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ふくろうのサングラス 童話本編はこちら!
──大人だからこそ読んでほしい童話──
これがどれほど無謀な飛行かくらい言われなくても分かっていた。お日さまとの闘いであることも、勝ち目などないことも、ましてや生還できる可能性などほとんどないこともそんなことは、はなから分かっていた……。
「死ぬなよ、おっかさん」
ふくろうは、号泣とともに力いっぱい大地を蹴った。
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表紙デザインとタイトル文字は、やはり塾生の『mineko』さん。童話というワードに着目し、いかにも子どもたちが喜びそうなカラフルで温もりのある仕上がりになっていますね。(塾長yossy)
各章の見出しは『ふくろうの』から始まる川柳で出来ていて、目次であると同時にあらすじにもなっています。
第一章
(川柳)
ふくろうの モグラ叩きで 幕が開く
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銀色に輝く半分だけの月に見守られて、森は静かな眠りに就こうとしていた。
リスは木の窪みで丸くなり、アマガエルは葉っぱの裏にはりついて心地良さそうに目を閉じる。
枝に並んだ小鳥たちは、すでにみんな夢のなかだった。
そんななか、入れ替わるようにしてゴソゴソと起き出すものがいた。
そいつは大木の上の洞穴に巣を作り、いつものように寝起きとともに上からいろんなものを放り始めた。
木の枝、葉っぱ、キャベツのかけら、バッタの羽根、干からびたトカゲのしっぽ、乾電池、ひね曲がった針金ハンガー、それに空き缶やペットボトルと手当たり次第に放り投げ、最後にそいつは自分のうんこを放り出すと、やっと巣から顔を出した。
「これでよしっ……と」
ふくろうだった。
「よく眠り、よく食べて……そしてよく出してと」
ふくろうはひとりぶつぶつそう言いながら、なに食わぬ顔で下をのぞいた。
寝床がきれいに片づいた代わりに、木の根元はゴミの山だった。
そんなことなどおかまいなしに、ふくろうはとぼけた表情で真っ暗な森のなかを見渡した。
明かりなんかいらなかった。そのまん丸い便利な目玉には、ちゃんといつもと変わらぬ森の景色が昼間のように映っていたし、ましてや地中からはい出して来た好物のミミズを見つけることなどわけもなかった。
それにその三角形にとがった自慢の耳には遠い先の音まではっきりと届き、落ち葉の上をこっそり歩くうまそうなネズミの足音さえも決して聞き逃すことはない。
ふくろうはまん丸目玉をギョロつかせ、とがった耳をピンと張って辺りの様子をうかがった。
くの字に曲がったクチバシの端からは、ネズミのしっぽがはみ出している。それは昨日の夕食の残り物で、ふくろうはいつもそれをつまようじ代わりにしていた。
と、そのふくろうの耳がピクンとした。
どこか遠くでカサカサと、バッタが枯れ草の上を歩いている。それも二匹。
その音を聞いた途端、ふくろうの腹がグゥ~と鳴った。
「よしっ、めしにするか。まあ、あいつは骨ばっかりであんまり旨くはないけどな」
そうつぶやいたところで、ふと、ふくろうは昨日のことを想い出し、急にまん丸目玉をつり上げた。
「そうだったぜ、あんちくしょうめ」ふくろうは、くわえていたネズミのしっぽをペッと吐き出した。「昨日はまんまと逃げられちまったが、よしっ、今日こそはとっちめてやる。見てろよ、あのモグラのやつめ」
そう言って、二、三度小さく羽ばたくと、首をクルルッ……クルルッ……と震わせた。
そして月に向かって、ホ~ッ……ホ~ッと二鳴きすると、闇に向かって羽ばたいた。
ちょうどそのころ、土のなかでせっせとトンネルを掘るものがいた。
前足のシャベルを左右に動かしては前進し、こぼれ落ちたミミズを口に頬張ってはまた進む。
「いまのうち、いまのうち。またあの妙なやつが来ないうちに、この辺のミミズは全部あたいがいただきさ」
モグラだった。いつも地面の下の暗がりにいるので目を使うことはあまりない。
代わって素晴らしくよく効く鼻と、そしてよく聞こえる耳を持っていた。
それにずんぐりむっくりとした身体ながらもその指先はとても器用ですごいスピードで土を掻き、もはや掻くと言うよりは平泳ぎで泳いでいる、と言ったほうが近かった。
そのスピードで掘っては進み、進んでは堀りするものだから、あっと言う間にそこら中が穴だらけになっていた。
「ヘヘッ、あたいの勝ちだね」モグラは真っ暗な土のなかでひとり勝ち誇った。「それともあのふくろうのやつ、まだ寝てんのかな。よしっ、ちょっと外の様子を見てやろう」
モグラは地上のことが気にかかり、開けた穴からひょっこりと地表に顔を出した。
その時だった。なんの前触れもなく、不意に黒い影が上空から急降下して来てモグラの頭上をかすめて行った。
「フヒャ~ッ」
モグラは穴のなかに転がり落ちた。
間一髪だった。いったい何が起きたのかわけが分からなかったがモグラは恐る恐るもう一度、穴からそっと首だけ突き出した。
見るとその黒い影は音もなく悠然と闇夜を漂い、ほとんど羽ばたきをすることもなくまるで紙飛行機ようにそばの木の枝に舞い降りた。
あいつだっ、昨日のふくろうだ……チッ……やっぱり来やがったね……一瞬、モグラは緊張で身を硬くして首を縮めた。
ふくろうは枝の上で腕組みすると、モグラのことをただじ~っとにらむばかりだったがあたかもその時を待ってでもいたかのように不意に重々しく、そして強い調子で口を開いた。
「ここはおれの森だ。お前のいいようにはさせねえ」
しかし、あまりの言い分にモグラも黙っているわけにはいかなかった。穴から首だけ出したまま、ふくろうに向かってまくし立てた。
「あんたも相変わらず妙なことを言うねえ。昨日はここのミミズはおれのもんだ。そして今日はこの森はおれのもんだ。へえ、いったいいつからあんたの森になったんだい。何年の何月何日何時何分何秒からだい。え? 言えるもんなら言ってみなよ」
「し……しるか、そんなもん」
モグラのあまりの勢いに、ふくろうはそう答えるのがやっとで危うく木から落っこちるところだった。
しかし、すぐに体勢をたて直すとふくろうは肩をちょっと怒らせて、さらに強い口調で言った。
「いいからミミズをそこに全部おいていけ。そしたら今日のところは勘弁してやる」
だがそんなことでひるむモグラでもなかった。
「契約書は?」と言った。
「えっ? け、契約書?」
「そうさ、契約書だよ。そこまで言うんだったらあんた持ってんだろ契約書。いったいだれに許しをもらったって言うのさ。ささ、見せてもらおうじゃないのさ、森の契約書をさ。ささ、出せるもんなら出してごらんよ」
モグラにそうせっ突かれ、ふくろうのまん丸目玉が三角になってきた。
しかしモグラは気にもかけず、平然として付け足した。
