伸び盛りの生徒に機会損失させてしまった話 05.06.11
運動会から1週間が過ぎ、忘れたくない悔しさがある。
うちの学校ではいわゆる紅白対抗の運動会が行われ、今年自分は白組に入ることになった。
団長はいわゆるスポーツが得意でリーダーシップも取れ、やんちゃで愛嬌のある男だった。
ただ、本当に勉強をしないタイプの男でもある。
中2の時は反抗期も重なり、やや手を焼いたこともあったが、それでも根は優しい生徒だ。
運動会の練習、予行でも適宜メンバーを集めては鼓舞する気持ちもあり、子供たちは皆彼を慕っていたようだった。
紅白それぞれの横断幕作成では、放課後1人残って横断幕を仕上げ、影の努力まで完璧だった。
運動会では特に熱が入っていた。
彼の働きかけもあり、今年の運動会は2点という僅差であったが白組の勝利に終わった。
結果発表の時は彼も喜びを爆発させた。
うちの学校は規模が大きくは無いため、午前中に運動会が終了し、昼食、片付けという流れになっている。
実は朝の段階で昼食は紅白別れて食べようかと主任の案があったため、その段取りとなった。
白組の部屋ではちょっとした高揚感がありながら、みんなでお弁当を食べ、早く終わった生徒から片付けが始まる時間まで、カードゲームで遊んだり、外でキャッチボールをしたり、各々が自由に過ごしていた。
そして、遅ればせながらこのタイミングで気づいてしまった。
「このまま、ぬるりと白組というコミュニティが解散してしまうのか。」
団長の努力を皆で讃える場を作れなかった。
それは、きっと「いただきます」のその瞬間だったと思う。
団長から一言貰って、その熱い気持ちのままだったら、その次の教員の言葉がストンと入りやすかったはずだ。
白組の皆が頑張れたの紛れもなく彼の努力だったし、その努力を知らない生徒もいたと思う。
そんなことをみんなの前で語って、皆から拍手を貰えたら、きっと彼の中学校生活の弾みになったと思う。
あの空気感は、勝った直後でないと作ることは出来ないし、今から褒めたとしても、響かないだろう。
教員というのは、その場面でどんな言葉をかけてやれるか、そこに神経を研ぎ澄ますことが、何より大事なのではと思う。
それがいわゆる教員の人間力。
行事というのは、そういったチャンスがゴロゴロしている。
そこを見落としてはいけないし、安易に行事を縮小させたりしてはいけないとも思う。