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紀行文や旅のエッセイを書く作家になりたい

学生時代に自転車旅の日記をブログで書き始め、旅行会社に入社後も、旅行情報誌の編集者・ライターとして世界各地の旅行に関する記事を書いてきた。

400文字程度の短い記事から、4ページものの長いコラムまで色々だったが、くる日もくる日もひたすら書いていたから、会社員時代だけでも500記事以上は書いただろう。ヨーロッパであれば、街並みの写真を見れば街の名前を当てられるようになった。その多くは、まだ行ったこともないのに。

旅の文章を書くのはもちろん楽しくて、飽きることもあまりなかったけど、慣れるにつれて「旅以外の文章も書いてみたい」と思うようになった。

とはいえ旅行会社だから、このまま会社にいても、旅行に関する記事から抜け出すことはできなそうだ。そう思って、2017年にフリーランスになった。

結果、得意の「旅行記事」だけでなく、様々な方へのインタビュー記事も仕事にできたし、企業のPR記事やイベントレポート、導入事例記事なども担当した。クラウドファンディングの企画文章やプレスリリースも書いた。

幅広く経験したおかげで、向き不向きや、仕事の進め方、原稿料のことなど、様々な感覚が掴めてきた。途中、挫折することや悩むことも多かったが、その経験のおかげで今ライターコンサルで多くのライターさんたちに経験を伝えることができている。

ただ、器用に手広くできるようになったのは良いものの、「結局ライターとして何が書きたいの?」と突きつけられると、「うっ」となってしまう。

コンサルの生徒さんたちに「専門性を持ちましょう。『なんでも書けます』は『強みがありません』と言っているのと同じです」と話しながら、その台詞に自分自身もえぐられていた。


それで、じゃあ何で勝負するのがいいかと考えたときに、やっぱり旅の文章がいいのではないか。ぼくは最近、旅行作家になりたいと思っている。

紀行文や旅のエッセイを書く作家になりたい。自分の本も出したい。

先日、テレビ番組のディレクターさんと話していたとき、「中村さんの旅の話って沢木耕太郎の『深夜特急』みたいですよね」と言われて、嬉しかった。

学生時代に旅の文章を書いていたときも、いろんな人から「『深夜特急』みたい」と言われたのだが、当時は沢木耕太郎さんのことも知らなくて、後から作品を読んだときに、自分でも「どこか似ているかもしれない」と感じた。

もちろん、あんなに人を熱狂させた紀行作品は他にないから、似ているなんて沢木さんに失礼だが、ただ、自分は経営者にインタビューしたりするよりも、沢木さんのような文章を書きたいと思った。「元海外添乗員」という経歴もプラスになる。


考えてみれば、これまでに「バズった記事」というのは、いずれも旅にまつわる記事だった。

フリーランスになって半年が経った頃にTABI LABOで書いたベルギーのおばちゃんの記事が反響を呼び、30万PVを超えた。

その後も、フランス人観光客やカザフスタン人観光客とのエピソードを書き、いずれも30万PVを超えた。

また、アメリカ留学中の16歳の中国人とのエピソードや、台湾を自転車で一周中に書いたおじいさんとのエピソードも良い感触を得られた。

いずれも、バズらせようと思って書いた文章ではないから、なおさら向いているんだと思う。

これまでの旅を振り返りつつ、新たな旅も行っていきたい。


先週から、ちゃんと勉強しようと思って、名作と謳われる旅のエッセイを読み漁っている。

フィンランド滞在中のエピソードを綴った片桐はいりさんの『わたしのマトカ』は、とにかくユーモアのセンスが最高。

角田光代さんの『いつも旅のなか』も、ハッとするような気付きを入れてくる。

沢木耕太郎さんの『旅のつばくろ』も、ひとつ3000文字前後の短いエッセイなのに、ちゃんと上質な内容としてまとまっている。

いろんな人の作品を読んでは、感想をメモっている。個性の違いがハッキリと見えてくる。軽くて読みやすいタッチ、硬派な感じ、とにかくちゃんと調査するタイプ、そこは案外適当な人、ひたすら長いもの、簡潔なもの、文体は様々だけど、みんな独特のユーモアがあることでは共通している。

『深夜特急』も改めて読みたいし、その他に以下の本も購入した。

梨木香歩『やがて満ちてくる光の』
梨木香歩『春になったら莓を摘みに』
カレル・チャペック『スペイン旅行記』
ジュール・ヴェルヌ『八十日間世界一周』

たくさん読んで、分析して、改めて他の作家さんたちと比較したなかでの、自分の文体や強みとなるもの、そして「ぼくに書けるユーモアとは何か」を探っていきたい。

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