「どうせ持っちゃいないんだろ、そんなもん。分けてほしけりゃ素直にそう言やあいいものをさ。まったくあんたもひねくれてるねえ。ほらっ、少し分けてやるよ。手え出しな。でもほんの少しだけだよ。あたいにゃ可愛い子どもが四人もいるんだからね。ほらよっ……持ってきな」
と、モグラはちょこっとだけミミズをつまんでふくろうのほうにさし出した。
ふくろうの顔がみるみる真っ赤になってきた。
「くっそ~なめやがって」
ふくろうは目を三角に吊り上げると両の翼を閉じたまま小刻みにプルプルと震わせた。
そして三角になった目を金色にぎらつかせると、「ええ~い、うるせえ」と声を張り上げ、いきなり暗い空へ飛び上がったかと思うと次の瞬間、モグラめがけて一気に急降下して来た。
「フヒャ~ッ!」
モグラはまたしても穴のなかに転げ落ちた。しかしモグラも負けてはいない。すぐさま別の穴から顔を出した。
と、すかさずふくろうがそこをめがけて急降下。
しかしモグラも首を引っ込めてはまた別の穴から顔を出す。
するとまたしてもふくろうがそこをめがけて急降下。
しかし寸前でモグラはそれをかわし、すぐさま別の穴へ。
ここかと思えば向こう。向こうかと思えばあっち。そんな闘いを二人は延々と繰り広げ、そこら中を穴だらけにしたころ、東の空が白々としてきた。
ふくろうがヨタヨタと先ほどの木の枝にとりついた。そして、ゼイゼイしながら言った。
「……なんで、おれが……ハアハア……こんな明け方まで……ハアハア……モグラ叩きをしなくちゃなんないんだ……ゼイゼイ」
モグラが穴の淵で、やはりゼイゼイしながら言った。
「それはこっちのせりふだよ……ハアハア……なんであたいがあんたなんかに……ハアハア……モグラ叩きをされなくちゃなんないのさ、それも夜どおし……ハアハア……まったくしつこいねえあんたも……ゼイゼイ」
しばらくの間ふくろうは枝の上で、モグラは穴の淵で、それぞれがそれぞれの場所でひっくり返ったまま荒い息だけを弾ませた。
やがてモグラが言った。
「ちょっと、あんた……あたいを食おうとでも考えてんじゃないだろうね」
「へっ、食えるわけねえだろ」ふくろうが言った。「お前ら図体デカすぎんだよ」そして偉そうに鼻でせせら笑い、「ハハ……それにな、食ったところでお前らまずいってもっぱらの噂よ」
それを聞いて、モグラがピョンとはね起きた。
「あんたもういっぺん言ってみな。あたいたちをバカにしたらただじゃおかないからね」
そう怒鳴りつけて、モグラはかたわらの石をひっつかむとふくろうのことをにらみつけた。
「ああ、何度でも言ってやらぁ。お前らのまずさときたら、あのふんころがし以上に……ウギャーッ……」
全部を言い終わる前に、ふくろうは悲鳴とともに落下していた。
モグラが、石を投げつけていたからだった。
みるみるふくろうのおでこがはれあがり、二つの耳の間にこぶができて、まるで耳が三つあるようなぶざまな顔になっていた。
「ふん、いい気味だよ。あんたが悪いんだからね」
モグラは、そう吐き捨てはしたものの、なんだか少し気の毒にも思えてきた。
ヒョイと穴のなかに一旦は姿を消したものの、モグラはすぐにまた顔をのぞかせると、ふくろうに向かってさとすように言った。
「森はあんただけのものじゃないし、ミミズもあんただけのものじゃないよ。そのへん、よく考えてみるこったね」
そして、あとは朝陽に追われるようにいそいそと、モグラは穴のなかに姿を消した。
ひとり取り残されたふくろうは、地べたにしりもちをつくような格好でモグラが消えた穴の辺りをただボ~ッとながめていたが、ふと、おでこに手をやると、ぽつりと言った。
「なんてやろうだ」
そしてヨロヨロと立ち上がり穴の淵に歩み寄ると、なかを用心深くのぞき込み、叫んだ。
「この、ふんころがし~~~~っ」
あとはバタバタと大慌てで羽ばたいて、その場から一刻も早く逃げ出すように森のなかへと飛んで消えた。
第二章
(川柳)
ふくろうの 狡知潜みて ミミズ谷
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翌日、森は朝からどしゃ降りだった。
ふくろうは木の洞穴のなかに閉じこもり、モグラをこの森から閉め出すことそればかりを考えていた。
ぶざまにも頭には耳が三つ、まだはえたままだった。それでもふくろうは、その頭でいろいろと考えを巡らせた。
弱点と言えば、ふくろうもモグラも互いに似たようなものだった。
ともにめっぽう昼間に弱い。夜の闇のなかでは自由自在でも明るいところはからっきしだめだった。
なにしろお天道様が大の苦手ときている。それどころか長い時間そんなところにさらされれば命すら危ない。
ともにお日さまとだけは仲良くなれない運命を背負って生きていた。
一日中降り続く雨のなか、ふくろうはずっと洞穴に閉じこもって、そのことばかりを考えていた。
そして雨も上がり、小鳥たちがいっせいに青空へ向かって羽ばたくころ、ふくろうのこぶのできた頭に一つの妙案が浮かんでいた。
「よしっ、この手でいくか」
ふくろうは、ひとり巣のなかでにやつくと、あとはひたすら夜を待った。
降り続いた雨はどしゃを削り、大地をうねる川となって森の汚れをすっかり洗い流していた。
モグラがあけたデコボコの地面もまた元どおりきれいに整っていた。
ふくろうが洞穴の巣から放り出したゴミくずもきれいさっぱり片付いていた。
太陽は大地を乾かし、昼間を生きる生き物たちにたくさんの光と恵みを与えると、また西の山の向こうに沈んで行った。
「さあ~てと」いつものようにふくろうはいろんなものを上から下へと放り出し、再び森を汚すと最後にまた自分のうんこを放り投げた。「そろそろ行くとすっか」
しばらく飛ぶと、ふくろうの眼下に見慣れたミミズ谷の光景が広がってきた。上空から見たミミズ谷は、まるでアリ地獄のようだった。
ミミズ谷。そこは森の外れにある谷で、丸々とよく肥った超特大級のミミズがたくさん獲れることで広く知られていた。
しかし、いいことだけではない。周囲が石灰岩で固められたすり鉢状になっていて、ツルツルすべすべしている。
ひとたびそこに入り込むと、はい上がることも掘り進むことも難しく、そこからの脱出はまず不可能と言っていい。
空を飛べるもの以外にとっては、まさにアリ地獄のような恐い場所でもあった。
ふくろうの作戦は、ここにモグラを誘い込むことだった。誘い込んでさえしまえばもうこっちのもので、あとは放っておけばよい。
これでもう邪魔ものはいなくなる。この森はおれのものだ。そう考えると自然とふくろうの頬がゆるんだ。
ミミズ谷に舞い降りるとふくろうはより肥えて旨そうなミミズだけを選り集め、ずるい下心をたくさん抱えて再び森へと帰って行った。
その夜、モグラの家に思いもよらぬ客が来た。
ふくろうだった。ふくろうは不器用に笑みを作るとモグラの巣穴をのぞき込み、思いっ切り優しく声をかけた。
「おとなりさ~ん……おとなりさ~ん」
しかし、穴から顔を出したのはモグラの子どもたちだった。
一、二、三、四と四匹のモグラの子どもたちが、なにごとかと興味しんしんに次から次へと顔を出した。
「おっ……おっかさんいるかい?」
ふくろうは、ちょっと面食らいながらもそう訊いた。
