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賃貸のクローゼットを声の収録ブースにしてみた件

こんにちは。ヨッシ~バランと申します。
ふざけた名前ですが、2005年からネット上で声を提供する活動(いわゆるネット声優、ボイスコ)をやっています。

この記事では、賃貸マンションのクローゼットを声の収録ブースにした際に買ったものやアドバイスを極力細かくまとめています。文量が多いですが内容は単純ですので、必要な項目をご覧ください。
音響のプロではないので深い知識はないですが、費用は抑えつつ、それなりに効果が出ましたので、気になる方は参考にしてください。

クローゼットを収録ブースにした経緯

声の収録は自宅がメインです。
幸いこれまでマンションの角部屋で、お隣さんを気にすることなく、また目立つ部屋鳴り(反響音)もなかったので、リビングの角で収録し続けていました。
昨年、吸音材に囲まれた簡易収録BOXも興味本位で買ってみましたが、「まあ多少音が引き締まるかな…」くらいの感想で、大きな問題なく日々のボイスコライフを過ごしていました。

ところが2022年1月、急遽引っ越しをすることに。
不動産屋さんに「ナレーションを録ったりすることがありまして…」みたいな控えめな感じで、音漏れがしにくそうな部屋を候補に入れてもらいました。

選んだ賃貸マンションは隣から日々の生活音はほぼ聞こえないものの、壁を伝うドアの開閉音や、よく耳を澄ますと普通のトーンで会話する声が聞こえてくる…。
・・・これ、収録のために声張ると確実に隣に聞こえるよな・・・。
お隣さんのための「防音」の必要性が出てきました。

そして、収録のためのパソコンを置いている部屋は6畳+ギリギリ立って入れるクローゼット。部屋に物が少ないことや、壁の3方向が木の扉ということもあってか、反響音がします。
実際に声を録音してみましたが、明らかな部屋鳴りがしてとても提出できる音声ではありません。
部屋鳴り(反響音)」対策の必要性が出てきました。

応急処置として、ハンガーラックに引っ掛けた布団を被って録音。
音質は良くなりますが、立って収録をするとなると足元から音は漏れるし、少しでも動くと布団のガサガサ音は入るし、暑いし…。

そこで市販品を色々検討してみました。
「だんぼっち」のような簡易防音室はありますが値段が9万円~と高く断念。

立ちの高さで四方に壁を作るという点で、「着替えテント」や植物の栽培のための「グロウテント」なるものの内側に吸音材を貼るのも良いのでは・・・。

…部屋鳴りのない収録ができそうな気もしますが、素材が薄いこともあり、防音の面で断念。
(外への防音を気にしなくて良い環境ならこれでもいいかも)

結果、せっかく立って入れるクローゼットがあるのなら、そこを使うのが一番という結論に至りました。
なお、我が家の場合、扉の下が1cmほど空いているのでマイクケーブルも潰さずにドアを閉めることができます。

(コルクマットだけ先に敷いちゃいましたが)

何をどれくらい買うか

やることが決まれば情報集めです。
クローゼットで収録をする方は多いので、ネットで検索すれば先人の手法はある程度見つかります。
色々参考にした結果、買うものは下記5点。

  • ウレタンスポンジの吸音材

  • スポンジを固定するための専用両面テープ

  • 剥がすときに壁紙を傷めないためのマスキングテープ

  • 床に敷くコルクマット

  • 暗くなるので簡易ライト

様々なネットショップ、メルカリ、オークションから価格やレビューを吟味し、極力効果があり、かつ極力安い物で仕上げるぞ!!!!!

