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フランスの旅(1)グリーンランドを通過し、パリに到着

11月8日。いよいよフランスの旅が始まる。5年ぶりのヨーロッパなので、ドキドキワクワクだ。

「羽田空港の国際線=第3ターミナル」と覚えていたのだが、前日にEチケットを確認すると、第2ターミナルと書いてある。どういうことだ?

実は2020年3月に、国際線は第2ターミナルからも飛ぶようになった。しかし、新型コロナウイルスの流行から、オープンからわずか13日後にクローズしてしまっていたのだ。そういえばそんなニュースがあったなと思い出した。その「幻の国際線ロビー」が今年7月、3年3ヶ月ぶりに復活したのだそう。危うく降りる駅を間違えるところだった。

朝7時45分に羽田空港に到着。第2ターミナルの国際線出発ロビーは開放的で良い。大きな窓の向こうにはたくさんの飛行機が見えた。

羽田空港 第2ターミナルの国際線出発ロビー

スーツケースを預けたあと、ラウンジで少しコーヒーを飲んでから、セキュリティゲートを通過して搭乗ゲートへ。9時45分発の全日空215便に搭乗した。

機内で映画『ザリガニの鳴くところ』を鑑賞。しかし残念ながら、原作ほどの感動やスリル、おもしろさは味わえなかった。ぜひ多くの方にディーリア・オーエンズの原作を読んでほしい。まさかの展開が待っている、とてもおもしろいミステリー小説だ。

最初の食事が終わり暗くなったあと、座席のライトをつけて、この旅行中どういう自分でありたいか、ノートに書き出していた。

・心をオープンに。リラックスして、開放的に
・シンクロニシティを楽しむ
・感性を柔らかく
・すべてに感謝する
・起こることを味わう
・感じたことをたくさん書く
・自分の価値観、世界観を放出する。文章に投影する

などなど。エッセイはなるべく毎日書きたい。できるかどうかはさておき、願望としては。当初は、毎晩メモだけ取っておいて、帰国後にゆっくり書こうと思っていた。けれども、それには2つの懸念があった。

  1. 滞在中のリズムが失われるのではないか。

  2. 時間が経過するにつれて興奮が冷めてしまい、文章に気持ちが乗らなくなってしまうのではないか。

「毎日書く」と決めて動いていると、ぼくはリズムに乗れる感覚がある。先日の自転車旅のときにそう感じた。そして体験が新鮮なうちに文字化することで、感情が文章に乗る。

もちろん一日単位で書けば、どうしても情緒的に書くのは難しくなる。構成は基本時系列だし、1つのテーマではなくいろんな内容がごちゃ混ぜになるから、作品性は薄い。そして時間と体力も限られる。

だけど、それでも毎日書くと決めた方がいいような気がする。また考えは変わるかもしれないけど、今はそんな気持ち。余裕がある限り書く。何を見て、何を感じたかを記録しておく。同時に、できるだけ情緒的、感性的な文章も目指す。

*****

ロシア上空のルートを避けているため、飛行機は北極圏を通過するらしい。そのため以前より2時間ほど余計に時間がかかる。パリへの直行便は嬉しいが、片道14時間はなかなかキツい。

北極圏を通過する飛行ルート

寝静まっているなか、モニターに乗務員からの通知が表示された。

「ただいまオーロラが見えます」

映画などを観ていた人たちを中心に、ザワザワし始める機内。マップで現在地を確認すると、そこはアラスカ北極圏だった。バローという聞き覚えのある地名が表示されていた。ぼくが昔、添乗員として訪れたエリアに近い。あのときも毎晩オーロラを眺めたのだ。

ぼくは通路側に座っていたので、トイレの脇にある窓を見に行った。しかし、テレビでよく見るような、ハッキリと色のついた美しいオーロラではない。が、確かに白いモヤは見えた。一見すると雲のようだけど、あれがオーロラなのを、ぼくは知っている。シャッタースピードを長めに設定できるカメラで撮れば、きっと緑や青に発色して映る。だけどぼくのiPhoneSEでは無理だった。何度も撮ってみたが、真っ暗だった。

近くにいたCAさんと「あんまり見えないですね〜」と話していると、

「パリへはご旅行ですか?」

と尋ねられた。いつも説明に迷う。旅行でもあり、仕事でもある。

「旅のエッセイを書いていて、今は海外へ行ったり、自転車旅をしたりしています」

「えー!素敵ですね〜。もしかして以前、テレビに出られたことありませんか?」

「何度かあります。『奇跡体験! アンビリバボー』とか」

「やっぱり!? どこかで見たことのある方だなと思って」

少し眠ったあと、原田マハさんの『モネのあしあと』を一気に読み終えた。

画家モネの生涯と、「印象派」の成り立ちや時代背景についてざっくりとわかる本だった。おもしろかったし、知りたかったことをドンピシャで学べた。原田マハさんの説明はわかりやすい。この本で学んだことは、現地で訪ねる美術館と絡めていくつか紹介したい。それから玉村豊男さんの『パリ 旅の雑学ノート』もざっくり再読。もう一冊本を持ってこなかったことを後悔した。帰りに読む本がない。

グリーンランド上空を通った。初めて見る景色だった。雪山だらけの広大な大陸。その後、スコットランドのグラスゴーやロンドン上空も。

グリーンランド上空

食事は2回ともおいしかった。さすがANA。両方とも魚をチョイスした。最初はサフランライスに白身魚のムニエルみたいなもの。後半は和食。赤魚の煮付け。しばらく和食が恋しくなりそうだ。パリでラーメン食べたらいくらするんだろう。。。