「ううん、いないよ」
子どものひとりがそう答え、なにやら笛のようなものをピーと吹いた。
「留守だよ」
と別の子ども。やはり笛をピーと吹いた。
「晩ご飯、これからなんだよ。今夜はミミズのごちそうだよ」
と、さらに別の子ども。この子もやはりピーと吹いた。
「バッタだったら少しあるよ。おじさん食べてく? 骨ばっかりであんまり旨くはないけどね……ピー……」
と、最後のひとりが答え、そしてやはり笛を吹いた。
ちっ……親子そろって食い意地が張ってやがらあ……ふくろうは心のなかでそうつぶやきながら、「いや……いいや、バッタは」と、顔をしかめ、「ところで、それはいったいなんなんだい?」
と、子どもらの口を指さした。
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「これ草笛だよ」
と最初の子ども。
「母さんが作ってくれたんだよ」
と次の子ども。
「母さんは、草笛作りの名人なんだよ」
とまた次の子ども。
「おじさんもやってみる? おもしろいよ」
と最後の子どもがそう言って、またピーとやった。
「いや……おじさんはいいや」ふくろうはちょっといらいらしてきた。「それよりおっかさんどこ行った?」
「おじさんだあれ?」
と一人目の子ども。
「おじさん、母さんのお友だち?」
と二人目。
「おじさん、ぼくたちと遊ぼうよ」
と三人目。
「そうだ。鬼ごっこしようよ。鬼はおじさんだよ」
と四人目の子どもが言った。
「へっ……お、鬼かい? そりゃないよ」
と言いつつも、ふくろうはなんだか自分の心のなかを子どもらに見透かされているような気がして、ちょっとどぎまぎした。
「お、鬼ごっこはまた今度な」
慌ててそう言い放つとふくろうは改めて下手な笑顔を浮かべ、なだめるように子どもらに訊いた。
「なあ、いい子たちだからさぁ、おっかさんどこ行ったか、だれかおじさんに教えてくんないかなあ」
「だって、知らない人と喋っちゃだめって、母さんにいつも言われてるもん」
と一人目。
「怪しい人が訪ねてきても、うちに入れちゃだめっていつも母さんに言われてるもん」
と二人目。
「妙に笑顔でよって来る人ほど気をつけなさいっていつも母さんに言われてるもん」
と三人目。
「知らない人に行き先をきかれても、絶対に言っちゃあだめっていつも母さんに言われてるもん」
と四人目の子どもが答えた。
さすがにふくろうも疲れてきた。しかし……なんでこう、いつもいつも四人が順番に口を開くかな、まったく……と心のなかでぼやいていると、そのふくろうの背中にいきなり金切り声が突き刺さった。
「ちょっとあんた、なにしてんのよ!」
ふくろうは跳ね上がった。
おどおどと後ろを振り返ると、そこには恐い顔をしたモグラの母親が血相変えて立っていた。
「あんた、うちの子どもらにちょっかいかけたら承知しないわよ」
「ちょ、ちょ、ちょっと待った」
慌ててふくろうは、両翼を広げて左右に振った。
「違うんだよ。おわび……そう、おわびを持って来たんだよ」
そう言って、ふくろうは大急ぎで抱えていた包みをさし出した。
「おわび?」
モグラの母親は、顔をしかめてふくろうの顔とその包みとを交互に見比べた。
「そう……ほら、これ」
そう言ってふくろうが包みを広げると、そこにはモグラがこれまでに見たこともないようなよく肥ったミミズがそれも塊のようになってうごめいていた。
「こ……これをあたいにかい?」
モグラがきょとんとしてそう訊くと、ふくろうはだまってうなづいた。
子どもらがふたりを取り囲み、周りで草笛を吹きながらはしゃぎ出した。
モグラの母親がそれを見て、やっと笑顔を作った。そして、しみじみとして言った。
「あんたも……いいところあるんだねえ」
ふくろうは、ちょっと照れくさそうに頭を掻いた。
「いやなに……あんたには教えられたよ。まったくな。この森はおれだけのものじゃないし、ミミズだってそうだ。おれだけのものじゃねえ。なのにおれはどうかしちまってたんだ。あんたに言われて目が覚めたよ。だからこれ……とっといてくれよ」
そう言われると、モグラも悪い気はしなかった。
「でも、こんな立派なミミズ、ホントに全部いいのかい? わが家だけじゃもったいないよ。あんたも半分持って行きなよ」
「いやいや、いいんだ。その気になったらいくらでも手に入る。ミミズ谷に行けばわけないことよ」
「ミミズ谷?」
その言葉に、モグラの母親の目がキラリと輝いた。
ふくろうは、それを見逃さなかった。なに食わぬ表情ながらも調子よくここまで話が進んできたことに安堵しながらひそかに心のなかで喜んだ。
「ずいぶんとまた、おいしそうな名前の谷があるもんだねえ」
「ああ、あそこにいきゃあ、こんなミミズばかりうじゃうじゃよ。やせたミミズを探すほうがよっぽど難しいぜ」
ふくろうのその言葉に、モグラの母親が魅せられたのはもう間違いなかった。
「なあ、あんた、そのミミズ谷ってのは、ここから遠いのかい?」
キラリと目を輝かせたのは、今度はふくろうのほうだった。
「なあに、ひとっ飛びよ。三十分とかからねえ。あ、そうか……」ふくろうは、モグラの母親を上から下まで眺め見て、「あんたの場合だと、そうさなあ……土のなかを、ざっと四、五時間ってとこかな。迷う時間を含めてな」
「四、五時間……」さすがにモグラの母親が顔を曇らせた。「ちょっとあるねえ」
それを横目に悪賢いふくろうは、ふと思いつきでもしたかのように両の翼を大きく打ち鳴らした。
「そうだっ、おれが道案内してやってもいいぜ。そしたら迷わずまっしぐらだ。一時間かそこらで『丸々肥った』ミミズどもとご対面というわけだ。どうだい?」
ふくろうは、『丸々肥った』を強調した。
「え……いいのかい?」
モグラの母親の頭のなかは、もう丸々肥ったミミズのことだけでいっぱいになっていた。
「いまから行けば山ほど獲って、夜明け前には帰って来れるだろう。ちょくちょく穴から顔を出して、上を見てくんなよ」
というわけで、ふたりはさっそく出発した。
モグラは土のなかを、そしてふくろうはそのすぐ上空を、ふたりは力を合わせてミミズ谷をめざした。
モグラは時折、穴から顔を出しては頭上を行くふくろうを見た。
そのたびにふくろうは、あっちこっちと翼で方向を指し示す。
そんなことを何度となく繰り返しながら、やがてふたりはミミズ谷の淵にたどり着いていた。
モグラのすぐ横にふくろうが舞い降りて来た。そしてモグラに向かって下を見ろと言うような仕草をした。
しかし、目の悪いモグラに遠い先のほうなど見えるはずもなかった。しかし目には見えていなくても、そこがどんなところかはよく利く鼻がちゃんと教えてくれていた。
「いい匂いだこと。着いたんだねあんた。ここがそうだね。ミミズ谷だね」
モグラは、鼻をくんくんさせながらそう言った。おいしそうなミミズの匂いが先ほどから強烈にモグラの鼻をくすぐっていた。
「よしっ、じゃあひと足先に行ってるぜ」
そう言うと、ふくろうは大きく翼を広げ谷底に向かってひとっ飛び、まるですべるように降りて行った。
それを追って、モグラも斜面を転がるようにして降りて行った。
