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講演のための思考メモ(21)自己投資の思わぬ展開

2017年4月〜7月のアメリカ留学&縦断自転車旅を終えて、ライターとしての状況はどう変化していったか。

まず、アメリカ滞在中に、「TABI LABO」の編集者さんから「うちで連載を書きませんか?」とお声がけいただき、旅にまつわるエッセイを書くようになった。何度か記事がバズり、ライターとしての知名度が上がるきっかけとなった。

TABI LABOで書いて、最も反響の大きかった記事

ここでの実績が、のちに他メディアからの仕事を引き寄せてくれた。自己投資で行った「クラフトビール 東海道五十三注ぎ」の旅もTABI LABOで連載を書いたほか、さらに思わぬ展開を見せた。

ある日、見知らぬアメリカ人から英語でこんなメールが届いた。

「こんにちは! 私は今年の秋、日本の様々な土地のクラフトビールを味わいながら、自転車で旅する計画を立てています。そこで、いくつかアドバイスをもらえないでしょうか? あなたが東京から大阪まで歩いたのと、同じようなルートで旅しようと計画しています」

送り主は、ジョージア州在住のダン・ミーゾゥさん(当時52歳)。彼はこれまで自転車で様々な国を旅してきたらしい。そしてクラフトビールが大好きで、毎回その国のブルワリーを巡りながら走っているのだという。日本を自転車で旅する計画を立てていた時に、彼の奥様(日本人)がたまたまぼくのブログを発見したそうだ。

アメリカ人のダンさん

このメールをもらった瞬間、何か運命のようなものを感じた。

ぼくには、同じルートの自転車旅の経験も、クラフトビール屋さんを巡った経験もある。前職は旅行会社の海外添乗員だったし、語学留学後に英語実践の場を持ちたかった。加えて、いつか外国人と一緒に日本を旅してみたい、と何年も前から思っていたからだ。

「もし迷惑じゃなければ、数日間だけ一緒に同行させてもらえないでしょうか?」

思い切って聞いてみると、承諾してくれた。そして2017年9月、川崎市から静岡市まで、彼と2泊3日の旅をすることになった。

「YOUは何しに日本へ?」のような旅になった

そしてその旅の様子を、後日「朝日新聞デジタル&TRAVEL」で連載することができた。旅の最後には感動的な出来事もあり、良い思い出になっている。

徒歩の旅でできた静岡の仲間が駆けつけてくれた

さらに数年後、その連載を読んだプレジデント社の編集者さんからも連絡があった。

「東海道を旅された話をご執筆いただけないでしょうか。いま新型コロナで暗い話題ばかりですので、楽しく元気になるお話を書いていただきたく、中村様にお願いしたいと思った次第です」

同社が編集する雑誌で、巻頭エッセイを書くことができた。

巻頭エッセイを執筆

これらは2〜3年スパンの話ではあるが、何かおもしろいことをやれば、誰かが見てくれる、いつか実る日がやってくるということを、ぼくに教えてくれた。

韓国、台湾を自転車で旅する

2017年は自己投資の一年と決めて、赤字覚悟で後半戦も駆け抜けることにした。

10月は「ツール・ド・韓国」と題して、ソウル〜江華島〜仁川を回る自転車旅を敢行した。ソウルでは2つのファミリーにお世話になった。いずれも友人が紹介してくれた方々だった。

大学の後輩(韓国出身)のご実家に泊まらせていただいた

仁川観光公社がぼくの旅をサポートしてくださり、現地へ行くとなんとぼくの名前が書かれた横断幕まで用意してくださっていて、翌日の韓国の新聞に載ることになった。

仁川観光公社の方々と
韓国のニュースメディアで旅が紹介される

11月は3週間、台湾に滞在した。

自転車で台湾を一周する

この旅も、きっかけは偶然だった。サンディエゴの語学学校で、ある日クラス替えが行われて、隣に座っていた台湾人の子と友達になった。台湾の人と話すのは初めてで、ぼくは少し興奮していた。「台湾には昔から行きたかったんだ。自転車で一周したい!」と冗談半分で言ったら、笑顔で「いつ来るの?」と聞かれたから、反射的に「今年!」と言ってしまったために、その夜、「発言には責任を取ろう」と半年後の航空券を買ってしまったのだった。

ぼくは自転車で台湾を一周し、この話も全6回で「朝日新聞デジタル&TRAVEL」で連載を書いた。

高雄では、日本語を学ぶ高校生たちに特別授業を行った

ヨーロッパのような街並みの美しさ、アメリカのような大迫力の自然に比べたら、台湾の風景はずっと素朴だったが、人情味溢れる旅で、実に心温まる日々を過ごした。いつの間にか、台湾が大好きになっていた。

12月にはホノルルマラソンにも出場し、フィギュアスケートを引退したばかりの浅田真央さんと並んで完走した。

やりたいことは、やり切った。今思い返しても、2017年ほど精力的に活動できた一年は、社会人になって以降ほかにない。

<2017年の主な出来事>
東京から大阪まで、約600kmを完歩(1月)
ミャンマー、香港へ(3月)
カリフォルニア・サンディエゴ留学(4〜6月)
自転車でアメリカ西海岸縦断の旅「ツール・ド・西海岸」(6〜7月)
アメリカ人Danさんと自転車旅「ツール・ド・クラフトビール」(9月)
韓国自転車旅「ツール・ド・韓国」(10月)
自転車で台湾一周の旅「ツール・ド・台湾」(11月)
ホノルルマラソン完走(12月)

フリーランスになったばかりでバイタリティーに溢れていたし、怖いもの知らずだったということもあるかもしれない。ただし、年収でいえば200〜250万円程度だったと思う。メディアに原稿を書いても、大きく稼ぐことは難しかった。貯金を切り崩しながらの、捨て身のチャレンジだった。その分、経験や実績は増えた。自己投資の回収は、長い目で見ていくしかない。

そして翌2018年は、資金の問題がピークを迎え、最大のピンチが待ち受けているのだった。

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