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映画「レミングたち」の覚書 | #17 東凌太郎

「レミングたち」で整音をしてくれた東凌太郎くんとは、実はまだ5年ほど前に1度きりしか会ったことがありません。助監督・渡邉の古くからの友、というだけでこの作品のために尽力していただきました。本当に感謝しているのですが、僕から彼のことについて書いても表面だけの薄っぺらいものになると思い、渡邉に代筆をお願いしました。

東凌太郎について・寄稿 渡邉聡しるす

角洋介監督作品「レミングたち」にて、助監督ほかを務めました渡邉聡と申します。本作の完成に尽力したスタッフのひとり、東凌太郎について執筆させていただくことになりました。

東凌太郎と僕は、友人であるよりまず、生涯のライバルなのであります。

奴とは、小学校1年生のときに出会いました。
出会いは、正直、よく覚えていません。
ただ、入学してすぐの保護者会から帰ってきた母が、妙に興奮した様子で報告してきたことを鮮明に覚えております。

「聡くんよりゴジラが好きな子がおる!」

そんなことあろうはずが、ありません。
小学1年生時点において、僕は自分がこの世でいちばんのゴジラファンだと自負しておりました。

母によると、「その子は『どうしても某vsゴジラ作品のビデオを購入したい』とその子の母親にせがむので、その子の母親が東宝に電話してビデオを取り寄せたらしい」のだとか。

なにくそ!こちとらvsゴジラなんて地上波の録画で全てコンプリートしているぜ。
※当時怖くて正視できなかった「vsビオランテ」を除く。

果たして奴は本当にゴジラファンでした。しかも僕が持っていない、ファミコン版ゴジラやら、ゴジラの巨大ぬいぐるみやら、(今や超プレミア品の)ビオランテのソフビやら、なんでも持っているのでした。
かくして、小学1年生にして、僕と東との戦いが始まりました。

小学1年生のときには既に、僕は「将来はゴジラのカントクになる」と豪語しておりました。東が映画業界を目指したのは、僕のそのような言動が影響したと聞いております。

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小学6年生のとき東との自主制作キャプチャ


そして、20年の月日が流れました。
僕と東はいまだに良きライバルであり、そして共に映画業界の末席で戦い続ける仲間となっています。
僕は特撮美術部や演出部として、東は録音部として戦い続けていました。

「レミングたち」の音響については、僕が最後まで品質の責任を持つという約束のもと、撮影を行いました。しかし自分で調整した音声を聞いて、僕は自分が、所詮音響の素人であることを痛感しました。
とにかく現状では視聴に耐えないと思い、音響の専門家である東に助けを求めました。ライバルである東に、協力を求めました。

「見せ場のシーンだけで良いので、なんとか聞ける音に調整してくれないか」

東は快諾し、あろうことか、全てのシーンの音調整を買って出てくれました。さすがに僕は驚きました。かつての強大なライバルとしての東を、再認識しました。また、心強い人間を仲間に持っていたことを、感謝しました。
ここにも、レミングがいました。

一昨晩深夜、ちょうど本作の音響作業がすべて完了いたしました。僕だけでは、レミングの音響を完成させることは出来ませんでした。
東はとてもシャイな人間なので、本人の意向により劇中でのクレジット表記は控えめですが、彼の本作への貢献度は並々ではないことを、皆様にもご理解いただければ、幸いです。
これからも、良きライバルであり続けられることを切に願っております。

2020年4月15日 渡邉 聡


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