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殷く融ける空と地に屹立する

あかぐろく融ける空と地に屹立する
槍の穂先に貫かれ
確かに彼は両眼をひらき
世界とつながったまま息絶えているが
鋒端からかるく飛びたつ蜻蛉とんぼ
貌が彼のものであることもまた真実であり
その胴の縊れに結ばれる絲の端をもつ児の目が
六角の多眼であることも疑いなく
私が彼の名をよぶとき
児が引きよせる女の指先に
滴る雫がひろげる波紋に
ゆらぐ月が真円をとりもどし
指極星カペラを指す彼の翅が殷い天をふたたび波うたせ
彼女の胸に抱かれる児の力強い拳に
にぎられる世界は
炎舞する千切絵
無邪気な甘い余香をふりまき
追いかけっこしながら
蜻蛉のおとす翅を河原に積みあげ
大地に尖角をみせる墓標に
繋鎖される彼の刻は
幾重にも折りたたまれ
飛翔よりはやく槍が気層を裂く

【23Y29AN即興】
*画像はStable Diffusionにて筆者作製。画像と本文に特別の関係はありません。なお、AI生成画像を無条件に支持するものではありません。


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