやまな
い ときがきた
 ;!”;#;$;;;%;&;;;’;(;;;)  洪水
      再び天地が反転する砂時計 栓は抜か
れた もう一人の見習いに違いない 私は堕ちてい
く、粒 赤い痕の点は弧を描き円が傾き螺旋に彷徨
い ゼンマイはとまる 降架 靜寂がはらむ揺らぎ 
砂層に滲みる雨の繊細な鼓動 濾過され、時計の底
に溜まる私の、中空に弱弱しく凝固する錘 砂は降
り、虚洞を突きぬけ弦となる薔薇の根に結びつく私
の錘は軽く振れ、一つめの花瓣を開こうとしている

【改22Y21AN】
*画像は「Dream by WOMBO」にて筆者作製。画像と本文に特別の関係はありません。なお、AI生成画像を無条件に支持するものではありません。


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