札幌の旅(2)恵迪寮、スキージャンプ台、依田アナとの夜
「あの〜、中村洋太さんですか?」
それは、1年半ほど前のことだった。東京・蔵前のゲストハウスで仕事をしていたら、若い男性から声をかけられた。
「ぼく、Twitterで中村さんのことフォローさせていただいていて」
「え、ありがとうございます!」
「中村さんのnoteも読みました。実は今日、ここに泊まっているんです」
そんな偶然から声をかけてくれたのは、当時大学4年生だった平井佑樹くん。旅が好きで、コロナさえなければ2021年4月から世界中を旅する予定だったという。将来のことで悩んでいる様子だったので、初対面ながらいろんな話をした。なかでも、ぼくが東海道五十三次を歩いた話をしたら、面白がって聞いてくれたのを覚えている。
それに触発されてかどうかはわからないが、彼は昨年から「徒歩での日本一周旅行」にチャレンジしている。東京を出発し、今は北海道にいる。今日で175日目で、もう2100キロ以上を歩いたそうだ。
そんな彼が昨日、旅の途中で出会ったという北海道大学の学生、小室光大さんを紹介してくれた。ちょうど北海道大学を覗いてみたいと思っていたからありがたかった。しかも小室さんは北大で有名な「恵迪寮(けいてきりょう)」の寮生で、特別に寮内を案内してもらえることになった。ツイてる。
朝9時半、早稲田大学よりも遥かに広い北大キャンパスを歩き、恵迪寮に到着。敷地内には牧場もあった。
寮の中心から6棟が放射線状に伸び、先日訪ねた網走刑務所と同じような形状になっていた。
この寮で暮らすのは約400名の学生。家賃・水道光熱費は合わせて月1.5万円くらいだという。破格だ。壁には寮長選挙や恵迪寮祭のポスターが大量に貼られていた。
彼の部屋や共同のキッチンなども見せてもらった。ポスター、壁の落書き、寮歌、至るところから歴史が感じられた。ここで生活する学生たちの雰囲気を含め、とても良いものを見られた。
小室さんは最後に、大学近くの書店「Seesaw Books」にも連れて行ってくれた。
小さいお店だが選書が素晴らしい。好きな本がたくさんあった。ここで『.doto』という道東エリアのガイドブックを購入した。道東の魅力が詰まった素敵な雑誌だった。
ちょうど小室さんと別れるタイミングで、北海道新聞社に勤める長谷川くんから「お昼どう?」と連絡があった。長谷川くんは(真ん中の)兄の法政大学陸上部時代の同級生。昔実家に泊まりに来たことがあり、ぼくが中学生の頃から親しくさせていただいている。箱根駅伝も2回走ったランナーである。
大通公園で長谷川くんと合流し、「ノースコンチネント」という人気のハンバーグ屋さんへ。ここのハンバーグがとにかくおいしかった(ご馳走様でした!)。
今日の午後もランニングするつもりだと話すと、「天気もいいし、大倉山のスキージャンプ台でも行ってきたら? 札幌の街を一望できるよ」と言うので、迷わず行くことにした。
東西線で大通駅から円山公園駅まで行き、そこから大倉山のジャンプ台まで約3キロを走ることにした。途中、北海道神宮があったのでお参りした。
爽やかで気持ちの良い神社だった。北見でお世話になったすずなちゃんがつい先日、「北海道神宮の六花亭には、その店舗でしか食べられない『判官さま』という焼き餅菓子があります」と教えてくれたのを思い出し、逃さず食べた。うまかった。
思った以上にキツい上り坂を進み、ようやく大倉山ジャンプ台に到着。ここは1972年の札幌冬季五輪で競技場として使われた場所だ。
2011年には高梨沙羅選手(当時14歳)が大倉山で141メートルの大ジャンプを見せ、それが現在も彼女の最高記録になっている。地上307メートルの場所に大倉山展望台があり、リフトで登ることができた。
そこからは札幌市街のパノラマを一望。絶景だった。ジャンプ台は見下ろすだけでも恐ろしいほどの傾斜だった。こんなところからよく飛べるなと思う。
夜は、北海道テレビの依田英将アナウンサーが「さかなとお酒 うぉんたな」というお店でおいしい魚料理をご馳走してくださった。昨日テレビで観ていた方が目の前にいる、というのは不思議な体験だった。依田さんはワセオケ(オーケストラサークル)の2つ上の先輩。ちなみに楽器はヴァイオリン(ぼくはオーボエだった)。
依田さんはアナウンサーになってもう14年目。栃木県の出身なのに、今や札幌生まれの人よりもこの街に詳しい。話を聞いていると、どれだけ札幌や北海道を愛しているかが伝わってくる。仕事で辛くなったこともほとんどないし、今に至るまでずっと楽しいという。よっぽどこの仕事が性分に合っているのだろう。実際、昨日のテレビに映る様子を観ていても、自然体で楽しんでいる様子が感じられた。聞けば小学生の頃からアナウンサーに憧れていたそうだ。
ワセオケ時代の懐かしい思い出、札幌のおいしいお店情報など、いろんな話で盛り上がった。そしてさすが依田さんおすすめのお店だけあり、料理が何もかもおいしかった。ニシンの刺身と味噌柚庵焼き、アンコウの唐揚げ、ホタルイカの酢味噌などは特に絶品だった。
魚料理を満喫したあとは、札幌名物のシメパフェのお店「イニシャル」に連れて行ってくださった。シメパフェは想像を上回るクオリティで、味わえて良かった。2000円前後するのだが、食べる価値はある。
人との出会いと再会により、今日も素晴らしい一日になった。
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