・・・とその前に。
それぞれどれくらいの量を買えば良いのか考えるために、クローゼット内を正確に採寸しておきましょう。
吸音材は主に1辺が25cm、30cm、50cmのラインナップがありましたので、クローゼットのサイズによって、切ったりする効率の良し悪しが出てくるかもしれません。

私の採寸。

色々計算してみた結果、私は30cm四方のものが78枚あれば全面を覆えることがわかりました。

クローゼット全体を覆うとなるとテープの必要な長さもそれなりです。
貼り方に工夫をして極力コストを抑えましょう。(貼る時面倒ですがコスト優先)

テープもケチる

吸音材

さっそく吸音材を検索すると、いやぁ、なかなか良い値段。
スタジオで使うような本格的なものは数枚入りでウン万円は当たり前。
10年以上続けている活動のためとはいえ、クローゼット全面を覆うために何十枚と貼らねばならんので、そんなに大金を払いたくありません。

条件としては下記を設定。
・30×30cmが78枚
・吸音効果を高めるため、少し高くなりますが厚み2.5cmでなく5cm。
・形状は「ピラミッド型」「楔形」「波型」などあるようですが、複数枚をつなぎ合わせた時につなぎ目がキレイというか誤魔化せるかなと思い「ピラミッド型」

メルカリやヤフオク等で安いものもありますが、特に枚数を揃えるという点で条件が合いにくく、結果的にamazonで購入することに。
レビューなども熟読の上で、比較的安くて問題なさそうだったものをまずは24枚セットで購入。
(試しに貼ってみて大丈夫そうだったので追加で48枚セットも購入。合計72枚。計算上4枚足りませんが、断片を再利用したりして最終的に7枚余りましたw)

・・・レビューを見ると、マイナス評価のコメントで「外に音がもれないようにするために買ったが効果がなかった」というものが散見されましたが、吸音材は反響音をなくすためのものであって、音漏れを防ぐ防音のためのものではないのであしからず…。
あと、「圧縮状態で納品されたが元の形状に戻らない」というコメントもちらほらありますが、その点については後述します。

テープ類

スポンジ類は普通の両面テープでは剥がれてしまうようです。
参考にさせていただいた実践記事で強力な両面テープを紹介されていましたが、価格を見ると若干お高め。
今回は、それより安いスポンジに特化したテープを見つけ、購入しました。
上記の通り、隣り合うスポンジをまとめて1本で貼るので、太さは2cmのものに。

また、賃貸ですので剥がす時に壁紙を破いたりノリ残りするのはNG。
スポンジ用テープは壁に直接貼らずに、マスキングテープを貼った上から。
2cm幅のスポンジ用テープが貼りやすいよう、マスキングテープは3cmのものをセット購入。

コルクマット

せっかく壁も天井も吸音材を貼るのに、床を何もしなかったことで悪影響があるのも嫌なので、コルクマットを敷くことに。
100均などで購入可能ですが、今後何かの折に拡張したりする際、同じものを買い増せるよう、ニトリで。
30×30cmの9枚セットです。
ハサミで簡単に切れるので、床面のサイズにフィットするようカットしました。

ライト

台本はスマホで見ることにしましたが、クローゼット内が完全に真っ暗なのも心もとないので、簡易ライトも購入することに。
幸い、ハンガーをひっかけるポールがあるので、そこに吊るせるタイプのものを探しました。
数千円のものもありますが、最低限の明かりが付けば十分なので値段重視で決定。

合計金額は・・・?

気になる金額は下記の通りです。

・吸音材  →(24枚入:4280円)+(48枚入:7,980円)= 12,260円
・スポンジ用両面テープ  →(1個20m:853円)× 3個 = 2,559円
・マスキングテープ  →1個18m×4個セット:531円
・コルクマット:712円
・ライト:870円
 合計・・・16,932円
※私の購入時の価格です。

既製品の簡易ブース等を購入するよりは十分安いかと思いますが…どうでしょうか。

吸音材の形状を元に戻す

注文したものが早速届きましたが、吸音材は圧縮された状態。

まずはお試しで24枚セットと、テープ類一式を購入。
ペラペラですが仕様です。

レビューや商品説明に「1~3日ほど置けば元の形状に戻る」という文言もありましたが、戻りそうな気がしなかったので、お風呂の水に漬けてみました。初回に買ったのは24枚ですので、まあ浴槽にも収まります。

増えるワカメ的な

すると、3分もすればみるみる形状がもとに戻っていくではありませんか!

