ライター視点で感じるChatGPT(GPT-4)の驚異的なすごさ
話題のChatGPTを有料プランで使い始めた。ライターがどう活用できそうか、という観点でさまざまな発見があったので書いてみたい。
そもそも、ChatGPTとは何か? 簡単に言えば、質問を投げかけると、AIが即座に回答(記述)してくれるものだ。
より正確には、「入力」に対して「出力」がなされる仕組みなので、質問形式でなくてもいい。仕事を命令すれば、嫌な顔ひとつせずこなしてくれるし、何かエピソードを話せば、感想や追加情報を言ってくれる。
確かにすごいのだが、ぼくは当初、このChatGPTの実力をあまり信用していなかった。初めて目にしたのは昨年末のことだった。その後もTwitterで見かける頻度は増えてきたものの、いささか正確性に欠ける回答の画像も流れていたし、ライターにとってはまだまだ実用レベルには達していないだろう、と感じていた。だから、わざわざ試してみようとも思わなかった。
ChatGPTに課金したきっかけ
自分のなかで(あるいは世間的にも)大きく潮目が変わったのは、言語モデルシステムの最新バージョンである「GPT-4」が発表された3月15日あたりからだ。「え、もう新しい言語モデルが出たの?」とアップデートの速さにまず驚いた。おまけに、ライティング性能が大幅に進歩しているらしい。
この頃から、気になって色々と調べるようになった。その際見つけたChatGPTの学習方法の資料も興味深かった。
専門的な技術についてはよくわからないが、ぼくが想像していたよりも遥かにすごいスピードで進化していること、そして恐ろしい可能性を秘めていることは読み取れた。
ChatGPTは、GPT-3.5のバージョンであれば無料で利用できる。しかし、ライティング能力がより進化したGPT-4を使うためには、「ChatGPT Plus」という有料プラン(月20ドル)に加入する必要がある。
ぼくは、どうしてもGPT-4を試してみたかった。なぜか? 決定的だったのが、Twitterで流れてきたこの画像を目にしたことだった(※見づらいと思うので、画像の下に文章を載せました)。
マジか、、、と思った。ただお題に沿って文章を書いてくれるだけではなく、事前に文章上の「ルール」を与えると、それに従ってくれるというのだ。普段SEO記事を書いている方はとりわけ驚くだろうし、仕事が奪われる恐怖に襲われてもおかしくない。生身のライターであれば、ルールが多ければ多いほど、意識することが増えて大変になる。そもそもルールのリストを読むだけでも面倒だ。しかしAIの能力からすれば、この程度の処理はなんでもないのだろう。
何よりも驚いたのは、プログラミング言語で指示されたわけでもない「日本語の自由形式で書かれたルール」を、ちゃんと理解して実行している点だった。ここまで進歩しているのか。
「でもこれはまだ、可能性のほんの一端に過ぎないのだろう」
2010年に初めてTwitterにふれたときのワクワク感と似ていた。仕事につながるかどうか以前に、純粋な好奇心から、ライターとしてChatGPTをどう活用できるか、色々と可能性を模索したくなった。
使ってみての発見や気付き
実際に使い始めると、とにかくおもしろくて、時間があっという間に過ぎてしまう。話せばキリがないが、すごい性能である。さまざまな発見があった。
まず、生成される文章は、文法的に間違いがなく、ほとんど違和感のない自然なテキストになっている。
そのうえで、「300字で」「1000字で」などの字数制限に対応してくれるのがすごい。あるいは、1000字の原稿を貼り付けて、「これを500字に要約して」と言えば、やってくれる。もちろん、チェックや修正は必要だが、かなり精度は良い。文章の土台として十分使える。生身のライターは苦労して字数を調整するのに、驚くべきことだ。
また、「量子力学について概要を説明して」の代わりに、「量子力学について、小学生でもわかるように概要を説明して」と頼めば、語彙や言葉遣いに変化が生まれ、実際にわかりやすくなる。ぼくは中国の古典『三国志』や『水滸伝』についても概要を尋ねたが、非常に理解しやすく、作品の魅力や傑作とされている理由についても教えてくれた。
