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怪鳥騒動記(第3話)鳥の話

「コトリ先輩、なに読んでるのですか」
「メキシコの怪鳥」

 やっぱり好きだものね。

「怪鳥と言うぐらいですから、大きいのですか」
「そりゃ、大きいで」
「ダチョウより大きいとか」

 そしたらニコニコ笑いながら、

「ダチョウもデカいけど、十九世紀ごろまで象鳥っていうのがいたそうや。これがなんと高さが三・五メートル、体重五百キロもあったらしい」

 そんな化け物みたいな鳥が十九世紀までいたとは知らなかった。

「卵が十キロもあったっていうからな」

 そりゃ大きいわ。

「ほいでもメキシコの怪鳥は飛ぶんや」
「飛ぶんですか」
「鳥は飛んでこそ鳥やろ」

 それじゃ、ダチョウの立場がなくなるけど、

「飛べる鳥で大きいと言えば」
「アホウドリやろな。大きさを示す指標は色々別れるけど、翼開長で三・六メートルぐらいになるらしい」

 そりゃ、大きい。

「ワシより大きいのですか」
「ワシもでかいで。コンドルやったら翼開長は三メートルぐらいになる」

 アホウドリにも匹敵しそう。怪鳥って言うぐらいだからもっと大きいんだろうけど、

「どれぐらいですか」
「翼開長が五メートルぐらいあったとなってる」

 そこにユッキー社長が、

「コンドルでも飛んで来たんじゃない」
「ちょっと生息地域と外れるからな」

 コンドルと言えば南米のアンデス山脈だものね。

「いつもの見間違いとか、フェーク・ニュースじゃないですか」
「そうかもしれんけど、そんな鳥がおったらおもしろいやないか」

 この日はこれぐらいだったのですが、

「例のメキシコの怪鳥やけど、目撃譚が増えてるで」

 まだ追っかけてたんだ。

「記事に依るとやな、犬を襲ったそうや」
「犬ですか」

 ユッキー社長が珍しく興味を示し、

「犬は連れ去られたの?」
「そうみたいや」
「だったらコンドルじゃないわね」

 えっ、どうして。

「コンドルは大きいけど、獲物をつかんで飛ぶには適してないのよ」

 そうなんだ。

「ユッキー、それやったらオウギワシの可能性はあるで」
「ハッピー・イーグルも大きいけど翼開長は二メートルぐらいよ。三メートルでも大きすぎるのに五メートルは桁外れすぎるよ」

 どうもメキシコの怪鳥は現地でも相当話題になってるみたいで、パラパラと続報が入って来てコトリ先輩は熱中されてます。

「出た!」
「何が出たのですか」
「写真や写真」

 それにしても、なんと写りの悪い。

「これじゃ、何の鳥かわかりませんね、それにサイズだって比較するものがありませんし」
「そやけど、専門家がコンドルは否定的やと言うとる」

 それはユッキー社長が前に言ってたけど。しばらくは目ぼしい続報もなかったのですが、突然テレビのニュースに。コトリ先輩は釘づけ状態で見てます。ニュースに使われたのは動画で、

「スマホで撮ったもんらしいけど・・・」

 これも映りが悪いのですが、突然大きな鳥が舞い降りて来て、庭に放されていた大きな犬をつかんで飛び去っていきます。

「大きいな。たしかに五メートルぐらいありそうや」
「それにしても派手な鳥ね。全体が緑で腹が赤みたいよ」

 この日はシオリさんも来てたのですが、

「たしかに大きいと思うが、騒ぎに便乗してのCGじゃないのか」
「そうよね、こういう騒ぎになると必ず出るものだし」

 そうなのよね。CGの発達は目覚ましくて、実写との区別は専門家でも難しいって言われてるぐらい。そのせいか、シーペンサーが撮影されたり、ヒマラヤの雪男が出現したり、ネス湖にネッシーが出てきたりの騒ぎがあったけど、あれも後でCGとわかったものね。

 とはいうものの、テレビのニュース映像だけでは、さすがのシオリさんも真贋を区別することは無理で、

「もう少し決定的な映像が欲しいな。その元映像が入手できたら、サキにでも分析させるのだが」

 サキさんはオフィス加納の動画部門のチーフで、最近では映画も撮ってるぐらい。

「シノブちゃん、悪いけど、もっと凄い映像が出てきたら、手に入れてくれないか」

 あちゃ、シオリさんも嫌いじゃないのか。物と保管状態によるけど、手に入れるのは不可能じゃないけど、

「シノブちゃん。わたしもちょっと気になるから、シオリが欲しい映像なり、画像が出てきたら動いてくれる」

 ユッキー社長まで。でもあれよね。こういう騒ぎは便乗とか、逆に暴動騒ぎを誘発する時もあるから、その辺は業務に影響することはあるものね。

「かしこまりました」

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