ミミズ谷はその名のとおり、まさしくミミズだらけの谷だった。しかもどれもこれもたいそう立派で、モグラがこれまでに食べてきたどんなミミズよりも肥え太っていた。しかもそこら辺の草の根っこにうじゃうじゃいる。
モグラは時折つまみ食いをしながらも、もう夢中で拾い回った。
そうこうしながら一時間ほども経っただろうか、ふと、モグラはふくろうのことが気になった。
考えてみればついミミズ拾いに夢中になって、お礼もまだ言っていなかった。
「お~い」
モグラは、闇に向かって声をかけた。
しかし、なんの返事も返ってこない。
「お~い、あんたどこだ~い」
もう一度呼んでみたが、やはりふくろうからの返事はなかった。
まあ、いいか。きっとどこかその辺でミミズ拾いに大忙しなんだろう。モグラはそう思って、引き続き自分も仕事に熱中した。
子どもらの喜ぶ顔が目に浮かぶようだった。それが嬉しくて、モグラはミミズをいっぱいいっぱい拾い集めた。
そして、携えてきた袋がミミズでぎゅうぎゅうになったころ、改めてモグラはふくろうのことが気になった。
闇に向かって何度も何度も呼びかけた。しかしいくら呼んでもふくろうからの返事はなかった。
いったいふくろうはどうしたんだろう。どこへ消えちゃったんだろう。ひょっとして、ふくろうの身になにか大変なことでもあったんではないだろうか。
モグラはふくろうのことが途端に心配になってきた。 獲るものを獲ってさっさと森にひとり帰ってくれているのであればそれはそれで構わない。むしろそうであってほしいとの思いのほうが今は強い。しかしその可能性は残念ながら皆無なのだ。
帰りも一緒の手筈になっていた。この距離では空からの支援なくしては方向が定まらず、『帰りの道案内もおれに任せときな』と買って出てくれていたふくろうが、勝手にとっととひとり森へ帰るなんてことは、西に沈んだお日さまがまた西から昇ってくるくらいにあり得ないことなのだ。
モグラはミミズ拾いをピタリとやめた。代わって今度はそこら中をはいずり回ってふくろうのことを探し始めた。
ふくろうがどこかで大ケガでもしてうずくまっているんじゃないだろうか、そんなことを考えるとモグラはとてもつらい気持ちになった。
あたいにつきあってくれたばっかりに……そう思うとモグラは胸が痛くなった。
モグラは必死でふくろうを探し回った。その器用な手で草をわけ、土を掘り、闇に向かって叫んではまた地面をはいずり回り、モグラはわれを忘れて探し回った。
しかし時間ばかりがいたずらに流れ、どんなにはいずり回ってみてもふくろうの姿はどこにもなかった。
モグラは額の汗を拭い、困りはてて空を見上げた。
東の空が白々としてきているのが、モグラの目にもぼんやりと分かった。
夜明けが、もうすぐそこまで迫っていた。
第三章
(川柳)
ふくろうの 気づき覚醒 モグラ道
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ふくろうは谷の淵に立っていた。そしてずっと静かに眺めていた。モグラが一晩中自分のことを探してはいずり回っていたのを。
自分のことを呼び、草を分け、土を掘ってはまたすぐに別の穴から顔を出し、そしてまた叫びするのをふくろうは最初からずっとそこで見下ろしていた。
本当は、とっととひとりですぐに森へ逃げ帰るつもりだった。しかしモグラの不可解な行動に、なぜかふくろうはそこから動けなくなっていた。
どうしてあいつ、おれを疑ってないんだろう。おれがわざとお前をこのミミズ谷に誘い込んだのだとなぜ気づかないんだろう。普通わかるだろう、置いてけぼりをくったことぐらい。なのにどうしておれのことを探すんだ? なぜ森に帰ろうとしない? なぜ斜面をはい上がろうとしない? おれはお前をワナにかけたんだぞ。
ふくろうにとって、モグラのとった行動はあまりにも意外でなんとも理解しがたかった。
ふん、まあいいさ。おれの知ったこっちゃねえや。
ふくろうは、どこかほろりとなりそうな気持ちをむりやり心のなかから閉め出すと、音もなく静かに羽ばたいてこっそりと森へ向かった。
そんなこととは夢にも思わずモグラはなおもまだひとり、ふくろうの身を案じていた。
「お~い、あんた~夜が明けちまうよ~」
声をかぎりにモグラは何度も呼んでみた。一晩中呼び続けていたために、モグラの声はすでに枯れていた。
と、いきなり鋭い日の光がモグラの身体をまともに射た。夜が完全に明けてしまい、日の光が容赦なくモグラの全身に浴びせかかった。
モグラは慌てて手で目をおおい、草の陰に身を隠した。しかし、それでもなおそこから逃げ出そうとはしなかった。
もっとも逃げ出そうとしたところで斜面はツルツルの石灰岩におおわれていて、そこをはい上がることなどさすがのトンネル掘りの名人と言えどもそう簡単にできるものではない。削れていくのは石ではなくて爪のほうで、一歩も前進できぬまま全ての爪を失ってしまうことになるだろう。
モグラはそのことを知らなかったが、もしも逃げ出そうと斜面にとりついていたならば、その瞬間いやでもふくろうの仕掛けたワナに気づかされたに違いない。
が、モグラはそうはしなかった。この谷のことを教えてくれ、さらには道案内まで買って出てくれたそんなふくろうをひとり置いて、とっとと自分ひとりが逃げ帰るわけにはいかなかった。
残された時間はもうあまりない。早く探し出さなくては。
モグラは、日が上に来るほど影が短くなることを知っていた。そうなってしまえばもう身を隠すところはどこにもない。ふくろうは日の光に焼かれ、死んでしまうだろう。
モグラはあせった。死にものぐるいで手を使い、力のかぎり声を出し、全神経を集中させて鼻を利かせた。
しかし、モグラ自身もすでに限界を超えていた。
あっと言う間に大地が熱く灼けてきた。
まぶしい光と燃え上がるような熱気がたちどころにモグラから体力を奪い取っていった。
モグラは地面に伏せたまま、うらめしそうに空を見上げた。
どこまでも澄み渡った青空を、小鳥たちの一群が歌を唄いながら駆け抜けて行った。
モグラの全身から力が抜けていった。
薄れていく意識のなかで、モグラはただひたすらに願っていた……どうか、空を飛んで帰っておくれ……あの小鳥たちのように……と。
第四章
(川柳)
ふくろうの 目にも涙の 鏡顔
![](https://assets.st-note.com/img/1657993991178-o2Luog6ZvO.png?width=800)
ふくろうは、洞穴の巣のなかでなぜかいらつく心を抱えたまま、寝付くことさえできずにひとり悶々としていた。
悪いのはおれじゃない。ああ、そうさ。おれじゃなくて悪いのは向こうなんだ、とそればかり考えていた。
自分のとった行動は正しいのだと、そう思うことに必死になっていた。
そうさ、この森はおれのものなんだ。だれがあんなモグラなんかと。と、立場の違いをむりやり強調したりもした。
しかし確かに考えてみれば、おれはだれとも契約したわけではない。自分で勝手にそう思い込んでいるだけだ。でもそれがどうしたって言うんだ。へっ、なにが契約書だ。
