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マネーフォワードは、ペーパーレス・はんこレスの社会を目指し提言します


「Fintech企業の辻さんにはんこをお願いしてしまってすみません」

とある銀行の担当者の方が、申し訳なさそうに僕に言った言葉です。

それを聞いて、こちらこそとても申し訳ない気持ちになりました。銀行関係の書類に、僕が押印を依頼されるのは当然のこと。誰も悪くないのに、気をつかわせてしまい、こちらも何となく悪いなと思ってしまう。

小さい頃から気がつけばはんこは身近にありました。夏休みのラジオ体操で、はんこがたまっていくのはうれしかったし、近所の駄菓子屋さんのスタンプも集めていました。

大人になってからは、はんこの種類が増えました。「ここには実印を、こちらは認印で大丈夫です。この書類には社印が必要です」もう、自分でどの書類にどのはんこを押しているのかさえ、分からなくなってしまう。

はんこって何のためにあるんだろう?

はんこをめぐるルールが変わる

イノベーションは、社会をより便利で豊かなものに変える力を持っています。そして、それをうまく使うには、ルール整備が必要です。車が馬車にとって代わり、交通ルールが作られたように。

はんこには、5000年以上の歴史があるそうです。欧米ではサインが使われるようになりましたが、日本では独自の発展を遂げ、今でもはんこがあらゆる場面で使われています。もめ事や偽造などを防ぐことを目的に使われてきたはんこは、これまでたくさんの人を幸せにしてきたんだろうと思います。

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しかし今、そんなはんこをめぐるルールが、急激に見直されています。緊急事態宣言下において、「押印のために、出社せざるをえない」「テレワークしたくてもできない」と出社を余儀なくされている人が多くいるためです。

私たちも3月から全社でテレワークを実施していますが、法務や総務のメンバーは、定期的に出社しています。このご時世にリスクにさらされながら電車で出社し会社を守ってくれているメンバーには、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

マネーフォワードからの提言

この件については、メルカリさんやGMOさんなどが、はんこの電子化をいち早く表明されました。私たちもこの状況を何とかしたいと思い、政府関係者、経済団体、政治家の方々と毎日のようにディスカッションを重ねています。

そして、その中で見えてきた規制のハードルなどを洗い出し、以下の提言書をつくりました。はんこの役割から今後の対策まで網羅的に解説しているので、ぜひお読みいただけると幸いです。


なぜ提言をするのか

「はんこが理由で出社している人がいる。はんこは良くない慣習だからやめるべきだ」というのは簡単です。批判は誰でもできるからです。また、「社内の手続きではんこをやめます」というのも、IT企業であればそれほどハードルは高くありません。

でも、それだけでは出社している人を減らすことはできません。得意先から紙の契約書や請求書が届けば出社しないといけないし、そもそもこれまで続けてきた押印をやめることに対して不安を抱く人もいると思います。また、はんこ業界で働く方々もいらっしゃいます。

この局面で大切なのは、みんなが安心できる仕組みを整えること。これまでの慣習や制度を深く理解した上で、最適な対応策を提示することだと考えています。

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オープンでフェアな社会をつくりたい

社内のメンバーから「辻さん、はんこの問題になんでそんなに課題意識があるんですか?」と聞かれた時に、起業した頃のことを思い出しました。

僕は、理不尽な格差が好きではありません。お金のことも、知っているか知らないかで大きな格差が生まれてしまう。コロナ関連の助成金や補助金も、いち早く情報にアクセスできるか、正しいアクションが取れるかによって、明暗が分かれてしまいます。「そういう情報格差をテクノロジーによって少しでも減らして、フェアな社会をつくりたい」というのが僕の起業の原点でした。

今回の一連のはんこ問題も同じです。テレワークができる人とそうでない人、ここに環境格差が生まれています。そして、それはテクノロジーで解決できることだと信じています。

今回のコロナ危機を迎えて感じたことは、社会のデジタル化がもっと進んでいれば、ここまで困る会社や人が、もっと少なく済んだのではないかということ。

私たちは、政策をつくったりお金を支給したりすることはできませんが、デジタル化を推進し、社会を前に進めていくために少しでも役に立つことが使命だと考えています。

また、こういった提言や社内のさまざまなノウハウをオープンにしていくことで、少しでも社会に貢献していきたいと思っています。

コロナショックは長引きそうですが、出来る事から少しずつ。この危機を乗り越え、より良い社会をつくっていくために、みんなの知恵と力を合わせていければいいなと思っています。

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