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高松の旅(2)男木島・女木島でアート巡り

せっかく高松に来たのだから、瀬戸内の島へも行きたい。しかしメジャーな直島、豊島、小豆島は既に行ったことがある。他にどんな島があるのか調べるなかで、男木島(おぎじま)と女木島(めぎじま)を見つけた。対になっている2つの島は、高松→女木島→男木島、男木島→女木島→高松というルートでフェリーが運行されており、日帰りで両方回れる。

どんな島なのかはよくわからないが、何かしらアートがあるのだろう。フェリーの時刻表以外は特に下調べもせず、ふらっと訪ねることにした。

朝7時半にホテルを出て、バスで高松築港へ。8時のフェリーでまず男木島を目指した。港にはいろいろな島から高松港に着くサラリーマンの姿が見えた。この土地ならではの生活を感じる。

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40分で男木島に到着。島に着けばアート情報がわかるだろう、と思っていたのだが、今は「瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)」のオフ期間のため、人はほとんどおらず、フェリーのチケット売り場へ行っても良い情報は得られなかった。

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ちなみに瀬戸芸は3年に一度開催されていて、今年がその年だ。瀬戸内の島々に様々な新作アートが並ぶ。会期は3つに分かれ、春は4月14日〜5月18日、夏は8月5日〜9月4日、秋は9月29日〜11月6日となっている。3年前は外国人観光客もかなり多かったそうだが、今年はコロナの影響で例年よりは少なくなるだろう。実際、春の期間の直島の来場客数は例年の半分程度だったとさっきテレビでやっていた。

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残念ながら今日は、屋内の展示はほとんど休館で、無料の野外アートしか見られない。まあオフ期間中なのはわかっていたので仕方ない。その分観光客はほとんどいないし、静かに島を巡れる。

港の近くで、ネームプレートを首から下げた女性とすれ違ったので、島の職員の方だろうか?と思って呼び止めて話を聞く。するとこの方、瀬戸芸の実行委員会の方で、次のフェリーでやってくる団体にガイドをするため早めに来て待っていたとのこと。親切に10分近くこの島のどこにどんな野外アートが展示されているのか教えてくれた。

次の女木島行きのフェリーは2時間後。それまでぶらぶら散策する。

カラフルな壁のアート。

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素敵なカーブがあった。

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『歩く方舟』という作品。これはとても良い。

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神社の猫と仲良くなった。

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11時のフェリーに乗り、20分で女木島に到着。しかしあろうことか、下船時間がわずかしかないことを忘れて、うっかりフェリーを降り損ねてしまった。「まだ他の乗客も乗ってるし、彼らが動いたらぼくも行こう」と悠長に構えていたのだが、そもそも彼らはここで降りず高松へ向かうのだと気付いた頃には時既に遅し。

「うわ、やっちまった」と思って出口に降りていくと、案の定、下船のためのタラップは外され、わずか10メートル程度ではあるがもう船は高松港に向けて動き始めていた。

「これはもうダメだ。。。女木島は諦めるしか」

しかし、ぼくの慌てた顔を見た船員さんが即座にトランシーバーで船長に連絡を取って、なんと船をまた港に引き戻してくれた。わずか10メートルとはいえ、一度出てしまったものなので迷惑をかけてしまった。すみませんでした、とお詫びをし下船。フェリーは2時間に1本だから、助かった。

しかし、親切だなと思った。もし東京で同じ状況になっても、戻ってくれない気がする。東京でフェリーに乗ったことがないからわからないけど。

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そういえば、朝も少し驚いたことがあった。ホテルの近くに港行きのバス停があるはずなのだが、地図上で示された場所に行ってもバス乗り場を示す標識が何もなく、困惑していた。

「やばい、あと2分でバスが着ちゃうのに、どこで待っていればいいんだ?ここじゃないのか?」

焦ってバス停があるはずの場所から100メートルくらい移動した曲がり角で、自分が乗りたいバスと鉢合わせした。でもバスはただ信号で止まっているだけで、もちろんここはバス停ではない。ぼくは運転手さんにジェスチャーで「バス停はどこですか?」と伝えたら、ドアを開けてくれて、「もう青になりますんで、乗ってください」と言われた。「え、いいんですか?」と驚きながらバスに乗せてもらった。

運転手さんは親切だった。フェリーでもバスでも、乗客の反応も含めて、時間の流れがゆったりしていて穏やかな印象を受けた。誰もピリついていないし、寛容さが感じられる。土地柄なのかもしれない。