・・・さて、問題はどう乾かすかです。
水を吸ったスポンジはそう簡単に乾燥しません。

同梱の説明書に「乾燥機で20~25分」という説明はありますが、あいにく家には乾燥機がありません。
レビューの中に「洗濯機の脱水機能を使用した」という書込みがあり、早速試すことに。
・・・しかし結果、(うちの洗濯機では)全く効果が有りませんでした。
ギチギチにつめても、余裕を持たせていれてもダメでした。

同梱の説明書。所々、日本語が怪しい。

最終的に、一枚一枚手で絞ったあと、出せる枚数はベランダに出し、あとはエアコンの下で並べることに。
水を吸った大型スポンジを24枚も絞ると手は軽く筋肉痛です。
干す場所を入れ替えたりして2・3日で全て問題なく使える状態になりました。

この後、乾かした24枚を早速クローゼットに貼っていき、テープの粘着力が問題ないことを確認し、吸音の効果も期待できそうな雰囲気を掴んだので、追加の48枚も注文しました。

48枚セット。到着時はこんなにコンパクトなのに・・・

さて、次は初回の2倍の枚数。もう一枚一枚しぼりたくありませんし、乾かすスペースも確保できません。
レビューにあった「3日ほどで元に戻った」という言葉を信じ、一先ずリビングに敷き詰めて4日間放置しました。
少しずつ膨らんではきますが、やはり完璧な形状には戻りません。どれも5~7割程度。角など細かい部分はまだ復帰しそうにありません。

開封から4日。まだまだヨレが目立ちます。

そこでもう一つの手段。
ドライヤーの熱風を当てる。
至近距離で当てていくと、みるみるうちに吸音材が膨らんでいきます。

ただし、熱風が当たるピンポイントの部分しか効果がないので、1枚完璧に形状を戻すのに2-3分はかかります。
それでももう手段がありません。時間をかけて1枚ずつ処理していきます。
…お隣さんからドライヤーの轟音でクレームが来ないよう、昼間に在宅の際にまとめて行いました。

ほんの一部。

こうしてなんとか、全ての材料が整いました。

吸音材の形状の戻し方:結論

  • 乾燥機をお持ちでしたら、水に浸して形状を戻し、乾燥機で乾かすのが一番早いかと思います。(未検証)

  • 乾燥機がない場合は、開封して2-3日様子を見た上で、軽く膨らんできたものを一枚一枚ドライヤーで乾かす。
    (2-3日置きたくない方は即ドライヤーでも大丈夫です。手で引っ張って膨らませられる部分は、事前に軽く対応しておいた方が良いでしょう。)

吸音材をクローゼットに貼っていく

材料が揃いましたので、後は貼るだけです。
採寸をして必要なサイズと枚数はわかっていますが、スポンジという性質上「30×30cm」の商品だとしても多少前後がありますし、実際に貼ると手作業ゆえの誤差もでてきます。
よって、吸音材のカットは必要になった時に都度行うこととします。
スポンジですのでハサミですぐカットできますし、手切りで多少ブレても大きな問題はありません。

1マス5cmだから目安がつけやすい

まずは試しに天井の梁で仕切られた小さいスペースから。
マスキングテープを貼り、上からスポンジ用両面テープ。
そして必要サイズピッタリに切った吸音材を貼ってみます。
・・・落ちる気配はありません。
貼り間違えても、ゆっくり剥がせば、破れたりせずに貼り直しもできました。

大丈夫そうなのでどんどん貼っていきます。

天井が完成し、問題なさそうなので扉や壁も続けていきます。
テープを貼る際、1枚1枚順番に位置を合わせながらテープを貼っていくのが望ましいです。
なにせ、吸音材2枚が隣り合う辺は吸音材1枚あたりのテープ幅が2cm÷2=1cm。ずれるとテープに吸音材が当たらなくなってしまいます。

2枚が隣り合う辺を上手く貼るのが面倒。
一面丸々設置できると迫力がある

なお、微調整を間違えて吸音材の間に隙間ができてしまった場合、吸音材を引っ張ってスペースを埋めながら貼るのはやめましょう。
同様に、用意した吸音材が貼るスペースより大きい場合に無理に押し込んで貼るのもやめましょう。
いずれも余計なテンションがかかってしまい、剥がれの原因となります。
前者は、切り余りの物を差し込むか、潔く剥がして貼り直す。
後者は、サイズに合わせて切る。