そう思い込むと、がぜん勇気が湧いてきた。
ふくろうは巣の入口に立つと、なにやら唐突に尻からうんこをひねり出した。そしてモグラがいつも暮らしている地面をめがけ、それを力まかせに投げつけた。
「契約書なんてくそくらえだ!」
ふくろうの悲しい叫びだけが、昼間の森にこだました。
ふと、何やらうまそうな匂いが辺りに漂っていることにふくろうは気がついた。
ん? 見ると自分の巣のある木の根元で、なにかがたくさんうごめいている。
ふくろうはそれを確かめようと、木の下にひらりと舞い降りた。
そして、驚いた。
ミミズだった。それも半端な量じゃない。そこら中、ミミズだらけだった。
その量も驚きだったがもっと早くにこの異変に気づけなかった自分にも驚いた。それだけ巡らしていた思案に没頭していたということなのだろう。
しばらく呆気にとられていたが、ふくろうはすぐそばに穴があることに気がついた。
それは、なかから押し出された土で淵が盛り上がっていて、どう見てもモグラが開けた穴だった。
そしてその淵に、なにやら一枚の落ち葉が貼り付けられてある。
ふくろうはそれを手に取ると、その場に立ちつくしたままそれに見入った。
そこには一面、なにやら小さな文字がびっしりとしたためられていた。
「あんた、昨日は悪かったね。あたいも当てるつもりじゃなかったんだけどさ。下手のまぐれ当たりであんなも運が悪かったね。これ、おわびのしるし。やせっぽちのミミズばっかりだけどさ、あんたのために頑張って早起きしてとったんだからね。文句があるんだったらあたいじゃなく、ミミズのほうに言っとくれ。まあ、それでもないよりはあったほうがましだろ。たくさん食べて、早くこぶ治すんだね。耳はやっぱり二つじゃなけゃね。いい男が台なしだよ。じゃあね、あ、そうそう、あんたに一つ言っときたいんだけどさ、人生もっと楽に生きなきゃ。だってそうだろ? 闘って生きていくのはしんどいよ。顔だってさ、いつだって怒ったような顔してなきゃなんないしさ。得するのもいつも勝った側だけ。奪いあって生きるよりも、与えあって生きていくほうが人生よっぽど楽ちんってもんよ。互いにいつもハッピーだしね。あんた自分の顔、鏡で見たことあんのかい。ないんだろう? 穴に手を突っ込んでごらん。あたいからあんたへのささやかなプレゼントさ。そいつで笑い方でも勉強してみるんだね。笑ってられるってのは、あんた、一番幸せなこったよ。一番不幸なのは怒った顔をしてる時。あたしゃ、なんのとりえもないけどさ、笑顔だけはだれにも負けないよ。あんたももっと丸くなんなくっちゃね。あんたのそのまん丸目玉のようにね。目玉は三角よりはまん丸のほうがかわいいよ、おっと、あたいもう行かなきゃ。子どもらがお腹を空かせて待ってるんでね、じゃね」
モグラの母親からの長い長い手紙だった。
これを届けにきてくれてたのか。昨夜モグラの家を訪ねた時、母親がいなかった理由がいま分かった。
ふくろうは、手紙に書いてあったように穴のなかに手を突っ込んでみた。
なかから一枚の鏡が出てきた。
ふくろうは、翼の羽根でていねいに鏡の汚れを拭き取ると、そっと自分を映してみた。
鏡のなかで、自分の顔が泣いていた。
モグラに対する申しわけなさと自身に対する腹立たしさとで自分の顔が泣いていた。
奥から奥から涙があふれ、それがポタポタと鏡に垂れ落ちる。そして鏡に映った泣き顔が、涙でどんどんゆがんでいく。
しかし、ふくろうには分かっていた。
そこでゆがんでいるものは顔なんかではなく、心だということが。
ふくろうは鏡を拭くことも涙を拭うこともせず、ただ肩を震わせてひたすら泣いた。
不意にモグラの子どもらの顔が、ゆがんだ顔の上に浮かんできた。
『おじさん、鬼ごっこしようよ。鬼はおじさんだよ』
本当にそうかも知れない。おれは鬼なのかもしれない。
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ふくろうの心が激しく震えた。
悲しくて切なくてどうにもやりきれない思いと、悔いと恥ずかしさと愚かしい思いとがごちゃまぜになり、ふくろうの心を激しく震わせた。
そして、ふくろうのみずからに向けた憤りがついに頂点に達した。
「うっ、うぅ~っ……うぉ~~~~!」
ふくろうは、号泣とともに力いっぱい大地を蹴った。
森から飛び出したふくろうに強い日差しがいっせいに襲いかかった。
一瞬、目がくらんだ。しかしひるむどころかさらに勢いを増すと、ふくろうは一直線に谷をめざした。
子どもらが待っている。彼らのもとへ一刻も早く母親を送り届けてやらないと、そればかり考えてふくろうは白昼の空を飛んだ。
飛びながらも涙はとめどなくあふれ続けたが、それは風が吹き飛ばしてくれた。
翼のつけ根が痛くなろうと呼吸をするのがつらくなろうとそれでもふくろうはキッと歯をくいしばり、決して羽ばたきを弱めようとはしなかった。
これがどれほど無謀な飛行かくらい言われなくても分かっていた。お日さまとの闘いであることも勝ち目などないこともましてや生還できる可能性などほとんどないことも、そんなことははなから分かっていた。
「死ぬなよ、おっかさん」
すでに全身は高熱を帯びていて、今にも火を上げそうだった。それでもふくろうは挑み続けた。むしろ焼くなら焼いてくれ、おっかさんの代わりにおれのゆがんだ心を焼きつくしてくれ。
……そう願いながら。
第五章
(川柳)
ふくろうの 命の飛翔 種を超えて
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光を裂き、空気を斬り、雲を分け、ふくろうはまっしぐらに谷をめざした。
はやる心がそうさせたのか、さほど時間も経たぬうちに眼下が白く輝き始めた。
ミミズ谷だ。
ふくろうはさらに勢いを増して、急降下にはいった。
昼間見るミミズ谷はふくろうにとって美しくもあり、また恐ろしくもあった。
日の光を反射させて周囲を取り巻く石灰岩がギラギラと輝き、そこはきれいというよりはあまりにもまぶしすぎた。
ふくろうは、まるで銀色に輝く月だと思った。夜を生きるふくろうには、例えるとすればこれしかなかった。しかしそのまばゆさはそれこそ、月とスッポン、比較にもならない。
と同時に、ふくろうは改めて自分の犯した過ちの事の重さを思い知った。
こんなところに置いていかれれば、モグラでなくてもだれであろうとそう長くもつはずがない。
ふくろうは、あせる気持ちとはやる心を抱きかかえ、森側のぎらつく斜面を低空飛行で飛び回った。
初めは高速で駆け抜け、それで発見できないとなると今度は低速でくまなく捜索した。
銀色の輝きがあまりにも目に痛い。目の奥が焦げてきているのをふくろうは感じていた。それでもふくろうはそのまん丸い目を大きく見開いて、地上のどんなものも見逃すまいと血まなこになって探し回った。
しかし、モグラの姿はどこにもなかった。
森に逃げ帰るには、この斜面を登り切るほか道はない。しかし、もちろんそんなことはできるはずもない。
まさかここから逃げ出そうとしなかった?
