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怪鳥騒動記(第21話)解読難航

「わかんないね」
「そやなぁ、読み解くカギらしいのは見つかるんだけど、こない歯抜けじゃ、意味わからん」
 
 テーブルの上には二人であれや、これやと解読しようとした残骸が山のように。一方でディスカルはアラがやった鳥退治の全体像の掘り出しに専念中。直接の記録は機密で読めないんだけど、当時の報道や公式発表の断片をかき集めてる感じかな。
 
「ディスカルの集めた記録によれば、アラも最初はそれほど重大視してなかったみたいね」
「そうやな。この手の怪鳥騒ぎは五回目みたいで、その前の四回はそんなに苦労した形跡はなさそうや」
 
 それぐらい戦艦主砲級のガトリング砲の威力は絶大たっだで二人は結論しているよう。
 
「やっぱり大きさに比例するって話はホントみたいね」
「最後のは二十メートルだけど、それ以前のはせいぜい五メートルぐらいやもんな。ラスボスって感じやろか」
 
 だったら今の五十メートル以上は化物とか怪物以上じゃない。
 
「それとあの鳥は賢いし、学習能力も高いとなってるけど、これも大きさ比例の気がする」
「みたいだね。はっきりとは書かれてないけど、最初の方は鳥退治部隊が空振りに終わったり、ほら、これ、逆襲されたって読むべきじゃない」
 
 シノブもだいぶエラン語が読めるようになってきたんだけど、そこには、
 
『対怪鳥作戦は、十分なる効果をあげられず、継続されることになった』
 
 たしかに負けたと読めるもの、
 
「こっちなんか、かなりの被害やったんちゃうか」
 
 そこには、
 
『作戦の立て直しが検討されており、司令官も交代の予定』
 
 壊滅状態で司令官まで戦死したのかもしれない。
 
「でもディスカルも検索の仕方が悪いのか、残っていないのか、わからへん言うとったけど、段々作戦の回数が減って行くんよね」
「戦力集中のためじゃないかしら」
 
 断片的過ぎて動員兵力はわからないんだけど、記録を読んだ印象では戦力集中って感じにも読みにくいのよね。
 
「この詩の解読でもやっとってんやろか」
「でもさぁ、アラに読めたのかなぁ」
「読んだから勝ったと言いたいとこやねんけど」
 
 解読も進んでない訳じゃなくて、とりあえずわかった部分として、
 
『□□の空虚に天啓を施し、心魂を□□すれば□□ならん』
 
 こんな感じだけど、それぐらい歯抜けなのがネック。
 
「それだけやないねん。神韻文はものによったら、二重三重になっとったり、読みだした神韻からさらに読みだすとかあるんよ。これじゃあ、次があっても読めんわ」
「それにね、決まり文句とか、その当時の慣用句とかもあったりするのだけど、千年前じゃ難しいのよ」
 
 だろうけど、
 
「だったら浦島夫妻に協力を求めたら如何でしょうか」
「お願いしたけど断られた」
 
 やっぱり。
 
「ユッキー、最後も謎やな」
「そうなのよね。怪鳥退治に成功した発表みたいなものもあるのだけど、
 
『作戦は終了せり』
 
これだけってなんなのよ」
「エランの習慣かもって思ったけど、やっぱり政治的アピールをやるから、基本は地球と変わらへんってディスカルも言うとったし」
 
 二人で考え込んでしまい。
 
「今はアルゼンチンやな」
「その次はニュージーランドで羊をたらふく食べてからオーストラリアやろ」
「チリにはよるかしら」
「サケは食うかもしれんが、ワインは飲まんやろ」
 
 そういえば東太平洋海戦の後にサケの養殖場を襲ったらしい。
 
「もうちょっと気長にやろ。鳥が日本に来るまで時間があるのがラッキーや」
「そうよね。明日とか来られたら逃げるしかないものね」
 
 ディスカルも鳥を仕留めた時の記録を必死になって探してるけど、たいしたものは出て来ないのよね。
 
「たとえば毒を食べさしたとか」
「それはアルゼンチン軍がやったけど、全然効果なかったで。その直後にアメリカ第三艦隊叩き潰してるぐらいやし」
 
 アラは何をしたんだろう。
 
「でもこれは気になるね」
「なんらかの戦術転換をやってんやろけど」
 
 これはディスカルにしか出来ないけど、怪鳥の出没地域がエランの地図にプロットされたのがあるんだ。
 
「あくまでも印象よ。後になるほど怪鳥の活動範囲が狭くなってる気がしない」
「そうでもないで、ここなんて」
「そりゃそうだけど、あくまでも全体の流れよ」
 
 いずれにしてもこれだけの情報でなんとかしろというのは無理がテンコモリ。マモルも、
 
「村松総理に報告するのが辛いよ」
「でも、ここにヒントがあるのはたしかよ」
「総理もそう言っておられたよ」

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