フランスの旅(6)再びパリへ。そして決断
ランスからパリへ戻る日。8時過ぎに起きて、朝食を取る。食パンとフルーツジュース。その後9時半まで原稿作業。
10時にティエリさんの家から近い「フジタの礼拝堂」を訪ねるも、閉まっていた。看板をよく見ると、今はシーズン外で、9月30日以降は休業になるそう。
ここは日本人画家の藤田嗣治(のちにフランスに帰化し、レオナール・フジタと名乗った)が手がけた礼拝堂で、内部には彼の最晩年の壁画やフレスコ画が描かれている。
生で見たかったけど残念。そしてこれを書きながら、「ランス美術館」にも行けば良かったなと後悔している。さっき友人から聞くまでその存在に気付かなかったから仕方ないのだけど、ランス美術館には藤田嗣治の作品もいくつか展示されていたはずだ。
往復20分の朝の散歩をして、また家で原稿の続き。12時にティエリさんがパスタを作ってくれた。
そして荷造りをして、13時過ぎに家を出た。かなり強い雨が降っていて、スーツケースを引っ張って駅まで30分も歩くのは大変だった。ティエリさんが傘を差してくれてありがたかった。
しかし、この大雨でますますぼくの気持ちは重たくなった。2日後から自転車旅をする予定だからだ。フランスに着いてから、6日連続の雨。そしてこの先一週間も、ずっと雨の予報。11月のフランスは例年雨が多いらしい。もう自転車旅が億劫で仕方なかった。
小雨であればまだいいのだけど、強い雨が続いたら心が折れてしまう。いろいろと観光もしたいのに、移動ばかりに時間と労力を使うのはもったいないのではないか。そんな至極当たり前のことにようやく気付き始めた。
ランス駅のホームに電車が来るまで、ティエリさんは待っていてくれた。そして14時15分発の電車が到着。
「ヨータに会えて良かったよ」
「Me too, ティエリさん。I spent a great time with you. Thank you so much.」
「またフランスか日本で会おう」
「Yes!」
東京でたった10分話しただけのフランス人観光客と、その10年後にフランスで3日間も共に過ごせたなんて、改めて考えても奇跡的なこと。今日は月曜だから、本来ティエリさんは出勤する日。だけどぼくのために休暇を取ってくれた。おかげで、本当に素晴らしい滞在になった。フランスに来て良かった。
線路内に人が立ち入ったとかで、列車は35分ほど出発が遅れた。15時40分、パリ東駅に到着。メトロ7番線で、「Sully - Morland」駅で降り、前回とは異なるゲストハウス「The People Paris Marais」にチェックイン。マレ地区(パリ3区)の端にあり、今度は立地がとても良い。
宿に着いてからパソコンを開き、しばらく悩んだ末に、やっぱり自転車のレンタルをキャンセルすることにした。予約日時の24時間前までなら、キャンセル料は5%で済む。天候を恨みながら自転車旅をしても良いことはないから、また次のチャンスを待とう。残念だけど、引くのも大事な決断だ。
予約していたホテルはそのまま残し、ノルマンディー地方を鉄道とバスで旅することにする。それでもバスの時刻表など、現地に行かないと不確かな面もあって、結構ドキドキする冒険になりそうだ。楽しもう。
明日は洗濯をしたいので、宿から5分歩いたところにあるコインランドリーを下見に訪れた。が、操作方法はフランス語表記しかなく、使い方がいまいちよくわからない。
ネットで訳しながらしばらく機械を眺めていると、洗濯が終わるのを待っていたアジア系男性から声をかけられた。
「使い方を教えようか?」
「ありがとう。教えてほしい」
「まず洗濯機に衣類を入れて、機械の番号をここに入力するんだ。そしたら5ユーロを入れる。乾燥機も同様で、8分1ユーロ」
「わかった!ありがとう!」
「Where are you from?」
「Japan」
「おー、私は韓国人です。でも生まれは日本です。父が日本人だから」
そんな広島生まれの韓国人、キムくんが親切に助けてくれた。
スーパーの「フランプリ」で、いろいろ買う。まず、水。どうも数日前からお腹の調子があまり良くない。「もしかして慣れない硬水のせいなのでは?」という予感がしたので、カルシウム含有量を入念にチェックし、日本で飲むのと変わらないような軟水を買った。Volcania。これは安心してごくごく飲めて生き返る。
それから、シャンプー。日本から持ってくるのを忘れてしまった。どれがシャンプーでどれがボディーソープなのかわかりづらく、一応近くにいたお客さんの女性に尋ねて教えてもらった。「このブロックがシャンプー、このブロックがカラダ用よ」
おやつにクッキーとドリトスを買った。クッキーは、ちょうど女の子が手に取っていたチョコチップクッキー。ドリトスは日本で売っていないチリ味。どちらもおいしかった。特にドリトス、ハマる味。
スーパーでの買い物は、生活者の気分を味わえて楽しい。
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