いやでもそれはほとんど自殺行為だし現実離れし過ぎていてさすがにちょっと考えにくい。
まさかまだおれを探して中央部辺りにいるとでも?
その想像はふくろうの胸を強烈に締め付けた。
現に夜明け前、モグラは餌拾いもそっちのけでこんな目に遭わせたおれのことを探し回っていたではないか! 次から次へと開けた穴から顔を出し、顔を出しては俺を呼び、あれほど不可解で現実離れした行動をモグラはすでに見せていたではないか!
胸が引き裂かれそうだった。ふくろうは急ぎ上昇に転じると、見通しのきく上空高くへと一旦一気に駆け上がり、一転今度はゆっくりと螺旋に降下をしながら広い範囲に目を向けた。
しかし、ふくろうはすでに目に異変が起きていることを知った。
目にするものの姿がはっきりととらえられず、ぼんやりとしか見えてこない。
ミミズのいる緑生い茂った天国のような草原もそれを取り巻く悪魔のような白い地獄もすべてがぼんやりと霞んでいる。
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空を旋回するふくろうの目から、ボタボタと大粒の涙がこぼれ落ちた。
その涙は、目が見えなくなってしまったつらさからこぼれ出たのではなく、モグラの姿をこの目で見つけることのできない悔しさからこぼれ出たものだった。
それでもふくろうはあきらめなかった。代わりによく聞こえる二つの耳がある。
ふくろうは低空に高度を下げると二つの耳に全神経を集中させ、声をかぎりに叫び、叫んでは耳を澄まし、そうしながら飛び回った。
「おっかさ~~ん、おっかさ~~~ん」
しかし、なんの反応もない。
再び上空へと一気に駆け上がり、降下の角度を変えて螺旋を描きながら声を限りに張り叫ぶ。
幾度も幾度も繰り返す。
終わりなどない。あるわけがない。あってたまるか、すぐさま上空へ舞い上がる。
「おっかさ~~ん、おっかさ~~~ん」
声を限りに叫び、そして耳を澄ます。落胆してる暇もない。また上昇してはやり直す。
「おっかさ~~ん、おっかさ~~~ん」
終わりなどない。あるわけがない。モグラのおっかさんから返事があるまで終わりなんかないのだ。
しかし次の瞬間、上昇に転じたふくろうだったが突如飛翔する力を失い、頭から茂みのなかに墜落した。
ふくろうは泣いていた。悔しくて悔しくて、切なくて切なくて、悲しくて悲しくて。
ふくろうももはや限界などとっくに超えていた。でもいいのだ。これでいいのだ。これで許されるとは思ってはいない。しかし、せめてものこれがバカなおれに出来る唯一の罪滅ぼしだ。
「おっかさん……ごめんな」
強烈な日差しが容赦なくふくろうの身体に突き刺さっていく。周囲を取り巻く石灰岩が直射日光を反射させ、光りも熱もまるで悪魔のように増幅されて、ミミズ谷はもはや地獄谷と化していた。
遠ざかっていく意識とすれ違うようにしてなにか楽しげな光景がふくろうの頭のなかに浮かび上がってきた。
おや、君たちか。モグラの子どもたちだった。
ごめんなみんな。おじさんは……おじさんは……。何も言葉が出なかった。出るのは涙だけだった。
子どもたちも何も言わなかった。
かろうじて、ふくろうは声を絞り出した。「鬼ごっこ、出来なかった代わりに……鬼退治してくるからね」
子どもの一人がニコニコとして笛を吹いた。
ごめんね。鬼退治してくるからね。
続いて二人目がピー。
ごめんね。
さらに三人目がピー。
ごめんね。
そして四人目がピーとやった。
その瞬間、ふくろうは目を大きく見開いた。
違う。夢じゃない。ふくろうはさらに目をカッと見開いて全神経を耳を集中させた。
聴こえる。確かに聴こえる、何だあれは? かすかにではあったが、どこかで聴いたことがあるような懐かしい音色。
ふくろうの全身に再び力が漲ってきた。跳ね起きるなり一気に羽ばたいて茂みすれすれの超低空で音のするほうへと一直線に飛翔した。
そしてぼんやりながらも茂みのなかでうつぶせに倒れているモグラの姿をついに発見した。
「おっかさんっ!」
大急ぎでモグラのわきに舞い降りると、ふくろうはモグラの身体の上に大きく翼を広げ、日の光をさえぎった。
「おっかさん……おれだよ、おれ。目を覚ましてくれよ」
しかし、モグラはピクリともしなかった。しかもその身体はやけどするほどに熱い。
時折強い風が吹くたびに、すぐそばで、ピー……ピー……と音を立てるものがあった。
それは、草を器用に折り曲げて作ったトンネルのようなものだった。そしてそのなかを風が強く通り抜けるたびに、ピー……ピー……と可愛らしい音を立てる。
音の正体はこれだった。
ふくろうの霞んだ目に、モグラの子どもらの顔が次々と浮かんだ。
『母さんは、草笛作りの名人なんだよ』
子どものひとりが言った言葉が想い出され、ふくろうは強く胸を打たれた。
モグラの母親が自分に居場所を知らせようとして作ったものなのか、それとも子どもらに向けた最期のメッセージのつもりだったのか。
いずれにせよ、この草笛のおかげでふたりは再びこうして巡り会えた。
モグラの母親が命をかけて作り上げた草笛。それは彼女の命の叫びであり、彼女の魂そのものだった。
「おっかさん、たのむ……目を開けてくれ」
モグラの身体を何度も激しく揺すってみた。
「なあ、たのむよ。目を開けてくれよ~」
激しく揺すっては叫び、叫んでは揺すり、それを何度も何度も繰り返すものの、モグラは目を開いてはくれなかった。
ふくろうの目からボタボタと大粒の涙がこぼれ落ちた。その涙はわずかなけがれもなく、このはてしない青空のように澄んでいた。
生まれて初めて知ったなんともやりきれない途方もなく巨大な悲しみに包み込まれ、それでもふくろうはあきらめきれず、さらにわめき散らしながら激しくモグラの身体を揺さぶった。
「子どもらが待ってるんだ、おっかぁ、子どもらが待ってるじゃないか、ダメだって! 絶対にダメだって! 行くな! 戻ってこい、戻ってきてくれよおっかぁ~」
もう言葉にならなかった。ふくろうは泣きじゃくりながら日の光をさらにさえぎろうと、大きな翼をめいっぱい広げてモグラの身体におおいかぶさった。
そして、その涙がモグラの身体にポタポタと垂れ落ちて……。
「重っ……」
なにやら声がした。
ふくろうがハッとなった。
再び声がした。
「重たいねぇ」
モグラの身体がぴくんとなった。
ふくろうはその目をクッと見開いた。
モグラの母親が弱々しく手の指を動かして、そしてまぶしそうに目を開けた。