そして完成へ…

同じような作業をくりかえし、完成です。

内側からドアを閉めるための紐を取っ手に。

実際に録音してみた&音質向上方法

吸音材設置前後で音を取り比べてみました。

ヘッドホンで聞いていただくと、部屋鳴りが無くなっているのがおわかり頂けるかと。

…効果は出ているものの、普段聞きなれない宅録音質なので本当にこれで良いのかわからず、私の知る音響の生き字引に、収録音声を検証してもらいました。

中~高域はしっかり吸音されてるんやけど、低域がボワついてるね。
低域だけが吸音されきらずに回っちゃって箱鳴りしてる印象がある。 これだったら、イコライザーで切っちゃったほうが早いかもしれない。
単純に「90Hz以下をバッサリカット」で全然OKと思う。

根本的な解消をするなら低域をもうちょっと吸う防音材を追加するとか距離をとるとかっていう話になるから、即時対策はちょっと難しいかもね。
マイクにローカットスイッチ(マイク自体で低域をカットできるスイッチ)が付いてたらもうちょいマシにできるんやけど。
まあでも、これなら全く処理なしでもわりとすぐ対策できるレベルやから、編集さん的にも別にそんなダメって感じでもないと思うし、おいおいでいいんじゃないかな。

ちなみにスポンジとかウレタンって中~高域の吸音がメインの素材で、低域は繊維系が音を吸うです。取り急ぎのところなら、毛布とか大き目のタオルとかダウンジャケット的な物があれば腰から足元くらいの高さにかけてみたり丸めて敷いたりすれば気持~ちマシになるかもしれん。
よくレコーディングとかでドラムのバスドラム(足元の一番大きいやつね)に毛布入れたりしてるのは、低域の音をシメるためなのさねー。
ほんとは頭の後ろがいいんやけど空間的に厳しいやろし、それなら頭より下の空間の分を吸って軽減させた方が多少効果はあるかも、っていう。
うちの防音ブースの場合は薄めの毛布にマジックテープ縫い付けて垂らす感じで貼り付けたりしてるやけどな。

・・・神はここにあらせられた。

そこで、普段録音に使っているフリーソフト「sound engine」の"ハイパスフィルター"で90Hz以下カットして、神に鑑定してもらった。

なんか、このエフェクト自体がわりと控えめの効果なのか、あんまりちゃんとかかってる感がないな…

サウンドエンジンをインスコして試してみた。これ、サウンドエンジンのEQの癖やね。カットはちゃんとできるんやけど、なんかほかの帯域が出張ってきてバランス崩れるわ。。。

サウンドエンジンの1バンドEQで似たような処理できないか試したけど、やっぱりなんか変な切られ方してる気がする。。。RX上の帯域の見た目はパッと見変わらんけど、なんか妙な癖がある…。

そもそもRX使えるならRXで切ったほうがいいな。
横方向の範囲選択で90Hz以下くらいを全選択して、もう真っ暗にするつもりで全カット。それが一番いいと思う。
いつも自分もローカットはそうしてるのよ。

音声のホワイトノイズやリップノイズを除去するのに大変便利なソフト「izotope RX」。私はRX9のスタンダード版を持っているので、そちらで作業することに。

90Hz以下を全選択し、カット。

あー、これで完璧かと。

Fall in love 音響の神様 どうもありがとう

・・・素人耳にはあまり違いがわかなかったけど。

おわりに

・・・ということで、技術的な部分はあまりよくわからない私でも、一応の収録ブースを作ることができました。

ちなみに、クローゼット内の高さが自分の身長より5cmほど低いので、収録中は微妙に腰を落として収録する必要があります。
これにより、半日収録すると2日後とかにふくらはぎに筋肉痛が。
みなさんも良い筋トレライフをお送りください。


※これら一連の工程は、環境により効果が異なる可能性がありますのでご了承ください。ご紹介した商品の品質につきましても、私の方では責任を負いかねます。

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