「村上春樹風に教えて」や「ニーチェになりきって説明して」など、人格を付与することも可能だ。〈なぜ警察はヤクザを逮捕できないの? 村上春樹の文体で教えて〉と尋ねたら、回答の一部に「そこには、証拠の不足という見えない壁が存在し、ヤクザたちはまるで影のようにすり抜けていく。彼らの情報は、闇の中で行き交い、警察には捉えられない」という箇所があった。比喩のレベルはまだ低いかもしれないが、村上春樹風に書いていることは伝わってくるし、ぼくを驚かせるには十分過ぎる回答だった。
ライター視点でのChatGPTのケース別活用法
それぞれのケースで、ChatGPTがどうライティングに役立つのか紹介する。まだ数日さわった程度なので、ここに挙げることはほんの一例だと思ってほしい。
1. SEOライティング
適切なキーワードを組み込んだ記事を作成できるのはもちろん、検索キーワードを与えれば関連キーワードの洗い出しや、メタディスクリプションの作成、記事の構成(見出しの作成)など、付随することをChatGPTが手伝ってくれる。例えば、
と入力すると、以下のような返答があった。
今回はざっくりとした注文だったが、こちらから具体的なタイトルや見出しを指定すれば、さらに目的に適ったSEO記事に近づくだろう。少なくとも、吐き出された文章は叩き台として使えるはずだ。
現時点では、最もインパクトの大きいChatGPTの活用ケースはSEOライティングなのではないかなと思う。Twitterを眺めているだけでも、かなり進んだ使い方をたびたび見かける。
おそらく、これまでクラウドソーシングで外注していたSEOサイトの編集者たちは、ChatGPTの効率的な活用に本格的に乗り出していることだろう。あるいは、引き続き外部ライターを頼りつつも、制作フローにChatGPTの利用が入り込んでくるのではないかと思う。いずれにせよ、WebライターにとってChatGPTの存在は無視できないところまで進んできている。
2. インタビュー記事
GPT-4が出てくるまでは、SEO記事は書けても、インタビュー記事の仕事がAIに侵食されることはないだろうと思っていた。もちろんまだ、「取材音源を渡せば勝手に記事を書いてくれる」などという、そこまでの進展はない。しかし、取材前後の各行程で、AIの力を借りると便利になるのかな、と感じることは多い。
まず取材前の準備でインタビュイーへの質問を考える際、いくらか情報を与えれば、ChatGPTが質問を提案してくれる。
これも、具体例を見てもらった方がいいと思う。以下のように尋ねた。
それに対する回答がこれ。
全部をそのまま聞かないにしても、質問のヒントとしてはかなり良い。さらに、追加でこんな質問をした。
すると、
・・・優秀過ぎない?
また、取材後には、たとえば箇条書きのメモをもとに、ざっくりと記事の構成や見出しを作ってもらう、などのことはできそうだ。原稿を書いたら、誤字脱字や文法的なチェックもしてくれる。
今は音声認識AIも進化しているきているから、どこかのタイミングで、ChatGPTとドッキングするのではないか。もしそうなれば、先ほど書いたように、「取材音源と構成案を渡したら、自動でそこそこのインタビュー記事を書いてくれる」という未来も見えてくる。おまけに字数の指定までできるのだから、生身のライターにとってはたまったものではない。
3. エッセイ(noteやブログの記事など)
noteのやブログを書く際にもChatGPTは役立つ。実はこの記事も、ChatGPTに構成を協力してもらっている。ぼくが投げかけた依頼は、下記のようなものだ。
これに対して、ChatGPTからの返答は以下のようなものだった。
もちろん細かな部分は修正しているし、書きながら内容はどんどん膨らんでいったが、ものの数分でこんな具合に良い感じの叩き台を作ってくれるのだから、執筆も進めやすくなる。
4. 小説
一般的な「ライター」とは少し系統が異なるが、ChatGPTの登場により、試しに小説を書いてみる人が増えるのではないかと予想している。小説の書き方がわからなくても、AIが良きアシスタントとなってくれるからだ。
例えば、こんな投げかけをした。
すると、
え??? 適当に振った割に、かなりまともな筋書きなんだけど。
とくに、「信久は和菓子職人としての技を活かし、旅先で出会った人々に日本の伝統菓子を作って楽しませる。各地で出会う文化や風習に触れ、信久は新しい発見を重ね、自らの技術や感性に磨きをかけていく。また、彼はその土地ならではの素材を使ったオリジナルの和菓子を生み出し、地元の人々に喜んでもらう」という箇所がリアリティを感じるし、このアイデアだけでも良いインスピレーションをもらえる。
