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怪鳥騒動記(第27話)料亭会談

「君たちも下がっていてくれ」
「でも総理」
「ここでの話は、それぐらい機密レベルのものだ」
 
 総理は平山博士からの連絡を受けたものの、その報告を聞くのにこの場を選んでいます。
 
「お連れ様がお着きになられました」
 
 入って来たのは四人、男が二人、女が二人、
 
「これは小山社長、月夜野副社長。今回は怪鳥対策にお骨折り頂き、感謝しております」
 
 たとえ総理であっても緊張する相手で、その力は総理のクビを余裕で飛ばすと怖れられています。
 
「総理、挨拶はそれぐらいにして本題に入らせて頂きます。平山博士からでは又聞きになるでしょうから、わたしがさせて頂きます」
 
 小山社長の説明を聞きながら村松総理は、
 
「その災いをもたらすエランのアンズー鳥が、あの鳥の正体なんですか」
「ええ、それも特別製と見て宜しいかと」
 
 エランで最大のもので翼開長が二十メートルなら、あれは化物どころではない特別製なのは理解できます。
 
「そのうえ知能も桁外れと仰るのですか」
「それは実績が示しております」
 
 本能だけで動いているのではないのは、もう否定しきれないものがあります、
 
「エランではどうやって」
「最終的な駆除方法は判明しましたが、地球では用いようがありません」
「それはどんな」
「聞かれるだけ無駄ですが・・・」
 
 地球とエランの文化・技術の差としか言いようがなく、
 
「たしかに、地球では使いようのない方法ですな。なにか対処法は」
 
 鳥の能力の高さは呆れるほどのものです。
 
「それでは地球の兵器では」
「あのサイズになりますと蚊に刺される程度も無いかと」
 
 エランが用いたという戦艦主砲級以上のガトリング砲でも、二十メートル級の鳥にも通用しなかったと聞いて愕然たる思いになります。
 
「一万五千年前になりますが、当時でもエランのテクノロジーは地球を桁違いに凌駕しております。時代的には地球で発達している兵器の究極クラスが当時はあったとして良く、それに対する防御機能をフル装備しているぐらいに理解されれば良いかと存じます」
「ではどうなるのですか」
 
 鳥を倒す方法がないとなれば、鳥の自滅を待つしかないと聞かされ、
 
「それでは人類が」
「全滅はしないでしょうが、一割も生き残れば上々かもしれません」
 
 あまりの救いのなさに悔しさが込み上げる村松総理ですが、
 
「核兵器はどうでしょうか」
「当たれば可能性はあります」
「どういうことですか」
 
 米本土襲撃を例に引き、
 
「核兵器に対しては、さすがの鳥も耐えきれないかもしれません。一方でこれにさえ対応していると見て良いかと思います。使われそうになれば飛び去ります」
「それでは米第三艦隊がやられたのは」
「潰せる相手なら、先制攻撃もやるということです」
 
 核を当てるにもミサイルは通用しませんし、爆弾が当たる確率も極度に低いのは総理にもわかります。ロケットならなおさらになります。とにかく相手は空を飛ぶだけでなく、海にも潜れるのです。
 
「なにか、なにか方法はないのかね」
「わたしとて日本人であり、地球人です。今までの時間を無駄に費やしてきた訳ではありません。ディスカルもそうです。エラン人として災いの鳥をもたらした責任から、可能な限りの情報をデーダベースから引き出しております」
 
 限られた情報から、ここまでエランの鳥の知識を引き出せたのは成果ですが、そこに救いがなかったのに暗澹たる思いになるのをどうしようもありません。
 
「総理、エランの情報に対処法が見つからなかったのは遺憾とは存じます。だからと言ってわたしはあきらめる気は毛頭ございません。総理も国民を背負ってらっしゃるのです。お気を強くもたれますように」
「うむ、そうだな。たしかにそうだ。パンドラの箱に残された最後は希望だった」
 
 四人は帰りましたが、総理は庭を眺めながら、
 
「この私が日本の最後の総理になるかもしれんな」

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