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怪鳥騒動記(第14話)被害の拡大

 メキシコ軍が壊滅的な被害を受けた後のアメリカの動きが大規模だった。集められるだけの戦力をメキシコ国境沿いから、カリブ海沿岸に集めたんだ。怪鳥がメキシコを食い尽くしたら向かうのは南米か、北米の二択だものね。

 同時にその地区の住民の避難もさせてた。避難って言っても膨大過ぎる数だから、これはこれで混乱を起してるのだけど、
 
「核兵器使う気やろ」
 
 通常兵器が通用しないとなると核が出て来るし、アメリカなら持ってるものね。
 
「その前に通常兵器で応戦するやろけど」
 
 ディスカルに聞く限り怪鳥はレーダーとかへのステルス機能は高そうだけど、さすがにレーダー兵器を無効にしたり、混乱させる能力はなさそう。それでも、鳥に当てるとなれば目視で照準を合わせるぐらいしかないみたい。
 
「カリブ海にはレールガン積んでる巡洋艦もおるで」
 
 もうメキシコはムチャクチャな状態になってるだろうと誰しも思ってるけど、世界の指導者は口にしなくなってる。救援に行きたくても、戦車さえつかんで放り投げられる状態じゃ、軍隊を投入しても死にに行くようなものだもの。
 
「あの鳥が賢いってホンマやな」
 
 それでも鳥はアメリカを襲ったんだけど、なんと低空飛行でアメリカに侵入してNORAD叩き潰しちゃったのよ。NORADも鳥に備えて、ピーターソン空軍基地からシャイアン・マウンテン空軍基地にある地下基地にも機能を分散してたんだけど、一時的には大混乱になったの。行きがけと、帰りがけの駄賃みたいに牛とかを大量に食べて悠然とメキシコに御帰還。
 
「超低空をマッハ〇・七ぐらいで飛んだぐらいの推測なんやてな」
「ただでもエラン開発のステルス性能が高いのに、それをされたら捕捉しようがありません」
 
 鳥の米本土侵入は何度も行われ、そのたびに大きな被害を与えてた。
 
「あれって、もしかして」
「たぶんそうだと思います。鳥にはレーダー波感知能力があると思われます」
 
 いくらステルスでも近づけば捕捉は少しは出来るはずだけど、使えば鳥を呼び寄せるのが米軍もわかったみたい。そこで行われたのがレーダー波によるおびき寄せ作戦。
 
「ホンマ、悪魔みたいなやっちゃ」
 
 鳥は南米に向かっちゃったのよね。コトリ先輩は、米本土はリスクが高そうだから、南米に矛先を向けたんじゃないかって。
 
「ちょっと息継げたけど」
 
 米本土に鳥が侵入したために、米ドルが大暴落。その前のメキシコの時から暴落してたけど、さらに暴落して経済の混乱に輪を掛けてのよね。輸出入にはドル決済が多いから、そっちの方で甚大な被害が出てたんだ。ブラジルには気の毒だけど、鳥の矛先がブラジルならアメリカのドルが持ち直してくれた。
 
「こんな綱渡りみたいなドル相場じゃ、いくらコトリでも凌ぐのが大変すぎる」
 
 それでも大きな損失を出さないように立ち回ってたみたいで、さらに天文学的なドル買いまでやってたのよ。
 
「アメリカには行かんと読んでたのが当たった」
 
 これも推測だけど、アンズー鳥には当時のエラン兵器に対する対策が施されていたで良さそう。それはディスカルからも聞いてるんだけど、コトリ先輩は、
 
「いかにアンズー鳥でも核兵器には勝てへんのやと思う。そやから核兵器の気配を察知する能力も持ってて、潰すか逃げるを選ぶ能力があるんちゃうやろか」
 
 厄介過ぎるとしか言いようがないじゃない。
 
「ブラジルには悪いですが、当分はブラジルで居食いですよね」
「でも大きなってるで」
 
 鳥がブラジルに移った事で南米は大混乱。ブラジルは当然だけど、隣国のアルゼンチンも真っ青。ブラジルが食い尽くされたらアルゼンチンと考えるよね。
 
「オーストラリアもパニックになりつつあるで」
 
 南米が終わったら、向かうとしたらアフリカかオーストラリア。
 
「どうしてオーストラリアですか」
「そりゃオージー・ビーフ狙いやろ」
「ニュージーランドには羊もたくさんいますし」
 
 冗談言ってる場合じゃないんだけど、今のところお手上げ状態だものね。日本も不況の波が押し寄せて、倒産による失業者多発で治安も悪化中。これに対応するために政府は鳥対策緊急関連法案を可決させてる。
 
「日本に来ますかね」
「日本は食い物少ないで」
 
 どうなっちゃうんだろ。

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