現地時間16時30分、パリに到着した。来年オリンピックの舞台となる、花の都。開会式はスタジアムではなく、セーヌ河で行われる。各国の選手団は約160隻の船で、セーヌ河を6kmを下って「入場行進」するという。すごいことだ。

1ユーロは162円。ここ最近はずっと上がっている。

空港から宿のあるGntilly駅までは、RER(高速郊外鉄道)のB線で13.7ユーロ。

券売機で切符を買うのに手間取っていると、駅員さんが親切に助けてくれた。行きたい駅名を伝えると、目にも止まらぬ速度でボタンを押していくため、操作手順を覚えられない。でもひとまず助かった。メルシー ボクー。

しかし、出てきた切符で、なぜか改札を通過できない。また別の駅員さんに相談すると、「窓口へどうぞ」と親切に案内してくれた。本当は窓口に行列ができていたんだけど、ショートカットさせてくれた。窓口のおばちゃん曰く、切符の磁気不良みたい。新しい切符を出してくれて無事通れたけど、日本人的な感覚からすると、「大丈夫か?」と思う。今買ったばかりの切符が磁気不良で改札通れません、って日本では経験がない。ちなみに券売機も、途中で機械がフリーズしたため、駅員は「クソ!」とマシンを叩き、「ミスター、隣のマシンへ」と移動することに。人は親切だけど、小さなハプニングは毎日付きまといそうだ。

17:30の電車に余裕で乗れるはずだったのに、1分過ぎてしまい間に合わなかった。「次は15分後だ、やれやれ」と思っていたら、電車も2分遅れていたので間に合った。ほぼ始発駅なはずなのに。日本でのいつもの感覚は忘れて、思い通りにはいかない前提でゆるく過ごした方が良さそうだ。

空港からRER(高速郊外鉄道)でパリ中心部へ

途中駅でいろんな人が乗ったり落ちたりするが、黒人が非常に多い。男性も女性も身体が大きいし、少しビビってしまう。あとパリの電車(とくにメトロ)はスリが多いというから、気をつけたい。

電車では今晩何食べようかなとスマホでチェックしていた。今回初めて「eSIM」でネット接続している。これまではSIMカードを空港で買って差し込んでいたが、最近はそれすらも必要ないらしい。eSIMのプランをネットで購入して、iPhoneで簡単な設定するだけで、現地でネットが使えるようになる。アプリ上で残りの通信量(いわゆるギガ数)も確認できるから、とても便利だ。しかも料金も10GBで1700円(30日間有効)と格安。いくつか会社があるなかで、Ubikiを利用した。かなりおすすめ。

45分でGntilly駅に到着。気温13℃で、しとしと雨が降っている。寒い。

宿まで6分ほど歩く途中、いくつか気になるお店を見つけた。レストランでちゃんとごはんを食べると3000円以上してしまうので、ハンバーガーとかでもいい。幸いいくつかファストフード店があった。

チェックインして、部屋に荷物を置いた。ホテル代も高いので、パリではドミトリーにした。ホテルに泊まるとシングルルームで安くて1.5〜2万円はする印象。ドミトリーは朝食込みで1泊6500円くらいだからかなり安い。今回は3泊する。部屋は5人部屋。が、部屋の電気は薄暗くて、夜になるとiPhoneの懐中電灯を使わないと何も見えない。シャワーももちろん共用だし、やっぱり不便なものだ。作業効率が悪いから、悩ましい問題。

おいしそうなエッグタルトに惹かれて、ホテル近くのパン屋さん「Boulangerie Pao Quente」に入った。一見怖そうだけど、優しいおじさんだった。

おいしそうなエッグタルト

ツナと卵のバゲッドのサンドイッチ5.5ユーロ、エッグタルト1.5ユーロと良心的な価格。それでも「7ユーロだから700円ちょっとかな?」なんて昔の感覚でいると痛い目に遭う。7ユーロは1134円なのだ。

ツナと卵のサンドイッチ

店内で食べていると、続々とお客さんがやってくる。このエリアはガイドブックの地図からも外れた場所だから、地元の人が多い。二十歳くらいの男の子が、長いバゲットを買って片手で持って帰る光景に、フランスに来たんだなあとしみじみ思った。こういう店が好きだ。

宿近くのパン屋さん「Boulangerie Pao Quente」

最後に、本で習った通り「Un Cafe シルヴプレ」とカッコつけて、小さなエスプレッソを1.4ユーロでもらった。玉村さん曰く、これを日本で例えるなら、「コーヒーをください」と言うところを「ホットで」と注文する感覚みたいだ。日本ではアメリカーノやドリップコーヒーが最もベーシックなコーヒーだが、フランスの一般的なカフェでは、定番コーヒーと言えば小さなエスプレッソを指すようだ。

「Un Cafe」ことエスプレッソ。とても小さい

駅前のスーパー「Franprix」にて、水2リットルとポテチを買う。1.2ユーロと1.1ユーロ。

宿へ戻る途中のバーでは、サッカー・チャンピオンズリーグのレアル・ソシエダ対ベンフィカの試合を大きなスクリーンで生放送していて、久保建英が活躍していた。残り時間もわずかだったから店外から数分眺めていただけだが、現地時間で欧州サッカーを観られるってやっぱりいいな。

夜は眠気に耐えられず、シャワーも浴びず22時半にベッドに倒れ込んだ。

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