「ああ……あんたかい」
そう言ったモグラの声は、いたわりと優しさに満ちていた。そして、「良かった……生きてたんだねえ」と、嬉しそうに目を細めた。
ふくろうは、生まれて初めて心からの笑顔を作った。
「なにが、良かっただよ……いまだにおれのことを心配しやがって……」ふくろうは、無性に嬉しかった。「ちっとは自分のことも心配しろよ」
そして泣きながら笑い、笑いながら泣き、ふくろうの顔はもうぐしゃぐしゃになっていた。
モグラが申しわけなさそうに言った。
「あんた助けにきてくれたのかい? 悪かったね」
モグラはこれっぽっちもふくろうのことを疑ってなどいなかった。それどころか、モグラは自分の落ち度をわびた。
「あんたを助けるつもりがこのざまさ。逆になっちまうなんて……ホントあんたにはすまないねえ」
「なにを言ってるんだ。心配すんなって」ふくろうは、モグラを抱きかかえるようにした。「いま、助けてやるからな」
しかし、モグラの母親は首を横に振った。
「……せっかくだったけど……あたいにゃもう力は残ってないよ。あんたにゃ迷惑のかけっぱなしで申しわけないけどさ……迷惑ついでに子どもらのことをたのめるかい?」
「バ……バカな」ふくろうはうろたえた。「なにバカなことを言ってんだよ。たのむからしっかりしてくれよ。子どもらが待ってるのはおれじゃない、おっかあじゃないか。なあ、たのむからそんなこと言わないでくれよ、なあ、おっかさんよぉ……」
ふくろうは、途方に暮れてまたボロボロと泣き出した。
モグラの母親がまた顔を少しだけ上げた。そして精一杯の笑顔を作って……言った。
「あんたって……やっぱ、いいとこあるねえ」
ふくろうはよけいに泣きじゃくった。
「あ、あんた見てると……」ふくろうはしゃくり上げた。「なんか自分のおっかさんを見てるみたいでよぉ……」
そうしゃくり上げながら、ふくろうは片方の翼で涙を拭き、そしてもう片方の翼でそっとモグラの背中をさすってやった。
モグラが力なく笑って言った。
「そうかい」そして、地面にがっくりと顔を落とし、最期に嬉しそうにつぶやいた。「ありがとうよ……」
閉じたその目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
「おっかさん……おっかさ~~~~ん」
ふくろうは、そこら中にひびき渡るほど、大きな声を張り上げた。そして目を閉じたモグラに向かって、なおもまだ叫び続けた。
「違うんだ。あんたじゃないんだ。悪いのはおれなんだ。おれがあんたをここにおびき寄せたんだ。ごめんよ。悪かったよ。なあ、だから目を開けてくれよ。なあ……たのむよ、おっか……さん……」
最後のほうはもう力が抜け、泣き声にしかならなかった。
しかし、その叫びも喚きも泣き声も、もはやモグラの耳にはなにも届いてはいなかった。
次の瞬間、ふくろうはピタッと泣くのを止めた。キッと目を見開くとおもむろに顔を上げ、雲ひとつない空を見上げた。
そして、そこにまるで最強の敵でも見るかのように遠い空をにらみつけ、ひときわ大きく、「ホ~ッ……ホ~ッ……」と叫びをあげた。
日差しはさらに勢いを増すばかりだった。
ふくろうは小さく羽ばたくと、素早くモグラの身体に飛び乗った。そして足の指を大きく広げ、いたわるようにそっと優しく、しかし決して離さないように力強くモグラの身体を挟み込んだ。
太陽が真上からギラギラと照りつけてきた。
ふくろうは再び遠い空をにらみつけ、ウ~ッと低いうなりを上げた。
そのうなりは、みずからを奮い立たせようとする気力の高鳴りであり、大空へ挑みかかろうという強い決意の表明であった。
ふくろうは遠い空をにらんだまま、自分を鼓舞するかのように腹の底からつぶやいた。
「帰るぞ 森へ」
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そして渾身の力を振り絞ると、翼を大きく羽ばたいた。
次の瞬間、ふくろうの身体がフワリと浮いた。
自分ほどの重さのモグラの母親を足の下に抱きかかえ、初めはヨタヨタと頼り気のない危ういものだった。
しかし全身全霊を賭けた大きなストロークの羽ばたきは、打ち下ろす毎に確実に空気を捕らえ、さながら見えない階段を一歩一歩昇っていくように徐々に高度を増していき、やがてふくろうは見事に空高く舞い上がっていった。
もう心配はない。ふくろうの翼は的確に上昇気流を掴んでいた。
だがしかし、その目にはもはやなにも見えてはいなかった。
それでもふくろうにはよく聞こえる耳と、そしてよく利く鼻とがあった。
森の音をたよりにして、ふくろうは必死で羽ばたいた。
木の匂いをたよりにして、ふくろうは懸命に羽ばたいた。
翼が痛くなろうとも、目が痛くなろうとも、足が痛くなろうとも、ふくろうは強い意志の力だけでそこに生きるあらゆる種類の生き物たちの故郷『森』をめざした。
おれの命などどうでもいい。叶うものならおれの命と引き替えに……この母親を救ってやってくれ……ただそれだけを願って。
最終章
(川柳)
ふくろうの 目にも涙か サングラス
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森は、いつものように静かな眠りに就こうとしていた。空には銀色のまん丸い月がポッカリと浮かんでいる。
リスは木の窪みで丸くなり、アマガエルは葉っぱの裏にはりついて、心地良さそうに目を閉じる。
枝に並んだ小鳥たちは、すでにみんな夢のなかだった。
そんななか、ふくろうがひとり静かに墓の前に立っていた。
うやうやしく翼を合わせ、かしこまってうつむいている。
両方の翼のつけ根と両足に巻かれた包帯が、いまもなお痛々しい。
ふくろうは合わせた両翼の力を抜き、今度は顔を上げてさもいとおしそうに夜空を見上げた。
どこからか拾ってでもきたのか、目にはサングラスをつけている。しかしそのサングラスの奥の目は、いまだに視力を失ったままだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1657646544186-f6TaN4n1my.png?width=800)
それでも月の光ぐらいであれば、ぼんやりとながらも感じられるようで、時折目元をピクピクとさせてはそれに連動してサングラスもまたピクピクと上下に動く。
そのままの姿勢でふくろうは考えていた……おれも少しは丸くなれたかな、あの月のように……と。