※追記:翌日もう一度見に行ったら、バス停の標識は見つかった。「消火栓」の標識とそっくりでぼくが見間違いをしていた。

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さて、女木島は「鬼ヶ島」とも言われている。あの桃太郎の物語の中で、鬼が住んでいたとされる島だからだ。いちばんの観光スポットは、鬼もいる「大洞窟」。けれど島の中心部にある洞窟まで行くと結構時間がかかりそうだったので、今回は諦めた。2時間後のフェリーで高松に戻ることにし、港近辺のアートを見て、お昼を食べた。

鬼の灯台

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ソーシャルディスタンスを守っている。

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モアイがあった。

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イースター島のアフ・トンガリキの模型だが、これに関してはぼくは添乗員時代、本物を見ている。

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ピアノであり、船でもある。

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砂浜が綺麗。

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お昼は「鬼ヶ島倶楽部」というカフェへ。最近できたお店ということで、島に移住してきた若い夫婦がやっているのかなと勝手に想像していたが、「いらっしゃいませ」という声は渋く、目の前に立っていたのは60代くらいのお父さんだった。焼肉定食を頼んだ。

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玉ねぎは女木島産。お惣菜が豊富だし、どれも丁寧に作られていておいしい。食材へのこだわりも感じられた。ご飯はお代わりした。これで1000円とは素晴らしい。梅の酵素ジュースもいただいた。料理を作っている奥様は、調理師として料理コンクールで全国何位に入ったとか。

小窓から入る風がとにかく心地良く、いつまでもいたい空間だった。13時20分のフェリーに乗り、14時頃にホテル到着。近くのスタバで涼みながら日記を書いていた。

ところで昨夜、こんなツイートがあった。

高松にぼくのことを知ってくれている方がいて嬉しい。このツイートで紹介されていた「な夕書」という古書店が気になり調べてみると、最近ある記事で話題になっていた。

何やらユニークな店主のいる有名なお店のようだ。すると、店主の藤井さんから、「中村さん!島帰りの後はお気軽に当店までお越しくださいませ!!」とツイートをいただいたので、夕方訪ねてみた。

上の記事にもあるように、本来は「完全予約制」のお店なのだが、時々誰でも入れる時間帯を設けているらしく、それがちょうど今日の夕方だったのだ。こういうタイミングが良いのもご縁だ。

お店に入るといきなり階段がある。二階に上がると、藤井さんの他にお客さんが数名ほど。タバコを吸い、ビールを飲んで談笑していた。なんだここは(笑)すると、「中村さん!」と挨拶してくださった方がいて、どなたかと思ったら昨夜のツイートをしてくれた猪野さんだった。まさかここでお会いするとは。すごい繋がり方だ。そしてなぜかカバンから缶ビールを取り出し、ぼくに手渡してくれた。「ここはそういうお店です」「???」

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ビールを飲みながら皆さんと雑談しつつ、店内を歩いて本を眺めた。ボブ・グリーンの『チーズバーガーズ』があった。渋い。これは昨年ノンフィクション作家の小松成美さんから「中村さんはこの本を読むと何かヒントになるかもしれないわね〜」と帝国ホテルのラウンジで直接勧められたエッセイ本である。(そういえばあの本買ったまま半分くらいしか読めていなかった。読まなきゃ)

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「藤井さんは、ここで売っている本は全部読まれたんですか?」
「だいたい読みましたね〜」
「(すごい・・・)」

せっかくなので何か一冊買おうと思い、村上春樹の旅行記『辺境・近境』を購入。藤井さんは適度に雑談に加わりつつ、机に座って何かメモを取っていた。それで先ほど読んだこの古書店についての記事を思い出した。

「藤井さんは客が買い物をすると、誰が何を買ったのか丁寧にメモを取っていた。これをもとに、次回その人が来店するときは、その人が好きそうな本を倉庫から取り出すのだという」

この地道な努力は本当にすごいことだと思った。ぼくにも様々な質問を投げかけ、何かアドバイスできることがあれば積極的にしてくださる。そしてそういう会話のやりとりで印象に残ったことも、もしかしたらメモしているのかもしれない。わからないけど。

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夜はサッカー日本代表の試合をテレビで観て、終わってから「手打ちうどん 鶴丸」で名物のカレーうどんを食べた。今日も出会いに恵まれ良い一日だった。

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