見出し画像

交通事故をなくすためには(3)認知の限界

人は前を向いて運転しているとき、周りの様子は周辺視野で確認している。他の車の動き、歩行者の動き、道路の向き、信号の色、標識、ミラー等、様々なものを見て脳が瞬時に処理している。すさまじい処理能力だ。

それでも人の能力には限界がある。まず、目が前にしか付いていないので、前を向いている間は90度以上横は見えない。そして、車の構造上見えない部分もある。運転席斜め前についている柱(ピラー)の方向と、ミラーで見えない斜め後ろの死角である。

こういう死角に対しては顔を傾けたりして目視で確認する必要があるのだが、ミラーの確認で済ましてしまう人もいて、これが事故につながってしまう。後部座席に荷物を置いていたり、遮光カーテンをしていると振り返っても見えない場合もある。トラックになると死角はさらに増える。(最近はトラックのミラーが増えているらしいが)

また、交差点等で建物が邪魔だったりして安全確認が難しいといったケースもある。ひどい場所は魔の交差点と言われたりして事故が多発している。自治体はミラーを設置したり免許取り立ての時はちゃんと目視で確認するように教育されるので、最初は多くの人が確認しているのかもしれないが、次第に確認しなくなり、確認しなくても多くの場合は事故が起きないので、確認しない癖を続けてしまう。

ではどうすれば100%の視界を担保して、認知ミスを防ぐことができるのだろう?

1, カメラ&モニター

人の視界を補うものとしてミラーがあるが、最近ではデジタルミラーが一部の車に採用され始めている。これはサイドミラーやバックミラーの代わりに、カメラで撮影した映像をモニターに映し出す技術であり、レクサス等一部の車種に搭載され始めている。ミラーよりも視界を広く確保できるため、斜め後ろの死角を大きく減らすことができる。

ピラーについては透過して見えるような技術が存在しているが、車への採用には至っていないようだ。やはりこうした技術を使うと価格が高くなり、結局は売れなくなってしまうというのがあるのかもしれない。今後の低価格化を期待したい。

2. ブラインドスポット車両検知警告

後方の死角が一番危ないのは、高速道路での合流や車線変更の時。スピードが出ているときの衝突は大事故につながる。これを車のセンサーでサポートしてくれる機能がある。ADASの1つで、メーカーによって呼び方は様々あるが、BSW(Blind Spot Warning)などと呼ばれている。後方の死角の車両を検知したら、警告で知らせてくれる機能で、すでに最新の車には標準搭載されている。

3. 自動ブレーキ

認知できずに衝突する直前になると、車のカメラやセンサーで歩行者や自転車を検知して自動でブレーキをかけることができる。衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)と呼ばれ、2021年新型車から義務化されている。そのため今後普及してくれば、死亡事故は大きく減る可能性がある。

実は普及自体はすでにだいぶ進んでいるようである。その理由の一つにNCAP(自動車アセスメント)がある。NCAPではユーザー観点で各自動車メーカーから販売される車の安全性能を評価していて、最大5段階の★で評価される。★が多いほうが安全な車というお墨付きをもらえるので、各メーカーはNCAPで高い評価をもらうために衝突被害軽減ブレーキを導入しているという背景もある。(ここ最近の事故死者数が減少しているのはこのおかげかもしれない)

ただ、あくまで「衝突被害軽減」であって、どんな衝突でも確実に事故が防げるわけではないのと、そもそも急ブレーキをかけて止まること自体が危険(後ろからの追突リスク等)なので、あくまで最終手段であってできればその前に気づいて対応することが望ましい。

まとめると

ここ5年ほどで緊急ブレーキをはじめとする自動車の運転支援技術の搭載が一気に進んでいる。このままの流れで行けば、運転する上での死角やそれによる事故の多くが避けられるようになるだろう。

ただ、自動車はスマートフォンのように頻繁に買い替えるわけではないので、こういった技術が世の中に広く普及するためには10年以上かかると想定される。新車は高いのだが、みんなが新車に乗った方が安全な世の中になるということだ。

また、機能には限界があるので、あくまで人間がしっかり安全確認を行った上で、認知できなかった部分をサポートする目的で使う必要がある。ドライバーが機能に頼り切ってしまい、機能の限界がある部分で逆に事故につながってしまうことは避けたい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?