実際、とんがって突っ張って生きてきてもなに一つ良いことなどなかった。毎日がトラブルや衝突の連続で、労力の割には骨折り損のくたびれ儲け。得るものなど微々たるもので、むしろ負わされた心身のダメージやストレスなど失うもののほうが遥かに大きく、危険と隣り合わせの毎日がどれほど厳しい生き方なのかはふくろう自身よくわかっていることだった。
それに第一、 奪い合いでハッピーになれるのは常にどちらか一方で、 その点与え合って生きていく生き方だと確かにおっかさんの言う通り、常に両者ともにハッピーだ。
両者がともにハッピーなのと、常にどちらか一方だけがハッピーなのとでは、それこそミミズ谷じゃないけれど天国と地獄の差だ。
ふくろうの目に、もう涙はなかった。涙はこの墓と一緒に葬ってしまったつもりらしい。
ふくろうには分かっていた。この森にはいろんな生き物たちが暮らしている。そんな彼らと上手に付き合っていくために必要なもの、それは涙なんかではなく、ましてや権力でも腕力でもない。
ふくろうは、ぼんやりではあるものの銀色に輝くまん丸い月にモグラの母親の笑顔を重ね見た。そしてぎこちないながらも飛びっきり弾けた笑顔を満面に浮かべ、語りかけるようにささやいた。
「……それは笑顔。 だよなおっかさん? 笑顔さえ身につければこんなおれでも何とか森の連中とうまくやっていけるよな、そうだろ?おっかさん? 」
すると暗がりのなかからいきなり声が飛んできた。
「だれか呼んだかい?」
ふくろうは一瞬ビクッとなり、次いでニヤリとしてすぐさま後ろを振り返った。
そこには何食わぬ表情をしたモグラの母親が立っていた。そしてまたしてもボケて言った。
「今、なんか呼ばれた気がしてねぇ」とからかうように言い放ち、「笑顔がどうのこうのとかね」と言って舌をペロリとやった。
「あ? あぁ、笑顔って、そのぅ……大事だよなってお月さまと話してて……」とふくろうは何とも歯切れが悪い。
「へ~そうかい! お月さまとねえ……」モグラはニヤニヤとしながらもそれ以上は追及せずに、今度は真顔になって訊いてきた。
「もういいのかい?」
「あ、ああ……まあ、なんとかな」
ふくろうは照れくさそうにそう言った。そして、モグラに向かって逆に訊いた。
「おっかさんのほうは?」
「あたいかい? あたいはもうすっかり大丈夫さ。なんたって、あたいはただあんたにぶら下がってただけだからね」
そう言って、モグラの母親は無邪気に笑った。そしてふくろうの顔をまっすぐに見つめると、「良かったよ、それ……似合ってさ」と、ふくろうのつけたサングラスを見やった。
![](https://assets.st-note.com/img/1657628699934-zwgBgDOBLi.png?width=800)
どうやらサングラスもまた、モグラの母親からのプレゼントであるらしい。
「ああ。自分じゃ、どうだかよく分からんが、おっかさんがそう言うんだったら、きっとそうなんだろよ」
「ああ……よく似合うよ。ちょっと重たいかもしれないけどさ、それもまたちゃんと見えるようになるまでの辛抱さ。ところで、それ……だれの墓だい?」
と、不意にモグラがふくろうのことを押しのけて、不思議そうに歩み出た。
「あ、ああ……お、おれ……いや、鬼かな」ふくろうは、ちょっとしどろもどろになったものの、すぐにきっぱりと言い切った。「そう、鬼なんだよ鬼の墓」
「鬼の墓? なんだいそりゃ?」
モグラの顔がぽかんとなった。
「……ああ、子どもらと約束したんだよ、鬼退治してくるって」
「ふ~ん、でこれが退治した鬼の墓ってわけ?」
「……あ、うん、ま、そういうこと……鬼の墓でもあり、昨日までのおれの墓でもあり……ま、そういうこと」
ふくろうは、さも恥ずかしそうにそう言って、顔を首まで真っ赤にさせた。
それをきいて、モグラは一瞬、考え込むような顔つきをしたものの、すぐにまたニヤリとすると、まるでわが子をちゃかしでもするかのようにわざと大きな声で言い放った。
「あんた、頭までやられたんちゃう?」
「う……うっせえなあ。いいから少し黙ってろよ。これはおれの問題なんだからな。おっかさんにゃ関係ねぇよ」
そう言って、ふくろうはすねたようにプイと横を向いた。口調とは裏腹に、その姿はまるで駄々をこねる子どものようだった。
母親はなおもニタリとすると、ふくろうの鼻先を指で小突いた。
「あんた……やっぱ、いいとこあるねえ」
![](https://assets.st-note.com/img/1657927222348-haPxcicNdn.png?width=800)
ふくろうは、顔を耳まで真っ赤にした。そして、「うっせ~よ!」と言い捨てると、パタパタと痛々しそうに羽ばたいて、すぐ上の洞穴に逃げ込むようにひっこんだ。
代わりに木の上から、すぐになにかが降って来た。
それはふくろうのうんこだった。
了
![](https://assets.st-note.com/img/1657903606465-I3QcMU91UN.png?width=800)
ジャンケンに負け、 表は塾生さんにとられましたので、
塾長の私は裏表紙へ、爆笑!!
表とは一転、『大人』のワードにスポットを当て、
大人向けをアピール。
![](https://assets.st-note.com/img/1657852850559-Mkacp24Rnf.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1657904195920-Y0nGoeRMz2.png?width=800)
このコンセプトを具現化した新しいロゴです。
文中随所でご披露させて頂きました、笑。
絵画調ロゴ、毛筆ロゴ、ワードロゴ、徽章ロゴ
等の要素を融合。一瞥して技術レベル、専門分野、
性格や指向性、国籍等の情報が把握頂けると思います。
と同時に、瞬時に記憶に焼き付くほどの
強烈な個性(identity)とインパクト。
『富士山』は基より全て毛筆で書いていますが、
漢字と英文字の合体は斬新すぎ? 笑。
今後様々なシーンで活用させて頂きますので
どうぞ宜しくお願いいたします。
尚、一部の方よりピンバッジやワッペン、ステッカー
等にしたいので『買いたい』
とのお申し出を受けていますが、
非売品につきお断り申し上げます、笑。
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