言わずもがな、キャラクター設定やさらに細かな筋書きの相談にも乗ってくれるし、雑談しながら作品のアイデアを膨らませることもできる。また、書いた小説に対してフィードバックをもらうこともできるようだ。
下記のツイートにも頷ける。AIの発展により、小説のコンテストは今後どうなってしまうのだろうか(小説に限らずだけど)。
ChatGPTをうまく活用できる人とできない人の差
ざっくり紹介してきた情報だけでも、ChatGPTのヤバさはなんとなく伝わったのではないかと思う。ぼく自身、3月20日に初めてChatGPTを使ったので、今紹介したのはここ3日間のインプットに過ぎない。逆に言えば、まだまだ未知のスゴさが山のように眠っているのだろう。
また、使ってみて強く実感したことは、ChatGPTからより有益な回答を引き出すためには、質問の質が問われるということだ。何らかの命令をする場合も、ざっくりとした依頼では的外れな仕事も起き得るが、目的や条件を具体的に提示して依頼をすれば、かなり精度の高い仕事をしてくれる。
ということは、ChatGPTをはじめとするAI技術が今後仕事や生活に浸透してくるとすれば、質問や依頼をひっくるめた「AIとのコミュニケーション力」は必須のスキルとなってくるだろう。多言語翻訳やプログラミングすらAIが代わりにやってくれるのだから、もはや英語やプログラミングよりも、その重要性は高まってくるのではないかと感じている。
で、この「AIとのコミュニケーション力」について指摘している人がいないかなと調べていると、深津貴之さんがわかりやすく解説してくれていた。このnoteは必読モノ。(「プロンプト」という言葉は聞きなれなかったが、これはAIへの命令文/質問文を意味する)
澤山モッツァレラさんの指摘も的確だと思う。
情報はいくらでもAIが持っているし、整理する能力もある。しかし、AIから的確な情報や仕事を引き出すためには、「聞き方」や「頼み方」が重要になる。だから、使いこなすためには結局人間の能力が必要となる。Google全盛期は「検索力」が求められたが、これからのAI時代は「プロンプト・コミュニケーション力」的なものが求められそう。当然、ライターにとっても重要なスキルになるだろう。
ChatGPTの登場による今後の変化
もちろんAI抜きで、これまで通りの働き方をしていても、変わらず良いアウトプットは出せるだろう。しかし、この優れた技術にふれてみると、うまく活用していくのがいいだろうなと感じる。ChatGPTの登場によって、ライターの仕事はさらに効率化されていくし、新しい表現方法が生まれる可能性もある。
また、ライターはひとりきりで作業することがほとんどだから、「話し相手がいる」という点も気持ち的にプラスになる。月20ドルのアシスタントとしては、十分過ぎる働きぶりではないだろうか。
引き続き、ライティングやその他の仕事にどんな活用が考えられるか模索していきたい。
最後に:AIと人間の違い
ChatGPTは恐ろしくすごい。一方で、どんなにAIが進歩しようと、「人間ならではの価値」も間違いなくあるので、最後に書いておきたい。
ぼくがこのnoteを書いたのは、「ChatGPTから受けた衝撃」がもとになっている。AIには高い文章能力があるが、この「動機に基づく行動」は人間的なもので、AIには真似できないことだろう。
AIと人間の大きな違いは、心の有無だ。AIはビックリしない。衝撃を受けないから、行動につながることはない。しかし人間には心があり、衝撃を受ける。喜怒哀楽の感情がある。好奇心もある。そしてこれらの感情が動機となって、「文章を書く」という行動につながっていく。
だから、もし「このnoteを読んで良かった」という人がいたとしたら、それはこの記事が「AIには出せない価値を出せた」ことを意味する。AIが社会や生活のいたるところに浸透するのは避けられない流れだろうから、自分に合ったやり方で取り入れていけばいいと思う。生身のライターは、テクノロジーをうまく活用しながらも、己の心という武器を忘れてはいけない。文章の読み手は、これからも変わらず人間なのだから。人の心を動かす文章は、まだまだ人間に分があるはずだ。
この記事が参加している募集
お読みいただきありがとうございます! 記事のシェアやサポートをしていただけたら嬉しいです! 執筆時のスタバ代に使わせていただきます。